Cam変形の有病率と関連する要因について

Cam変形の有病率と関連する要因について

今回のブログでは、近年注目される事の多い、Cam変形の有病率と関連する要因について、大変貴重な日本人を対象とした、Tomomatsuら(2024)の研究研究をご紹介します。

□ 研究の概要

Cam変形は、大腿骨頭と頸部の移行部が球状でない、いわゆる「くびれの少ない」形態を指します(※Cam変形とは、太ももの骨の付け根部分がなめらかでなく、丸みが足りないため、動くときに関節がぶつかりやすくなる状態です)。これは、股関節の運動時に骨同士が衝突しやすくなり、関節唇や軟骨に過剰なストレスを与えることで、変形性股関節症の一因になることが知られています。

本日ご紹介する研究は、日本国内の大規模コホート研究に参加した1,480名(2,960股関節)を対象に、Cam変形の有病率およびそれに関連する要因を解析したものです。Cam変形は、X線画像から測定される「α角(アルファ角)」が60度以上であることで定義され(※α角とは、太ももの骨の丸みの具合を角度で数値化したものです。60度を超えるとCam変形とされます)、併せて脊椎-骨盤パラメータ(骨盤傾斜など)との関連性も検討されました(※脊椎-骨盤パラメータとは、骨盤や背骨の傾き具合を示す数値で、姿勢や体の動きと関係しています)。

□ 研究の結果は以下の内容となります

1つ目は、Cam変形の有病率は加齢とともに上昇する事です。本研究におけるCam変形の有病率は全体で5.0%でした。年齢層別で見ると、若年層(49歳以下)では2.6%にとどまる一方、80歳以上では10.9%と明らかな増加傾向を示しています。この結果は、Cam変形が発育時や若年期のスポーツ活動だけでなく、加齢に伴う骨のリモデリング(※骨の形が年齢とともにゆっくり変化すること)の影響を受けて発生し得ることを示唆しています。

2つ目は、Cam変形は男女差がある事です。Cam変形は男性に多く、男性では有病率が高い一方、女性では加齢による変化がより顕著に見られました。特に女性では、Cam変形を示すα角と骨盤傾斜(Pelvic Tilt:PT)に有意な正の相関が認められ(※骨盤傾斜とは、骨盤が前後にどれだけ傾いているかを示す角度です)、骨盤の後傾化がCam変形の一因である可能性が示されました。

3つ目は、Cam変形は必ずしも痛みを伴わない事です。興味深い点として、Cam変形と股関節痛の間には有意な関連がみられませんでした(Cam変形群147股関節中、痛みを有するのはわずか1件)。これは、形態的異常が必ずしも症状に直結するわけではないことを示しています。

□ フィジオセンターでの臨床応用とリハビリテーションの視点

1つ目は、無症候性Cam変形への予防的アプローチです。今回の研究ではCam変形が痛みを伴わないことが多いことが示されましたが、力学的ストレスの蓄積が将来的な変形性股関節症のリスクとなる可能性があります。そのため、40代以降の無症候性例であっても、定期的な股関節のチェックや日常生活動作の見直しが重要です。

2つ目は、体幹・骨盤のアライメントと筋バランスの調整です。骨盤の後傾化や腰椎前弯の減少は、股関節の可動性や筋出力に影響を与えるため、体幹のインナーマッスルや股関節周囲筋の協調的な強化とストレッチを組み合わせた介入が有効です。当センターでは、立位姿勢は歩行のフォームのチェックを通じて、個別の動き方や姿勢に合わせた運動プログラムを提供しています。

3つ目は、中高年の運動習慣と体重管理です。加齢に伴うCam変形の進展を抑えるためには、運動習慣の定着と股関節への過負荷を避ける日常生活指導が不可欠です。BMI(体格指数)の増加もCam変形と関連があることから、適切な体重管理の重要性も再確認されました。

□ まとめ

Tomomatsuら(2024)の研究は、日本人におけるCam変形が「痛みの有無を問わず存在しうる加齢性・構造的変化」であることを示しています。また、特に女性では骨盤傾斜とCam変形の関連が明らかになったことは、姿勢・動作パターンの見直しや予防的アプローチの必要性を示唆する重要な知見です。

当センターでは、Cam変形・発育性股関節形成不全・変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

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