本日のブログでは、2021年に発表された論文「Statistical shape modeling of the hip and the association with hip osteoarthritis: a systematic review」をもとに、股関節の形態(かたち)と変形性股関節症との関係について解説します。
□ 研究の概要
股関節は、大腿骨の上端にある「大腿骨頭」と骨盤側の「寛骨臼」という受け皿状の構造で構成されており、そのかたちは人によって微妙に異なります。こうした個々の股関節形状の違いが、将来の変形性股関節症の発症や進行にどう影響するかについて、研究が進んでいます。
今回紹介する研究は、股関節の形を詳細に解析する「統計的形状モデリング(Statistical Shape Modeling:SSM)」という新しい画像解析技術を用いて、股関節の形態と変形性股関節症との関係を調べた複数の研究を総合的にレビューしたものです。
□ 統計的形状モデリング(SSM)とは?
SSMは、レントゲン写真やMRI画像などから股関節周囲の骨の輪郭を数十〜数百の点で描写し、統計的にかたちのパターンを抽出する技術です。これにより、従来の「α角」や「中心-縁角」など一部の数値的指標では捉えきれなかった、より全体的で複雑な形態の違いを把握できるようになります。この研究では、6,483の股関節画像を解析し、股関節のかたちの違いが将来的な変形性股関節症の発症や人工股関節全置換術とどう関係しているかを検討しました。
□ 研究の結果は以下の内容でした
1つ目は、「Cam変形」との関連です。Cam変形とは、大腿骨頭と首の境目がなだらかではなく、この首の部分が太くなってしまう形状を指します。統計的形状モデリングで解析された形状の中でも、「頭-頸部移行部の平坦化」や「非球形の大腿骨頭」など、Cam形態を示唆する形状が、変形性股関節症や人工股関節全置換術のリスクと関連していることが複数の研究で報告されています。
2つ目は、発育性股関節形成不全との関連です。寛骨臼が浅く、大腿骨頭を十分に覆えていない状態を「発育性股関節形成不全」といいます。このような形状は、関節への圧力が一部に集中しやすく、変形性股関節症の発症リスクを高めます。統計的形状モデリングを用いた解析でも、「被覆の少ない寛骨臼」や「浅い受け皿構造」を示す形状モードがリスク要因として示されました。
3つ目は、他の形状との「組み合わせ」に注意する事です。Cam変形や寛骨臼形成不全の単独だけでなく、両者が同時に存在するケースでは、変形性股関節症のリスクがさらに高まる可能性が示唆されています。さらに骨盤全体の構造との関連性も指摘されています。
□ フィジオセンターでの臨床応用と予防の視点
この研究からわかるように、股関節の形態は生まれつきの特徴がベースになるため、施術・コンディショニングをでは骨の形態を変えることはできません。しかし、以下のような対策で症状の予防や進行抑制が期待できます。
1つ目は、動作の最適化を行う事です。医療機関で股関節に関わる形態異常が指摘されている場合、股関節に負担をかける動作、例として深いしゃがみ込み動作、重たい物を持ち上げる動作、足を組む姿勢などを見直し、関節軟骨や関節唇の損傷リスクを下げる指導を確認します。
2つ目は、 インナーマッスルの機能改善と柔軟性の改善です。股関節周囲のインナーマッスル、特に腸腰筋・小殿筋・深層外旋六筋などの機能を高めることで、携帯による不利を助けることが可能です。たとえば、Cam形態の方には屈曲・内旋の負担を減らす腰椎の柔軟性を高める動作指導を行う事などが考えられます。
□ まとめ
本研究レビューは、股関節の形状と変形性股関節症の関連性を統計的形状モデリングという先進的な解析技術で明らかにしました。特にCam形態や寛骨臼形成不全などの骨の形態が、将来的な関節障害のリスクを高めることがわかっており、早期からの介入や予防的対応が重要です。
当センターでは、発育性股関節形成不全・変形性股関節症・Cam変形をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志