フィジオセンターでは、変形性股関節症をお持ちの方々に対して、安全かつ効果的な運動指導を行うことを目的に、お役に立てそうな情報を定期的にブログで掲載しています。今回のブログでは、「高齢者の運動習慣と身体機能の関係性」を大規模調査データに基づいて検討した最新の研究(de Melloら, 2025)をご紹介します。
□研究の概要
本研究は、欧州28か国における高齢者の健康に関する大規模調査「SHARE(Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)」のデータを用いて、60歳以上の変形性股関節症とを有する成人2,088名を対象に実施されました。対象者は60〜79歳群と80〜100歳群に分けられ、それぞれの年齢群において、運動習慣(身体活動の頻度)と日常生活動作(ADL)や筋力の関連性が検討されました。
主な評価項目には以下が含まれています:
・握力:全身の筋力指標
・日常生活活動の制限の有無
また、身体活動の頻度は「中程度または高強度の運動を行っているかどうか」で分類され、週に一度も行っていない者を「身体的不活動」と定義しました。
□研究の結果
結果として、身体的不活動な高齢者は、すべての評価項目において有意に機能低下を認めたことが示されました。特に80歳以上の年齢群では、その影響がより顕著に現れました。
さらに、脳卒中・糖尿病・高脂血症などの併存疾患も、評価項目との関連があることが示されましたが、「身体的不活動」が最も一貫して高いリスク因子でした。
□フィジオセンターでの臨床場面での応用
今回の研究結果から、80歳を超えて変形性股関節症をお持ちの方の場合、運動習慣は機能維持において極めて重要であることが示されました。この事から、フィジオセンターでは以下のような視点で運動介入を行っています。
1つ目は、身体活動の習慣化をサポートする事です。
80歳以上の方に対しても、無理なく継続できるよう運動量・頻度を段階的に調整し、屋内外での生活動作に身体活動を取り入れる方法をご提案しています。特にセルフエクササイズの実施については、動画でのご説明や公式LINEを用いた定期的なフォローを合わせて行っています。
2つ目は、股関節に加わる負担を考慮したアプローチです。
変形性股関節症をお持ちの方の場合は、シンプルに運動量を増やす事が難しい場合も少なくありません。陸上での歩行の場合は状況に応じて、T字杖やノルディックウォーキングのポールを使用して股関節の負担を少なくして運動量を増やすなどの対応を行います。
□まとめ
本研究は、年齢を問わず、特に80歳以上であっても身体活動の維持がADLの維持に直結することを大規模データで示した貴重な研究です。変形性股関節症をお持ちの方においても、動ける範囲で身体を使い続けることが、その後の生活の質(QOL)を大きく左右する可能性を示しています。
当センターでは変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。 どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志