フィジオセンターでは、変形性股関節症や発育性股関節形成不全をお持ちの方に向けて、安全かつ効果的な運動指導の参考となるよう、国内外の最新研究を紹介しています。今回は、「歩行中の下肢運動の左右対称性」に焦点を当てた研究(Portaら, 2021)をご紹介します。
□研究の概要
この研究では、重度の変形性股関節症(Kellgren–Lawrenceグレード4)と診断された11名(平均年齢68.3歳)の被験者と、同年代・同性の健常者11名を対象に、三次元動作解析を用いて歩行中の股関節・膝関節・足関節の動きや左右差(対称性)を評価しました。
□研究の結果
研究では以下のような重要な所見が得られました:
歩行速度やケイデンス(歩数/分)の低下、ステップ長の短縮など、変形性股関節症をお持ちの方々では全般的に歩行能力の低下がみられました。
特に注目すべきは、変形性股関節症を持つ患側だけでなく、変形の影響を持たない健側にも歩行時の異常が確認された点です。対称性の評価では、股関節および膝関節で明らかな左右差が確認されましたが、足関節の対称性は比較的保たれているという結果でした。
これらの結果から、変形性股関節症を持つ関節だけでなく、変形の影響を持たない健側や膝関節などの遠位関節にも運動の非対称性が及ぶことが明らかになり、歩行全体への影響が再認識されました。
□フィジオセンターでの臨床場面での応用
1つ目は、 左右バランスを整えるアプローチです。変形性股関節症を持つ方では、歩行時に無意識に変形のない健側に頼る傾向が強まり、結果として健側股関節の過負荷や膝・足関節の機能低下につながる可能性があります。よって、両側の股関節や骨盤の動きを評価し、両側の股関節機能に関わるエクササイズを行う事や、体幹の安定化トレーニングを通じて、歩行時の左右差を減らすアプローチが大切だと考えます。
2つ目は、対称性を意識したセルフエクササイズの実施です。フィジオセンターでは、初回のご利用時にご希望される方の全員にご自宅でのセルフエクササイズの内容を確認しています。ご自宅でのセルフエクササイズでも、左右差を是正するようなアプローチを行う事で、歩行の左右差を軽減を図ります。
□まとめ
本研究は、変形性股関節症が歩行時の運動パターンに及ぼす影響を左右対称性の観点から詳細に解析した貴重な報告です。症状がある側だけでなく、変形のない健側や他関節にも影響が及ぶという点は見落とせない大切な要素と考えられます。
当センターでは変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志