フィジオセンターでは、変形性股関節症・発育性股関節形成不全をお持ちの方々に対して、安全かつ効果的な運動指導を行うことを目的に、お役に立てそうな情報を定期的にブログで掲載しています。今回のブログでは、「発育性股関節形成不全における筋肉の作用と症状との関係について」を明らかにした研究(Wuら, 2023)をご紹介します。
□研究の概要
この研究では、「発育性股関節形成不全(DDH)」という、骨盤の臼蓋側の骨の形に問題がある若い女性たち(平均23歳)20名と、股関節の関節面に問題のない15名の女性を対象に、「歩くときに股関節にどのような力がかかっているか」と「その人が感じている痛みや生活のしづらさ」との関係を調べました。
参加者には特別なセンサーをつけて歩いてもらい、動きや筋肉の働き、関節への負担を詳しく測定しました。さらに、MRI画像からそれぞれの体に合わせたモデルを作り、どの筋肉がどのように関節に力をかけているかを再現しました。
同時に、痛みや日常生活での困りごと、身体の動かしやすさなどについてのアンケート(患者報告アウトカム)を行い、それらと股関節にかかっている負担の関係を調べました。
□研究の結果
この研究では、股関節の形に問題がある人では、股関節にかかる負担が強いほど、「痛み」や「日常生活での動きづらさ」が強くなることがわかりました。
特に注目されたのは、歩くときに股関節のふち(寛骨臼縁)にかかる「衝撃の強さ」や、「股関節の位置のズレ」が、痛みや生活のしづらさに強く関係していたことです。
また、殿部の筋肉が(中臀筋)が股関節を安定させるために働くとき、本来よりも不利な状態(筋肉の力が伝わりにくい)になっていることも明らかになりました。その結果、筋肉がよりたくさん働かないと股関節を支えられず、痛みや疲れにつながっている可能性があります。
このように、「骨の形」や「筋肉の働き方」の違いが、日々の痛みや不調に影響していることが、具体的に示された貴重な研究です。
□フィジオセンターでの臨床場面での応用
1つ目は、中殿筋が働きやすい環境を作るためのアプローチです。
発育性股関節形成不全をお持ちの場合、股関節の中心が外側に移動しやすく、中殿筋のモーメントアームが短縮します。これは中殿筋の活動の効率が低下してしまいます。この低下した機能を補うために、中殿筋が付着する骨盤帯の安定化を図るために体幹のインナーマッスルの機能を高める事を行う事が1つの案として考えられます。
2つ目は、寛骨臼縁荷重の軽減に向けたアプローチです。
寛骨臼縁荷重の増大は、寛骨臼縁部(特に上方・前上方)の損傷や痛みと関連します。立脚初期にかかるこの荷重を軽減するために、上半身の重心が過剰の前方に移動する事を抑制する事や、床から返ってくる力に抵抗するための大殿筋の機能を高めるエクササイズを行う事が有効と考えられます。
□まとめ
本研究は、筋肉の働きによって生じる股関節の力学的負荷と、痛み・日常生活機能・QOLとの関係性を明確に示した貴重な報告です。
当センターでは変形性股関節症・発育性股関節形成不全をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志