「歩き始めに足の付け根が痛い」「長く歩いたあとに鼠径部が気になる」「いつもではないけれど、時々股関節の前側に痛みを感じる」。このような症状について、ご相談をいただくことがあります。
足の付け根、特に鼠径部周辺の痛みは、股関節からのサインとして現れることがあります。変形性股関節症でも、初期には強い痛みが続くのではなく、「たくさん歩いたときだけ痛い」「立ち上がる瞬間だけ気になる」といった症状から始まることがあります。
痛みが毎日続くわけではなかったり、少し休むと治まったりすると、「まだ大丈夫」「そのうち良くなるだろう」と考えてしまうことも少なくありません。
しかし、足の付け根の痛みは、股関節の可動域や筋力、歩き方などが変化しているサインである場合があります。今回は、足の付け根に時々痛みを感じる場合に考えられる股関節の状態や、変形性股関節症との関係、日常生活で確認しておきたいポイントについてご紹介します。
足の付け根の痛みは股関節が原因のことがあります
股関節は、骨盤側にある寛骨臼というくぼみに、大腿骨の先端にある大腿骨頭がはまり込む構造をしています。
歩く、立ち上がる、階段を上る、しゃがむ、方向を変えるなど、日常生活のさまざまな動作で大きな役割を担っている関節です。股関節に何らかの負担が加わると、痛みは必ずしも股関節の外側に出るとは限りません。
股関節由来の症状では、
・鼠径部
・足の付け根
・股関節前面
・大腿部前面
・殿部周囲
などに痛みを感じることがあります。なかでも、鼠径部や足の付け根の痛みは、変形性股関節症などの股関節疾患でみられる代表的な症状の一つです。特に、歩行や立ち上がりなど、股関節に体重がかかる動作で痛みが出る場合には、股関節との関係を確認することが大切です。
変形性股関節症では「時々痛い」ことから始まる場合があります
変形性股関節症というと、「常に強い痛みがある」「歩けなくなる」といったイメージを持たれることがあります。しかし、必ずしも最初から強い症状が出るわけではありません。
比較的初期の段階では、
・長い距離を歩いたあとだけ痛い
・歩き始めに足の付け根が痛い
・朝は気にならないが夕方になると痛む
・長時間座ったあとに立つと痛い
・階段を使った日に症状が出る
・しゃがんだときだけつまる感じがする
といった、活動量や特定の動作に伴う症状として現れることがあります。そのため、「痛みが時々しかないから問題ない」とは限りません。痛みの頻度だけではなく、どのような動作で症状が出るのかを確認することが重要です。
足の付け根が痛いときに確認したい動作
足の付け根や鼠径部に痛みがある場合には、日常生活のどのような場面で症状が出ているのかを確認してみましょう。
例えば、
・歩き始め
・長時間の歩行
・階段の上り下り
・椅子やソファからの立ち上がり
・しゃがみ動作
・靴下や靴を履く動作
・車の乗り降り
・脚を組む動作
・方向転換
などです。股関節は、動作によって曲げる・伸ばす・開く・閉じる・ひねるといった複数の動きを行います。そのため、「歩行では痛くないけれど、靴下を履くときは痛い」「真っすぐ歩くと大丈夫だが、方向転換すると痛む」といった違いがみられることもあります。どの動作で痛みが出るのかを確認することは、股関節の状態を評価するうえで大切な情報になります。
股関節の動きが悪くなっていないか確認しましょう
変形性股関節症などでは、痛みだけではなく、股関節の可動域が徐々に変化することがあります。
例えば、
・以前より脚を開きにくい
・靴下を履きにくくなった
・爪を切る姿勢がとりにくい
・脚を組みにくくなった
・歩幅が小さくなった
・股関節を伸ばしにくい
・左右で脚の動き方が違う
といった変化です。痛みが軽くても、このような動作の変化がある場合には注意が必要です。人は身体の一部が動きにくくなると、別の部分を動かして補おうとします。股関節が十分に曲がらない場合には腰を大きく丸めたり、股関節が伸びにくい場合には歩行中に腰を反らしたりすることがあります。このような動作が続くと、股関節だけでなく、腰部や膝関節にも負担が広がる場合があります。
歩き方の変化も股関節からのサインです
足の付け根が痛い場合には、歩き方も確認しておきたいポイントです。股関節に痛みがあると、無意識に痛い側へ体重をかける時間を短くしたり、歩幅を小さくしたりすることがあります。
また、
・身体を左右に大きく揺らして歩く
・片側だけ歩幅が短い
・痛い側の足が早く床から離れてしまう
・階段で片脚に頼るようになった
・以前より歩く速度が遅くなった
といった変化がみられる場合もあります。このような歩行の変化は、痛みを避けるための身体の反応であることがあります。一時的には楽に感じても、その歩き方が長く続くことで、腰部や膝関節、反対側の股関節などに負担が増える場合があります。
「つまる感じ」「引っかかる感じ」にも注意しましょう
股関節の症状は、必ずしも「痛み」だけとは限りません。患者さんからは、
「股関節がつまる感じがする」
「足の付け根が引っかかる」
「何となく動かしにくい」
「股関節が重い感じがする」
といった表現を聞くことがあります。こうした感覚は、股関節の可動域や関節周囲の筋肉の固さや長さ、動作時の股関節の位置関係などが影響していることがあります。症状が続く場合や繰り返す場合には、まず整形外科を中心とした医療機関で一度状態を確認していただくと、その後の対応を考えやすくなります。
足の付け根が痛いときに無理なストレッチは必要ありません
足の付け根が痛いと、「股関節が硬いからストレッチをした方がよい」と考える方もいらっしゃいます。しかし、痛みを伴う方向へ股関節を無理に動かすことが、必ずしも良いとは限りません。
特に、
・深くしゃがむ
・膝を強く胸へ引き寄せる
・股関節を大きくひねる
・痛みを我慢して開脚する
といった動作で症状が強くなる場合には注意が必要です。股関節の動きにくさには、筋肉の柔軟性だけではなく、股関節そのものの状態、骨盤の動き、筋力、姿勢、身体の使い方など複数の要因が関係します。そのため、「硬いから伸ばす」という一つの考え方だけではなく、どの方向が動きにくいのか、どの動作で痛みが出るのかを確認することが大切です。
日常生活でできる股関節への負担の調整
足の付け根の痛みが軽い場合には、まず日常生活の中で股関節に負担が集中していないか確認してみましょう。
例えば、長時間歩いたあとに痛みが出る場合には、一度に歩く距離を少し短くしたり、途中で休憩を入れたりすることで負担を調整できることがあります。長時間座っている場合には、定期的に立ち上がって姿勢を変えることも大切です。また、低いソファや椅子では股関節が深く曲がりやすくなるため、立ち上がるときに痛みが出る方では、座面の高さを見直す方法もあります。
痛みがあるからといって、すべての活動を控える必要はありません。大切なのは、痛みの出方を確認しながら、現在の股関節の状態に合った活動量に調整することです。症状が繰り返している場合や少しずつ強くなっている場合には、自己判断で無理に運動を続けるのではなく、一度医療機関で状態を確認していただくことも重要です。
足の付け根の痛みで医療機関へ相談した方がよい場合
足の付け根の痛みが繰り返す場合や、徐々に症状が強くなっている場合には、一度医療機関で股関節の状態を確認しておくと安心です。
特に、
・安静にしていても強い痛みがある
・夜間(就寝時)にも痛みが続く
・急に強い痛みが出た
・体重をかけることが難しい
・歩行が急に困難になった
・転倒や外傷後から痛みが続いている
・発熱や強い腫れを伴っている
といった場合には、早めの受診をおすすめします。また、強い痛みがなくても、
・歩き方が以前と変わった
・股関節の動く範囲が狭くなった
・靴下を履きにくくなった
・階段がつらくなった
・立ち上がるときに足の付け根が痛む
など、日常生活での変化が増えている場合には、股関節の状態を一度確認することが重要です。足の付け根の痛みには、変形性股関節症をはじめ、さまざまな原因が考えられます。必要に応じて医療機関で診察や画像検査を受けておくことで、その後の運動や身体の使い方についても考えやすくなります。
医療機関で状態を確認したあとの身体づくり
医療機関で股関節の状態を確認したあとには、日常生活でどのように身体を使っているのかを見直すことも大切です。
例えば、
・どのような歩き方をしているか
・立ち上がるときに身体が左右へ偏っていないか
・股関節だけでなく骨盤や体幹がどのように動いているか
・どの方向へ体重をかけにくいか
・股関節周囲の筋肉がどのように働いているか
などを確認することで、日常生活で股関節に負担がかかりやすい身体の使い方が見つかる場合があります。当フィジオセンターは医療機関ではないため、足の付け根の痛みや股関節の症状が気になる場合には、まず整形外科を中心とした医療機関で状態を確認していただき、そのうえで必要に応じてフィジオセンターのご利用をご検討いただくことをおすすめしています。
医療機関で股関節の状態を確認したあと、歩き方や立ち上がり、日常生活での身体の使い方、運動方法などについて詳しく確認したい場合には、理学療法士の視点から身体の動きを確認していきます。
まとめ
足の付け根や鼠径部に時々感じる痛みは、股関節からのサインとして現れていることがあります。変形性股関節症でも、初期には常に強い痛みが続くとは限らず、「長く歩いたときだけ」「立ち上がったときだけ」「階段を使ったときだけ」といった症状から始まる場合があります。
大切なのは、痛みの強さだけではありません。股関節の動かしにくさ、歩幅の変化、立ち上がりにくさ、靴下の履きにくさ、歩き方の変化なども確認しておきたいポイントです。足の付け根が痛い場合には、無理にストレッチを行うのではなく、まず「どのような動作で症状が出るのか」を確認してみましょう。
また、足の付け根の痛みにはさまざまな原因が考えられます。症状が続いている場合や繰り返す場合には、まず医療機関で股関節の状態を確認していただくことで、その後の対応を考えやすくなります。
フィジオセンターでは、医療機関にて股関節の状態を確認したあと、日常生活での身体の使い方や運動について詳しく確認したい方に対して、股関節の可動域や筋力だけでなく、骨盤や体幹の動き、立位姿勢、立ち上がり、歩行、階段昇降など、実際の日常生活動作を含めた評価を行っています。
「時々痛むだけだから」と気になりながら過ごしている方も、まず現在の股関節の状態を確認し、そのうえでご自身に合った身体の使い方や運動方法を考えていくことが大切です。
歩き方や股関節の動かしにくさ、日常生活での身体の使い方などについて気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
フィジオセンター
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