「歩いていると左右の脚の出し方が違う気がする」「片方の脚だけ上がりにくい」「靴下を履くときに左右で動かしやすさが違う」このような脚の動きの左右差について、ご相談をいただくことがあります。
人の身体には、もともと多少の左右差があります。利き脚や利き手、日常生活での身体の使い方、内臓の位置や左右の寛骨の大きさの違いなどによって、筋力や柔軟性、動き方に違いが生じることは珍しくありません。
しかし、以前は気にならなかった左右差が目立つようになった場合には、股関節の関節可動域や筋力、身体を支える機能などに変化が生じている可能性があります。
今回は、脚の動きに左右差が生じる原因と、股関節を中心に確認しておきたい身体機能についてご紹介します。
脚の動きに左右差が生じるのはなぜ?
歩く、階段を上る、椅子から立ち上がるといった日常生活の動作では、股関節がさまざまな役割を担っています。
例えば、歩行中には、脚を前方へ振り出す動きと、身体を支える動きが交互に繰り返されます。このとき、股関節には十分な可動域だけでなく、股関節周囲筋の作用による安定性も必要になります。
左右で脚の動きが異なる場合には、次のような要因が考えられます。
・股関節の関節可動域に左右差がある
・股関節周囲の筋力や筋活動に違いがある
・片脚で身体を支える際の安定性が異なる
・骨盤や腰椎の動きに左右差がある
・痛みや違和感を避けるために動作が変化している
ただし、脚の動きの違いが必ず股関節の問題によって生じるわけではありません。膝関節や足関節の機能、神経系の働きなどが関係する場合もあります。
大切なのは、左右差そのものだけでなく、以前と比較してどのような変化が生じているかを確認することです。
股関節の関節可動域に左右差がないか確認しましょう
脚の動きに左右差を感じた場合、はじめに確認しておきたいのが股関節の関節可動域です。股関節は、さまざまな方向へ動く関節です。
例えば、
・片側の膝だけ胸に近づけにくい
・脚を外側へ開く動きに左右差がある
・あぐらをかくと片側の膝だけ高くなる
・靴下を履くときに片側の股関節が曲げにくい
・歩くときに片側の脚が後方へ伸びにくい
といった場合には、股関節の可動域に違いが生じている可能性があります。
特に変形性股関節症では、股関節を内側へひねる内旋や、骨盤に対して太ももが後方へ動く伸展などの動きが制限されることがあります。
ただし、可動域に左右差があるだけで変形性股関節症と判断することはできません。筋肉の柔軟性や骨盤と腰椎の動きなども関係するため、複数の身体機能を組み合わせて確認することが重要です。
股関節周囲の筋力や安定性も関係します
脚の動きの左右差には、股関節周囲の筋肉の働きも関係しています。
例えば、腸腰筋は脚を前方へ持ち上げる動きに関わり、大殿筋は太ももを後方へ伸ばす働きを担っています。また、中殿筋などの股関節外転筋群は、片脚で身体を支える際に骨盤を安定させる重要な役割があります。
これらの筋肉の働きに左右差がある場合には、
・歩行中に片側の脚を振り出しにくい
・階段を上るときに片側の脚だけ力が入りにくい
・片脚で立つと身体が大きく傾く
・立ち上がるときに一方の脚へ体重が偏る
といった動作の違いにつながることがあります。
ここで重要なのは、筋力が十分にあることと、実際の動作の中で筋肉を適切に使えることは必ずしも同じではないという点です。そのため、筋力の左右差だけでなく、立ち上がりや片脚立位などの実際の動作を通して、股関節周囲の筋肉がどのように働いているかを確認する必要があります。
股関節だけでなく骨盤や腰部の動きも重要です
股関節の動きは、骨盤や腰椎の動きと密接に関係しています。例えば、股関節を十分に曲げられない場合には、骨盤や腰部を大きく動かすことで、その不足を補っている場合があります。
また、片側の股関節が伸びにくい場合には、歩行中に骨盤を回旋させたり、腰部(腰椎)を過剰い反らせたりすることで脚を後方へ動かしていることもあります。
このように、本来は股関節で行いたい動きを、ほかの身体部位で補うことを代償動作といいます。
ただし、骨盤や腰部が動くこと自体が悪いわけではありません。特に股関節屈曲の運動では純粋な股関節だけの屈曲運動は90°程度であることがわかっています。
重要なのは、股関節の動きが不足しているために過剰な代償が生じていないか、左右で身体の使い方が大きく異なっていないかを確認することです。
左右差が大きくなってきた場合には医療機関への相談を
脚の動きに左右差があっても、日常生活に支障がなく、以前から変化していない場合には、必ずしも問題があるとは限りません。
一方で、次のような変化がみられる場合には、整形外科などの医療機関で状態を確認することをおすすめします。
・以前より左右の脚の動きが異なってきた
・股関節の動く範囲が徐々に狭くなっている
・歩き方が変化してきた
・片側の脚に体重をかけにくくなった
・足の付け根やお尻などに痛みが出てきた
・脚の動かしにくさが日常生活に影響している
また、急に片側の脚が動かしにくくなった場合や、明らかな筋力低下、しびれなどを伴う場合には、股関節以外の神経系の問題が関係している可能性もあります。このような場合は、医療機関への受診がすすめられます。
左右差の原因を確認したうえで身体機能を整えましょう
医療機関で必要な診察を受けたあとには、左右の脚の動きに違いが生じている原因を身体機能の面から確認することも重要です。
フィジオセンターでは、理学療法士の視点から股関節の関節可動域や筋力、骨盤・腰部の動き、片脚立位での安定性、歩行などを評価しています。例えば、股関節の可動域に制限がある場合と、筋力や身体を支える機能が低下している場合とでは、必要な運動療法やアプローチ方法も異なります。
単に左右の動きを同じにすることを目的とするのではなく、それぞれの身体機能に合わせて、日常生活の中で無理なく身体を動かせる状態を目指すことが大切です。
まとめ
左右の脚の動きが異なること自体は、必ずしも身体の異常を意味するものではありません。
しかし、以前と比べて左右差が大きくなった場合には、股関節の可動域や筋力、片脚で身体を支える機能、骨盤や腰部の動きなどに変化が生じている可能性があります。
特に確認しておきたいのは、
・左右で股関節の動く範囲が異なっていないか
・片側の脚だけ持ち上げにくくなっていないか
・立ち上がりや歩行で体重のかけ方が偏っていないか
・股関節の動きを骨盤や腰部で過剰に補っていないか
・以前より左右差が大きくなっていないか
といった点です。「少し左右で動きが違うだけだから」と見過ごさず、ご自身の身体にどのような変化が生じているかを確認してみましょう。
左右差が徐々に大きくなっている場合や、日常生活で動かしにくさを感じる場合には、まず医療機関で状態を確認していただくことが大切です。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
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