変形性股関節症をお持ちのクライアントの方から、「長時間歩くと股関節の痛みが強くなる」という相談を受けることがあります。歩行時の痛みは変形性股関節症の典型的な症状の一つですが、特に長く歩いた後に痛みが増す場合には、いくつかの理由が考えられます。今回は、変形性股関節症と長時間の歩行による痛みについて解説します。
長時間の歩行で股関節に痛みが出現する主な理由としては、以下の内容が考えられます。
1つ目は、過去のブログでも複数回述べている、「股関節内圧の上昇による痛みの誘発」です。 長時間歩行では、体重負荷が繰り返し股関節にかかることで、関節内圧が上昇し、股関節内に存在する痛みの受容器が刺激されます。加えて、関節軟骨に摩耗がみられる場合はより関節内圧が上昇し易いと考えられます。
2つ目は「滑膜炎(滑膜に対する刺激)」です。過去のMRIを用いた研究では、滑膜炎の存在が痛みと関連している事が報告されています。変形性股関節症をお持ちの方の場合、この滑膜が肥厚している場合があり、歩く際の刺激で滑膜の炎症が発生する可能性があります。
3つ目は「関節唇損傷や骨棘の存在です」。変形性股関節症をお持ちの方の場合は、関節唇損傷や進行の状況により骨棘が発生します。長時間の歩行により損傷のある関節唇に痛み刺激が加わる事や、骨棘が周辺の軟部組織と接触する事で痛みに繋がる可能性があります。
4つ目は「筋肉の疲労(疲れ)」です。長時間の歩行に加えて、変形性股関節症をお持ちの方の場合は、関節が元々不安定な場合が多く、股関節を安定させるインナーマッスルが疲労のため働きにくくなり、股関節の中で良い位置関係で体重を支える事が難しくなる事も関係している可能性があります。
【まとめ】 長時間歩行時に痛みが出現・増強する背景には、関節内圧の上昇、滑膜炎症、筋肉の疲労、関節唇損傷・骨棘刺激など複数の要因が関わっています。痛みを無理して我慢せず、受診の経験がない方の場合は医療機関の受診をお勧めします。既に医療機関での診察で経過をみている場合には、適切な休息、エクササイズの実施、T字杖やノルディックウォーキングのポールなどの補助具活用などを組み合わせることで、より症状の軽減を図りながら歩行が可能となります。
当センターでは、保険外・自費でのリハビリテーションサービスを提供しております。変形性股関節症をお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方がに対して、変形性股関節症をお持ちの方にとって、より良い股関節の管理方法について日常生活での股関節の負担の少ない姿勢や動き方などを併せてご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト
津田 泰志