パーキンソン病と靴下を履く動きについて

パーキンソン病と靴下を履く動きについて

―靴下が履きにくい、途中で動きが止まってしまうと感じる方へ―

パーキンソン病をお持ちの方やご家族から、次のようなご相談を受けることがあります。

・靴下を履こうとすると前かがみになりにくい
・足先に手が届くまでに時間がかかる
・片足を上げるとふらついて不安になる
・座っていても動きが止まり、うまく履けない

靴下を履くことは、日常生活の中では小さな動作に見えるかもしれません。しかし実際には、体幹を曲げる動き、股関節や膝関節の関節可動域、足を持ち上げる力、手指の操作、バランス、注意の向け方など、いくつもの要素が必要です。パーキンソン病をお持ちの方では、筋強剛、姿勢保持の難しさ、動作の動きはじめの動きにくさ等が重なり、靴下を履く動作が難しくなりやすいことが知られています。

靴下を履く動きでは何が必要か

靴下を履くには、まず座った姿勢を安定させたうえで、体幹を前に倒し、足を自分の近くへ引き寄せ、つま先に靴下をかぶせ、最後に引き上げるという流れが必要です。この一連の動作では、体幹の前屈・回旋、股関節の屈曲、片側下肢のコントロールと反対の下肢の支える機能、手指の巧緻性、動作の順序立てが求められます。パーキンソン病をお持ちの方では、特に体幹の可動性低下やが生活の質に関連することが示されており、体幹の動きにくさは着替えのような生活動作にも影響しやすいと考えられます。

なぜパーキンソン病では靴下を履きにくくなるのか

理由は一つではありません。代表的なものとして、

・筋強剛により体幹や股関節まわりが硬くなる
・動作緩慢により足を持ち上げたり手を動かしたりするのに時間がかかる
・体幹回旋や前屈の可動性低下により、足先へ手が届きにくくなる
・バランス昨日の低下により足を持ち上げた姿勢が不安定になる
・手指の細かな操作が難しく、靴下の口を広げにくい
・注意機能や二重課題の影響で途中で動作が止まりやすい

といったことが挙げられます。パーキンソン病をお持ちの方の場合、着替えのような動作は細かな手の操作や複雑な連続動作の影響を受けやすいこと、また意識を向けて一つずつ行う工夫が有効になりうることが示されています。

改善のために大切なのは「筋力」だけではありません

靴下を履きやすくするために、「足腰を鍛えればよい」と考えられることがあります。もちろん下肢筋力や体幹機能は大切です。しかし、近年の系統的レビューや理学療法ガイドラインでは、パーキンソン病に対しては抵抗運動、バランス練習、課題特異的練習、外的キュー、歩行練習などを組み合わせることが重要とされています。日常生活動作の改善についても、単一の筋力強化より、多面的な運動や目標に合わせた練習のほうが有効性を示す報告があります。

どのような練習や工夫が行われるのか

実際の介入では、状態に応じて次のような方法を組み合わせます。

・体幹・股関節の動きを出す練習
前かがみになりにくい方では、体幹前屈や回旋、股関節屈曲を引き出す練習が土台になります。体幹や股関節の動きが改善しやすくなると、足先に手が届きやすくなることがあります。

・座位でのバランス練習
ふらつきが強い方では、立って履くよりも、まず安定した椅子に座って動作を練習するほうが安全です。高齢者の更衣動作ではバランス要求が高く、環境調整や支持物の工夫が重要とされています。パーキンソン病をお持ちの方の場合、着替えのための椅子や手すりなどの設置が環境調整として挙げられています。

・動作を分けて行う練習
「足を引き寄せる」「靴下の口を広げる」「つま先に合わせる」「引き上げる」といったように、動作を小さく区切って一つずつ行う方法です。パーキンソン病をお持ちの方の場合、複雑な連続動作を段階づけて、注意を向けながら行う戦略が有効な場合があります。

・外的キューや環境調整
「1、2、3で始める」「まず左足から」などの声かけ、見やすい位置に椅子や道具を置く、足元を明るくする、邪魔物を減らすといった工夫です。外的キューはパーキンソン病の運動遂行を助ける手段として推奨されています。

ただ練習するだけでは不十分です

靴下を履く練習ができても、実際の生活場面でうまくいかなければ意味がありません。大切なのは、朝は履けるのに夕方は難しいのか、椅子が変わると難しくなるのか、薬が効いている時間帯とそうでない時間帯で差があるのかまで含めて確認することです。パーキンソン病をお持ちの方の場合、内服の効果が『OFF』の時間帯に日常生活動作が大きく妨げられることがあり、生活場面に即した評価が欠かせません。

原因に合わせた評価が必要です

靴下を履きにくい方でも、背景は人によって異なります。体幹の硬さが主な方もいれば、股関節の屈曲可動域制限、座位バランス、手指巧緻性、注意機能、姿勢の崩れ、すくみ、疲労、内服の効果の変動が大きく関係している場合もあります。したがって本当に必要なのは、「とにかく練習すること」ではなく、なぜ履きにくいのかを具体的に見極めることが大切です。

フィジオセンターでの取り組み

フィジオセンターでは、パーキンソン病の方の靴下を履く動作に対して、単に筋力だけを見るのではなく、体幹機能、股関節の可動性、座位バランス、手指操作、動作の流れ、生活環境、時間帯による変動まで含めて評価します。

そのうえで、

・体幹深層筋や下肢の機能改善
・靴下を履く動作そのものの反復練習
・椅子の高さ等を含めた環境の調整
・ご本人に合った方法の提案

を通して、安全に、楽に、日常生活の中で実行しやすい方法を一緒に考えていきます。

まとめ

パーキンソン病で靴下を履きにくくなる背景には、動作緩慢や筋強剛だけでなく、体幹の可動性、股関節の屈曲の関節可動域、バランス昨日、手指の操作、注意機能、生活環境など、さまざまな要素が関わります。靴下を履く練習そのものも大切ですが、それだけでなく、なぜ難しいのかを評価し、その人に合った方法に調整することが重要です。このような不具合が続く場合は、早めに専門的な評価を受けることをおすすめします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

一覧に戻る
完全予約制
ご予約はこちら