変形性股関節症患者における人工股関節全置換術(THA)後の股関節荷重パターンの変化

変形性股関節症患者における人工股関節全置換術(THA)後の股関節荷重パターンの変化

継続して当センターのブログで解説している、変形性股関節症に対する人工股関節全置換術(THA)は、痛みの軽減や生活の質の向上に用いられる代表的な手術方法です。そのような中で、術後の歩行機能は必ずしも健常者と同じレベルまで回復しないことが報告されています。特に、股関節にかかる荷重パターンの変化が、術後の機能回復に影響を与えることが指摘されています。

2020年に発表された研究では、人工股関節全置換術(THA)後を受ける前後の股関節荷重の変化を追跡し、特に股関節に加わる力について報告されています。

股関節に変形を持たない方の場合、股関節にかかる荷重は一歩ごとに2回のピーク(最大荷重点)を迎えます。最初のピーク(第一ピーク)は、足が地面に接地する際に発生し、次に地面を蹴り出す際に再びピーク(第二ピーク)が現れます。このように、通常の歩行では「ダブルピーク(2つの山)」の荷重パターンが観察されます。

その一方で、変形性股関節症の影響で人工股関節全置換術(THA)後の回復が不十分な場合、歩行中の股関節荷重が「シングルピーク」となります。これは、一歩ごとに一度だけ荷重が最大となり、その後の蹴り出し時に十分な力が発揮できないない状態です。つまり、股関節の動きが制限されているため、本来二度発生するべき荷重のピークが一度しか現れない事を示しています。

こちらの研究では、人工股関節全置換術(THA)前の患者が26%がシングルピークの荷重パターンを示していました。さらに、手術後6か月の時点でも、11人のうち4人の患者がシングルピークのままでした。加えて以下の特徴を持っています。

1つ目は歩行速度が遅い事です。ダブルピークを示す患者に比べ、シングルピークの患者の歩行速度が遅い事がわかりました。

2つ目は股関節の可動域が狭い事です。シングルピークを示す患者は、股関節の屈曲伸展可動域が優位に低下していることがわかりました。

フィジオセンターではこれらの研究やデータを参考に、人工股関節全置換術(THA)後の対象者に関して以下の内容に注目して施術・コンディショニングを実施しています。

1つ目は、股関節関節可動域の拡大を図ります。手術前に関節可動域制限が強くみられる場合は、手術後にその関節可動域制限が残存する場合があります。そのため、股関節の可動域が制限されている患者には、ストレッチングや特定の組織のリリースなどを行います。

2つは足部・足指の機能向上です。足関節周囲の機能が歩行の推進力に深く関与する事がわかっています。変形の少ない足関節周囲は機能が短期間で高まりやすいため、アプローチを行う1つのポイントとなります。

3つ目はバランスエクササイズの導入です。適切な荷重分布を促すために、片脚立ちやステップエクササイズなどのバランストレーニングを組み合わせることが有効です。

当センターでは、保険外・自費でのリハビリテーションサービスを提供しております。医療機関での外来リハビリテーションが処方・実施されていない方、もしくはリハビリテーションが算定日数制限のため終了された方々に向け、姿勢の修正や股関節・膝関節機能の改善を目的として、機能的な関連の深い体幹のインナーマッスルの機能や足関節との関わりを確認しながら施術・コンディショニングを実施しています。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner (CMP) /マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト
津田 泰志

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