変形性股関節症と長時間歩行に備えるセルフマネジメント

変形性股関節症と長時間歩行に備えるセルフマネジメント

―旅行、買い物、通勤などで長く歩く日に不安を感じる場合―

変形性股関節症をお持ちの方やご家族から、次のようなご相談を受けることがあります。

・長く歩くと途中から股関節が痛くなる
・旅行や買い物で歩く距離が増えると不安がある
・歩き続けるうちに足が重くなり、休みたくなる
・帰宅後や翌日に股関節の痛みが強くなることがある

このような「長時間歩行への不安」は、変形性股関節症をお持ちの方でみられることのある困りごとの一つです。歩くことは、外出、買い物、通勤、仕事、趣味など、日常生活のさまざまな場面で必要になります。そのため、長く歩くことがつらくなると、行動範囲が狭くなったり、外出そのものが不安になったりすることがあります。

ただし、長時間歩行で痛みが出るからといって、単純に「股関節だけが悪い」と考えればよいわけではありません。今回は、変形性股関節症と長時間歩行の関係、なぜ歩き続けるとつらくなりやすいのか、どのようなセルフマネジメントが大切なのかを解説します。

長時間歩行とは何か

長時間歩行とは、単に長い距離を歩くことだけを指すわけではありません。たとえば、旅行先での移動、買い物での館内の移動、通勤時の歩行、駅構内での移動などのように、立つ・歩く・止まるを繰り返しながら、結果として股関節に負担が積み重なる場面も含まれます。

一見すると「歩いているだけ」に見えるかもしれませんが、実際には股関節、膝関節、足関節に加えて、骨盤や体幹の働きも大きく関係しています。また、歩行中は片脚で身体を支える時間が繰り返されるため、筋力だけでなく、筋持久力やバランス能力も重要になります。

変形性股関節症をお持ちの方では、関節軟骨の変化だけでなく、関節包、骨、周囲の筋肉などにも影響が及ぶことがあります。その結果、歩行そのものはできても、歩き続ける中で徐々に痛みや疲労感が強くなりやすいことがあります。長時間歩行は単なる「体力の問題」ではなく、股関節の動き、身体の使い方、荷重のかけ方が重なって成り立っている動作と考えることが大切です。

なぜ変形性股関節症で長時間歩行がつらくなりやすいのか

変形性股関節症で長時間歩行がつらくなりやすくなる背景には、いくつかの要因があります。

・股関節の可動域が小さくなり、歩幅が狭くなりやすい
・お尻の大殿筋や体幹深層筋がうまく働きにくくなる
・片脚で体重を支える時間が不安定になりやすい
・痛みを避ける歩き方が続き、さらに股関節以外の部分も疲れやすくなる

歩き続けるためには、左右の脚に交互に体重を乗せながら、身体を前方へ運ぶ必要があります。この時、股関節の動きが小さかったり、お尻の大殿筋やや体幹深層筋の働きが低下していたりすると、効率よく歩きにくくなります。また、痛みを避けようとして体をかばう歩き方が続くと、必要以上にエネルギーを使いやすくなり、結果として長く歩くと股関節以外の部分にも影響を及ぼすことがあります。

つまり、長時間歩行のつらさは単に「股関節が悪いから起こる」というよりも、股関節そのものの変化と、周囲の筋肉や歩き方の変化が重なって生じる症状と考えることが大切です。

長時間歩行で痛みがある時、何が大切なのか

長く歩くと痛みが出る場合、「できるだけ歩かない方がよいのでは」「我慢して歩くしかないのでは」と思われる方もいらっしゃいます。しかし、まず大切なのは、無理に頑張ることではなく、歩きやすい条件を整えることです。

たとえば、

・歩く予定のある日に向けて、普段から少しずつ歩行量を調整する
・歩き始めは少しゆっくり歩き、いきなり速く歩かない
・途中で休める場所を事前に確認しておく
・クッション性と安定性のある靴を選ぶ
・必要に応じて杖やノルディックウォーキングのポール、手すりなどのサポートを活用する

といった工夫は、股関節への負担を減らす助けになります。

特に大切なのは、「痛みが出てから休む」のではなく、「痛みが強くなる前に負担を調整する」ことです。たとえば、長く歩く予定がある日には、最初から最後まで同じペースで歩き続けるのではなく、途中で短い休憩を入れる方が、股関節への負担を抑えやすいことがあります。大切なのは、「痛みがあるのに頑張る」ことではなく、「痛みが出にくい条件をつくる」ことです。

どのような工夫や運動が大切か

長時間歩行時の痛みや不安を減らすためには、その場の工夫だけでなく、身体の機能そのものを整えていくことも大切です。変形性関節症の管理では、運動療法は非常に重要な位置づけにあります。海外のガイドラインでも、変形性股関節症のある方に対して、その人の状態に合わせた運動療法や自己管理が勧められています。

長時間歩行に不安がある方では、いきなり無理に歩く距離を増やすのではなく、まず今の状態に合った方法で、歩きやすい身体づくりを進めることが大切です。

たとえば、

・体幹深層筋の機能を高め歩行の際に安定性を高める練習
・股関節周囲筋の筋力や持久力を高める練習
・股関節の無理のない範囲での関節可動域練習
・休憩を取り入れながらの歩行練習
・痛みが出にくい歩幅や歩行ペースの確認

といった内容は、実際の長時間歩行につながりやすい練習です。

また、必要に応じて歩行補助具を使うことも大切です。杖やノルディックウォーキングのポールを使うことに抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、これらの歩行補助具は「悪くなった人だけが使うもの」ではなく、股関節への負担を減らし、安全に歩くための手段の一つです。大切なのは、その場で少し楽になることだけではなく、歩きやすさを日常生活の中でどう活かしていくかという視点です。

また、ただ歩く時間だけを見ればよいわけではありません

ここで大切なのは、「何分歩けるか」「何メートル歩けるか」だけで考えないことです。同じように「長く歩くと股関節が痛い」と感じていても、その背景は一人ひとり異なります。股関節の可動域制限が主な要因の方もいれば、お尻の大殿筋の筋力低下、体幹深層筋機能の低下、左右への荷重の偏り、歩行フォームの乱れ、活動量の低下などが大きく関係している場合もあります。

そのため、本当に必要なのは「歩くと痛いから歩く量だけ減らす」という単純な対応ではなく、

・股関節がどの方向に動きにくいのか
・どの筋肉が働きにくいのか、過剰に働いているのか
・歩行の中でどのように崩れやすいのか

などを確認したうえで、原因に合わせて介入することです。

フィジオセンターでの取り組み

フィジオセンターでは、変形性股関節症をお持ちの方による長時間歩行時の痛みや不安に対して、単に股関節の硬さや痛みだけを見るのではなく、他の関節の関節可動域、インナーマッスルを含めた股関節周囲筋の機能、体幹深層筋機能、歩行フォーム、片脚支持時の安定性などを総合的に評価しています。

そのうえで、

・股関節を含めた関節可動域の確認
・股関節周囲の筋機能や体幹深層筋機能の評価
・歩行フォームから考えられる股関節に加わる負担の確認
・日常生活につながる反復練習

を通じて、長く歩けるようになることだけでなく、一日の中で動きやすい身体づくりを目指します。

「歩いていると途中から股関節が痛くなる」
「旅行や買い物に行くのが不安」
「長く歩いた後に強く疲れてしまう」

そのようなお悩みがある方は、早めに専門的な評価を受けることが大切です。

まとめ

変形性股関節症では、長時間歩行の際に股関節の痛みやだるさ、不安感がみられることがあります。長時間歩行のつらさは、股関節そのものの変化だけでなく、周囲の筋肉や体幹機能、歩き方の影響も重なって生じることがあります。

・長時間歩行の不安は、変形性股関節症でみられることがある
・歩行量、歩幅、休憩の取り方、靴の選択や靴紐の縛り方、杖やノルディックウォーキングのポールを使用するなどの工夫で負担を減らせることがある
・運動療法は重要であり、股関節の動きや筋機能、体幹機能、歩行フォームまで含めた評価が大切
・その場しのぎではなく、生活の中で歩きやすくなることを目指すことが重要

長く歩くたびに不安や痛みを感じる場合は、専門的な評価を受けながら、状態に合った運動や工夫に取り組むことをおすすめします。フィジオセンターでは、医学的根拠に基づき、一人ひとりの状態に合わせたリハビリテーションを提供しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

一覧に戻る
完全予約制
ご予約はこちら