「股関節に痛みはないけれど、以前より動かしにくくなった」「靴下を履くときに脚が上がりにくい」「歩いているときに片側の脚が出しにくい」このような股関節の動かしにくさについて、ご相談をいただくことがあります。
股関節に何らかの問題がある場合、痛みが最初に現れるとは限りません。痛みを感じていなくても、股関節の動く範囲が狭くなっていたり、周囲の筋肉が十分に働いていなかったりする場合があります。また、股関節そのものだけでなく、骨盤や腰椎の動きなどが関係していることもあります。
今回は、股関節に痛みがないにもかかわらず動かしにくさを感じる場合に、考えられる原因と早期に確認しておきたい身体機能についてご紹介します。
痛みがなくても股関節の機能が低下していることがあります
股関節は、身体を支えるだけでなく、歩く、立ち上がる、階段を上る、しゃがむなど、日常生活のさまざまな動作に関わっています。そのため、股関節の動きが少し制限されただけでも、日常生活の中で動かしにくさを感じる場合があります。
例えば、
・以前より足を開きにくくなった
・靴下や靴を履く動作が難しくなった
・しゃがむときに股関節が曲がりにくい
・歩くときに足が後ろに伸ばしにくい
・片脚で立つと身体が不安定になる
といった変化です。こうした状態では、股関節の動く範囲や筋力、身体を支える機能などに変化が生じている可能性があります。ただし、動かしにくさがあるからといって、必ず股関節に病気があるとは限りません。普段の身体活動量や運動習慣、姿勢なども関係している場合があります。
股関節の動く範囲を確認してみましょう
はじめに確認しておきたいのが、股関節の可動域です。股関節は、足を前後に動かすだけでなく、左右に開いたり、内側や外側へひねったりすることができます。
例えば、靴下を履く動作が難しい場合には、股関節を曲げたり、外側へ開いたり、ひねったりする動きが関係していることがあります。また、歩幅が以前より小さくなった場合には、歩行中に股関節を後ろへ伸ばす動きが十分に出ていない可能性もあります。
大切なのは、単に身体が硬いと考えるのではなく、どの方向への動きが制限されているのかを確認することです。
変形性股関節症でも痛みが目立たない場合があります
変形性股関節症では、股関節の軟骨や骨などに変化が生じ、関節の動きが制限される場合があります。一般的には足の付け根の痛みや、歩行時の痛みなどが知られていますが、画像上の変化と痛みの程度は必ずしも一致しません。
そのため、股関節に変化があっても、痛みがほとんどない場合があります。特に股関節を内側へひねる内旋や、深く曲げる屈曲などの動きが制限される場合があります。ただし、これらの可動域制限だけで変形性股関節症と判断することはできません。また、股関節の動かしにくさには、筋肉の柔軟性や関節周囲の組織、骨盤や腰部の動きなども関係しています。
以前と比べて動く範囲が狭くなっている場合には、痛みの有無だけで判断せず、必要に応じて医療機関で状態を確認することが大切です。
股関節周囲の筋力も重要です
股関節の動かしにくさには、関節の可動域だけでなく、周囲の筋肉の働きが関係している場合もあります。股関節周囲には、大殿筋、中殿筋、腸腰筋など、さまざまな筋肉があります。
これらの筋肉が十分に働かない場合には、股関節そのものに強い痛みがなくても、「足が上がりにくい」「身体を支えにくい」「歩くと疲れやすい」といった状態につながることがあります。
ただし、筋力が弱いことと、筋肉を適切なタイミングで使えていないことは同じではありません。そのため、筋力だけでなく、実際の動作の中で筋肉がどのように働いているかを確認することも重要です。
骨盤や腰部の動きも確認してみましょう
股関節と骨盤、腰部は、それぞれ独立して動いているわけではありません。例えば、椅子から立ち上がるときや身体を前へ曲げるときには、股関節と骨盤、腰部が協調して動く必要があります。このような動きの関係は、股関節と脊柱の相互作用(Hip–spine interaction)としても知られています。
股関節の動きが制限されている場合には、その不足を補うために、骨盤や腰部を大きく動かしている場合があります。反対に、骨盤や腰部の動きが少ないことで、股関節が動かしにくく感じられることもあります。
例えば、
・前かがみになるときに腰ばかりが曲がる
・脚を後ろへ伸ばそうとすると腰が反る
・しゃがむときに骨盤が左右へ傾く
・片脚で立つと身体が大きく傾く
といった動きです。そのため、股関節の動かしにくさを確認するときには、股関節だけでなく、骨盤や腰部の動きも含めて評価することが大切です。
片脚で身体を支える機能も確認しておきましょう
股関節の機能を考えるうえで、片脚立位は重要な動作の一つです。歩行中には、左右の脚で交互に身体を支える時間があります。このとき、股関節周囲の筋肉は、骨盤や体幹の位置を調整しながら、身体を安定させる役割を担っています。
例えば、
・片脚で立つと身体が左右に揺れる
・片側の骨盤が下がる
・身体を大きく傾けないと立てない
・左右で片脚立位の安定性が異なる
といった場合には、股関節周囲筋の機能やバランス能力などが関係している可能性があります。ただし、片脚立位の安定性は、股関節の筋力だけで決まるものではありません。足部や足関節の機能、体幹の働き、感覚機能なども関係しているため、身体全体の働きとして確認する必要があります。
日常生活で確認しておきたいポイント
股関節の動かしにくさが気になる場合には、普段の生活の中で左右差や以前からの変化を確認してみましょう。
例えば、
・左右で靴下の履きやすさが違わないか
・椅子から立ち上がる際に片側へ体重が偏っていないか
・歩くときに左右の歩幅が違っていないか
・階段を上る際に片側の足だけ力が入りにくくないか
・しゃがむときに股関節が十分に曲がっているか
・片脚で立ったときに左右で安定性が違わないか
といった点です。ここで重要なのは、左右の動きが必ず同じでなければならないということではありません。身体にはもともと左右差がある場合もあります。
しかし、以前は問題なくできていた動作が難しくなった場合や、左右差が徐々に大きくなっている場合には、身体機能に何らかの変化が生じている可能性があります。
医療機関で確認した方がよい場合
股関節の動かしにくさが続く場合や、以前より動きが悪くなっている場合には、一度医療機関で状態を確認していただくことをおすすめします。
特に、
・股関節の動く範囲が徐々に狭くなっている
・歩き方が以前と変わってきた
・靴下や靴を履くことが難しくなってきた
・足に力が入りにくくなってきた
・日常生活に支障が出始めている
・動かしにくさに加えて痛みやしびれが出てきた
といった場合には、状態を確認しておくことが大切です。また、急に脚が動かしにくくなった場合や、明らかな筋力低下を伴う場合には、股関節以外の神経系の問題などが関係している可能性もあるため、速やかな医療機関への相談が必要です。
股関節の動かしにくさには、変形性股関節症だけでなく、さまざまな原因が考えられます。必要に応じて医療機関で股関節の状態を確認することで、その後の運動や日常生活での対応についても考えやすくなります。
医療機関で状態を確認したあとの身体づくり
医療機関で股関節の状態を確認したあとには、実際の日常生活でどのように股関節を使っているかを詳しく見ていくことも重要です。
例えば、
・股関節がどの方向へ動きにくいか
・股関節周囲の筋力に左右差があるか
・骨盤や腰部がどのように動いているか
・立ち上がりや歩行で体重がどのように移動しているか
・片脚立位で身体を安定させられるか
・日常生活のどの動作で不自由を感じているか
などを確認していきます。フィジオセンターでは、医療機関で状態を確認したあと、理学療法士の視点から股関節の可動域や筋力、骨盤や体幹の動き、立位姿勢、歩行などの身体機能を評価しています。
単に股関節の柔軟性や筋力だけを確認するのではなく、実際の動作の中で身体がどのように使われているかを確認し、それぞれの身体機能に合わせた運動方法を検討していきます。
まとめ
股関節に痛みがなくても、動かしにくさを感じる場合には、股関節の可動域や筋力、骨盤や腰部の動き、身体のバランスなどが関係していることがあります。
また、変形性股関節症では、画像上の変化があっても痛みが目立たない場合があり、股関節の動く範囲に制限が生じていることもあります。
大切なのは、
・股関節がどの方向へ動きにくいのか
・左右で動きに違いがあるのか
・以前より動く範囲が狭くなっていないか
・歩行や立ち上がりなどに変化がないか
・骨盤や腰部の動きで補っていないか
といった点を確認することです。股関節の動かしにくさを感じた場合には、痛みがないからといって見過ごさず、日常生活の中で身体の変化を確認してみましょう。動かしにくさが続く場合や、徐々に強くなっている場合には、まず医療機関で股関節の状態を確認していただくことが大切です。
「痛みがないから大丈夫」と考えるのではなく、以前より股関節が動かしにくくなっていないか、普段の身体の使い方に変化がないかを確認し、ご自身の身体の状態を知ることから始めてみてください。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
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