脊柱骨盤と股関節の関節可動域との関係について

脊柱骨盤と股関節の関節可動域との関係について

フィジオセンターでは、変形性股関節症をお持ちの方々に対して、安全かつ効果的な運動指導を行うことを目的に、最新の研究を紹介しています。今回は、「股関節屈曲可動域の評価における脊椎・骨盤・股関節のアライメントと可動性の影響」を明らかにした研究(Tokuyasuら, 2024)をご紹介します。

□研究の概要
この研究では、人工股関節置換術(THA)の術前評価を受ける154名の患者を対象に、「臨床的(股関節を実際に曲げて計測する事)に測定される股関節屈曲の他動可動域(ROM)」と「X線画像に基づく屈曲可動域」との関係を調査した研究です。

重要な指標として、以下が評価されました:
・他動的股関節屈曲ROM(仰臥位でゴニオメーターにより測定)
・X線上の股関節屈曲ROM(骨盤に対する大腿骨の屈曲角)
・脊椎-骨盤-股関節の可動性
・Hip user index(股関節の動きが全体の前屈にどれだけ貢献しているかを示す割合)

□研究の結果
本研究では、他動的股関節屈曲ROMとX線による屈曲ROMの間に中等度の相関関係が認められました。ただし、個人差が大きい事も併せて報告されています。

注目すべきは、他動的な関節可動域を過大評価していたグループでは、腰椎と骨盤の代償的な動きが大きい傾向がありました。一方で、実際の屈曲可動域が大きかったグループでは、股関節の柔軟性が高く、骨盤や腰椎の代償動作が少なかったという特徴が見られました。

さらに、座位姿勢(特に前傾座位)において脊柱の柔軟性に大きい差があり、他動的な関節可動域を過大評価していたグループでは骨盤の前傾が乏しく、股関節の深い屈曲が制限されていました。実際の屈曲角域が大きかったグループではその逆に、骨盤がしっかり前傾し、股関節の深屈曲が可能である姿勢変化が観察されました。

□フィジオセンターでの臨床場面での応用

1つ目は、座位や前屈動作における股関節評価の重要性です。従来の仰臥位(仰向け)での他動的な股関節屈曲の関節可動域測定では、腰椎や骨盤の代償動作によって、実際の股関節の可動性を正確に評価できていない可能性があります。当センターでは、靴下の着脱や椅子からの立ち上がりなど、日常生活に即した動作の中で可動域を評価し、必要に応じて腰椎・骨盤の柔軟性や中殿筋・大殿筋の安定性向上を含めたトレーニングを提案しています。

2つ目は、大腿骨寛骨臼インピンジメントに代表されるような、股関節屈曲と骨盤の後傾・腰椎の屈曲とタイミングとバランスの関係です。本研究では、股関節屈曲に伴う骨盤や脊柱の動きが動きの測定結果に影響する事が指摘されていますが、この動きが少ない場合は股関節前方にインピンジメントを起こす可能性もあるため、その対象者の方の動きの傾向、およびテーマとなる動きを確認してアプローチする事が大切だと考えます。

□まとめ
Tokuyasuら(2024)の研究は、「他動的な股関節屈曲関節可動域は必ずしも股関節そのものの柔軟性を反映していない」ことを明確に示しました。特に、骨盤や腰椎の代償動作を考慮せずに可動域を評価すると、誤った判断につながる恐れがあります。

当センターでは変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

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