椅子から立った最初の数歩だけ股関節が気になる場合に考えること

椅子から立った最初の数歩だけ股関節が気になる場合に考えること

「椅子から立った直後だけ股関節が気になる」「最初の数歩は足の付け根がつまる感じがするけれど、その後は普通に歩ける」「座っている時間が長いと、歩き始めだけ違和感がある」このような症状について、ご相談をいただくことがあります。

椅子から立ち上がったあと、最初の数歩だけ股関節に違和感や痛みを感じる場合には、長時間座っていたことで股関節周囲の筋肉や関節周囲組織の動きが一時的に少なくなっていることや、立ち上がった直後に股関節へ急に荷重が加わることなどが関係している場合があります。

また、変形性股関節症をお持ちの方では、長時間座ったあとや休んだあとの「動き始め」に、足の付け根の痛みやこわばりを感じることがあります。

今回は、椅子から立ったあと最初の数歩だけ股関節が気になる場合に考えられることと、日常生活で確認しておきたいポイントについてご紹介します。

立ち上がった直後に股関節が気になるのはなぜ?

椅子に長く座っていると、股関節は曲がった状態が続きます。この姿勢が続いたあとに立ち上がると、股関節は曲がった状態から伸ばされた状態へ大きく変化します。さらに、立ち上がった直後には体重が股関節へ加わり、そのまま歩き始める必要があります。

そのため、

・股関節周囲の筋肉がまだ十分に働いていない
・股関節が伸びにくい
・関節周囲の組織が一時的にこわばっている
・立ち上がった直後に急に体重がかかる


といったことが重なり、最初の数歩だけ股関節が気になることがあります。少し歩くことで筋肉が働きやすくなり、関節や骨盤の動きが整ってくると、違和感が軽くなる場合があります。

変形性股関節症では「動き始め」に症状が出ることがあります

変形性股関節症では、常に強い痛みが出るとは限りません。比較的症状が軽い段階では、

・立ち上がった直後だけ痛い
・最初の数歩だけ足の付け根が気になる
・長時間座ったあとに股関節がこわばる
・少し歩くと徐々に楽になる

といった「動き始め」の症状として現れることがあります。こうした症状は、動作開始時痛と表現されることがあります。ただし、最初の数歩だけ症状があるからといって、必ず変形性股関節症であるとは限りません。

股関節周囲の筋肉の柔軟性や筋力、骨盤の動き、座っている姿勢、立ち上がり方など、さまざまな要因が関係していることがあります。

座っている姿勢も確認してみましょう

立ち上がった直後の股関節の違和感には、座っているときの姿勢が関係している場合もあります。

例えば、

・低い椅子に座っている
・柔らかいソファに深く座っている
・脚を組んでいる
・片側へ体重をかけて座っている
・長時間ほとんど姿勢を変えていない

といった状態では、股関節や骨盤が一定の位置に保たれやすくなります。特に低い椅子やソファでは、股関節が深く曲がりやすく、骨盤も後方へ傾きやすくなります。その状態から立ち上がると、股関節を伸ばす動きや骨盤を起こす動きが必要となるため、最初の数歩で違和感を感じる場合があります。

普段どのような椅子に座っているかも、一度確認してみるとよいでしょう。

立ち上がり方も股関節への負担に影響します

椅子から立ち上がるときには、単に膝や股関節を伸ばせばよいわけではありません。まず体幹を前へ傾け、身体の重心を足の上へ移動させ、そのあとに股関節と膝関節を伸ばして立ち上がります。

このとき、

・足が前に出すぎている
・身体を十分に前へ傾けられていない
・片側の脚だけで立ち上がっている
・痛い側を避けて反対側へ体重をかけている

といった動きがあると、股関節や膝関節に余計な負担がかかる場合があります。また、立ち上がった直後にすぐ歩き出すことで、姿勢が十分に整わないまま最初の一歩を出している場合もあります。

最初の数歩で確認しておきたいポイント

立ち上がったあとに股関節が気になる場合には、最初の数歩を少し意識して観察してみましょう。

例えば、

・どちら側の股関節が気になるか
・足の付け根なのか、外側なのか、殿部なのか
・痛みなのか、こわばりなのか、つまる感じなのか
・最初の何歩くらいで楽になるのか
・左右で歩幅が違っていないか
・身体が左右に揺れていないか

といった点です。また、長時間座ったあとだけ症状が出るのか、短時間座っただけでも出るのかも重要です。「5分座ったあとでも出る」のか、「1時間以上座ったあとだけ出る」のかによっても、考えられる要因は変わってきます。

股関節の伸びにくさが関係することもあります

椅子に座っている間、股関節は曲がった姿勢になります。そのあと立ち上がると、歩行では股関節を後ろへ伸ばす動きが必要になります。この股関節伸展が出にくい場合には、最初の数歩で歩幅が小さくなったり、身体を前かがみにしたりすることがあります。

また、股関節を十分に伸ばせない分を、腰を反らしたり骨盤を大きく動かしたりして補う場合もあります。このような代償動作が続くと、股関節だけでなく腰部にも負担がかかることがあります。


そのため、立ち上がったあとの症状を見るときには、股関節だけではなく骨盤や腰部の動きも含めて確認することが大切です。

股関節周囲の筋肉が働き始めるまで時間がかかる場合もあります

歩行では、股関節周囲の多くの筋肉が働きます。特に、大殿筋や中殿筋などの殿筋群は、立ち上がりや歩行時に骨盤や股関節を安定させる重要な役割があります。長時間座ったあとには、こうした筋肉がすぐに十分働きにくいことがあります。

そのため、立ち上がった直後には股関節が不安定に感じたり、最初の数歩だけ「力が入りにくい」「足が出にくい」と感じたりする場合があります。数歩歩くことで筋活動が整い、違和感が軽くなることもあります。

日常生活でできる工夫

椅子から立ったあとに股関節が気になる場合には、立ち上がる前に少し準備をすることも一つの方法です。

例えば、

・椅子の前方へ少し座り直す
・両足を床にしっかりつける
・足を膝の真下か少し後ろに引く
・身体を軽く前へ傾けてから立つ
・立ち上がったあとに一度姿勢を整える
・最初の数歩をゆっくり歩く

といった工夫があります。

長時間座り続けている場合には、30分から1時間程度を目安に一度立ち上がったり、座ったまま軽く脚を動かしたりすることもよいかもしれません。

ただし、痛みがある方向へ無理に股関節を動かしたり、強いストレッチを行ったりする必要はありません。

椅子の高さも確認してみましょう

椅子の高さによって、立ち上がるときの股関節への負担は変わります。座面が低すぎると股関節が深く曲がり、立ち上がるために必要な股関節や膝関節の力も大きくなります。一方で、座面が適度に高いと、股関節の曲がる角度が少なくなり、立ち上がりやすくなる場合があります。

目安としては、座ったときに足底全体が床につき、膝の高さが股関節と同じ程度か、やや低いくらいの椅子が使いやすいことがあります。

ただし、身体の大きさや股関節の状態によって適切な高さは異なります。毎日使う椅子やソファで症状が出る場合には、座面の高さや硬さも一度確認してみるとよいでしょう。

症状が続く場合に確認したいこと

最初の数歩だけの違和感でも、毎日繰り返している場合には、経過を確認しておくことが大切です。

例えば、

・以前より症状が強くなっている
・最初の数歩だけだったものが長く続くようになった
・歩く距離が長くなると痛みが出るようになった
・股関節の動く範囲が狭くなった
・靴下や靴を履きにくくなった
・歩き方が変わってきた

といった変化がある場合には、一度状態を確認してみてもよいでしょう。症状の強さだけでなく、「以前と比べてどう変化しているか」を見ることが大切です。

医療機関で確認した方がよい場合

椅子から立ったあとに股関節の症状が繰り返し出る場合や、少しずつ強くなっている場合には、一度医療機関で状態を確認していただくことも選択肢の一つです。

特に、

・強い痛みを伴う
・体重をかけにくい
・夜間にも痛みが続く
・股関節の動く範囲が明らかに狭くなっている
・歩行が徐々に困難になっている
・腫れや発熱を伴う

といった場合には、早めに相談することをおすすめします。股関節の症状には、変形性股関節症だけでなく、さまざまな原因が考えられます。必要に応じて医療機関で股関節の状態を確認しておくことで、その後の運動や日常生活での工夫についても考えやすくなります。

医療機関で状態を確認したあとの身体づくり

医療機関で股関節の状態を確認したあとには、立ち上がりや歩き始めの身体の使い方を詳しく見ていくことも大切です。

例えば、

・どのように椅子から立ち上がっているか
・左右どちらへ体重が偏っているか
・立ち上がった直後の姿勢
・最初の一歩をどのように出しているか
・股関節がどの方向へ動きにくいか
・骨盤や体幹がどのように動いているか

などを確認することで、日常生活で工夫できるポイントが見つかる場合があります。

フィジオセンターでは医療機関で状態を確認したあと、立ち上がりや歩き始め、歩行、日常生活での身体の使い方、運動方法などについて詳しく確認したい場合には、理学療法士の視点から身体の動きを確認していきます。

まとめ

椅子から立ったあと、最初の数歩だけ股関節が気になる背景には、長時間座っていたことによる股関節周囲のこわばりや、立ち上がった直後に急に荷重が加わること、股関節周囲筋が働き始めるまでの時間などが関係している場合があります。

変形性股関節症でも、長時間座ったあとや休んだあとの「動き始め」に、足の付け根の痛みやこわばりを感じることがあります。

大切なのは、

・どのくらい座ったあとに症状が出るのか
・最初の何歩くらいで楽になるのか
・どの場所が気になるのか
・痛みなのか、こわばりなのか
・以前より症状が変化していないか

などを確認することです。

立ち上がる際には、椅子の前方へ座り直し、両足を床につけ、身体を軽く前へ傾けてから立つことで、スムーズに立ち上がりやすくなる場合があります。また、立ち上がった直後に急いで歩き出すのではなく、一度姿勢を整えてから最初の数歩をゆっくり歩くことも一つの工夫です。

症状が続く場合や徐々に強くなる場合には、まず医療機関で股関節の状態を確認していただくことで、その後の対応を考えやすくなります。

フィジオセンターは医療機関ではありませんが、医療機関で状態を確認したあと、椅子からの立ち上がりや歩き始め、股関節の動かしにくさについて詳しく確認したい方に対して、股関節の可動域や筋力だけでなく、骨盤や体幹の動き、立位姿勢、重心移動、歩行など、実際の日常生活動作を含めた評価を行っています。

「立った直後だけだから」と気になりながら過ごしている方も、まずは症状が出る条件を確認し、ご自身の身体の状態を知ることから始めてみてください。


理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755



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