「特発性側弯症に対するシェノー装具治療の有効性:79人の患者を対象にした骨成熟まで追跡した前向き研究」
~79名の患者を対象にした前向き研究の紹介~
【背景】
特発性側弯症は、原因が明確でない脊椎のゆがみで、思春期の約2〜3%の子どもに発症します。湾曲が進行すると、外見上の変化や痛み、呼吸機能の障害、精神的負担など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
この研究では、「シェノー装具」と理学療法による保存的治療が、どの程度側弯症の進行を抑え、手術を避けられるかを調査しました。
研究の概要
- 対象者:特発性側弯症の患者79名(女子58名、男子21名)
- コブ角:治療開始時 20〜45度
- 治療方法:
- 1日20時間のシェノー装具装着
- 非対称な運動を含む理学療法
- 追跡期間:骨の成熟(リッサー徴候4以上)まで、および装具終了後最低1年間
【結果の概要】
治療後の結果分類(SRSの基準に基づく)
分類 | 内容 | 患者数 | 割合 |
改善 | コブ角が6度以上減少 | 20名 | 25.3% |
安定 | 変化が±5度以内 | 18名 | 22.8% |
進行(50度未満) | 軽度に進行 | 31名 | 39.2% |
進行(50度以上) | 手術適応レベルに進行 | 10名 | 12.7% |
➡️ 合計48.1%の患者で側弯の進行が抑制されました。
詳細な知見
- 進行のリスクが高かったのは、年齢が若く、骨格の成熟度が低い患者でした。
- 二重カーブ(二か所の湾曲)よりも、単一カーブの方が治療効果が高い傾向が見られました。
- 平均装具装着期間は2.7年。
- 装具をきちんと使用し、理学療法に取り組んだ患者は、比較的良好な結果を得られています。
【専門家の視点からの考察】
- この研究は、シェノー装具が病気の自然経過を変え、手術率を下げる可能性を示しています。
- 一方で、約半数の患者では完全には進行を防げませんでした(装具だけでなく体操療法を加えることでより抑制効果が得られることが、他の研究論文から報告されています。体操療法との併用をお勧めいたします)
- 装具の品質・正確な製作・適切な使用が治療結果に大きく関与するため、装具の専門的な管理体制の重要性が指摘されています。
- 患者の心理的サポート、特に思春期女子へのケアの必要性も強調されています。
結論
- シェノー装具と理学療法による保存的治療は、全体の約48%の患者で湾曲の進行を防ぐのに有効でした。
- さらに39%の患者では進行はしたものの、手術適応角度(50度)未満で抑えられました。
- この結果は、装具治療が自然経過に比べて有意に進行を抑える可能性があることを示唆しています。
ご家族・患者さんへのメッセージ
この研究から、シェノー装具による治療は、適切に行えば病気の進行を抑え、手術を回避できる可能性があることがわかります。
ただし、治療の効果を得るためには
✅ 毎日装具をしっかり装着すること
✅ 理学療法を継続すること (当センターでは、シュロス側弯体操との組み合わせを推奨しております
✅ 医師や理学療法士と綿密に連携することが大切です(当センターでは、専門の医療施設と連携しております)
長時間の装着が、改善度を高めておることも指摘されています。そのためには、お子様が装着しやすく、心理的に受け入れやすいデザインのシェノー装具をおすすめ致します。
東京慈恵医科大学病院E棟2階 フィジオセンター
お問い合わせ先:info@physiocenter.jp
電話:03-6402-7755
理学療法士:大田(シュロス側弯症セラピスト)