フィジオセンターでは、変形性股関節症や大腿骨寛骨臼インピンジメントなどの症状に悩む方へ向けて、定期的にブログにて情報発信を行っています。今回は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)が股関節唇に及ぼす影響と、それが変形性股関節症の早期進行とどう関係するかを示した研究をご紹介します。
□研究の概要
Battistelliら(2023)の研究では、FAIを持つ患者(5名)、変形性股関節症を持つ患者(5名)、健康なドナー(5名)の股関節唇の組織を比較して、組織構造の変化を電子顕微鏡と染色によって詳細に解析しました。
股関節唇とは、関節の安定性や衝撃吸収を担う繊維軟骨で、損傷や変性が進行すると股関節の機能が低下し、痛みや変形性股関節症の発症リスクが高まります。本研究では、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)がこの股関節唇の組織構造にどのような悪影響を与えるのかが明らかにされました。
□研究の結果は以下の内容でした
1つ目は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)でも変形性股関節症と類似した組織変性が見られる事です。大腿骨寛骨臼インピンジメント患者の股関節唇では、コラーゲン線維の乱れや細胞の構造変化など、変形性股関節症の患者とよく似た変性所見が確認されました。これは大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)が単なる形態異常ではなく、関節唇そのものにダメージを与える疾患であることを示しています。
2つ目は、線維構造の乱れとコラーゲン線維の細径化です。健康なドナーの組織ではコラーゲンが規則的に並び、しっかりとした構造を保っていましたが、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)や変形性股関節症を持つ患者では線維が不規則に配列し、コラーゲンの太さも細くなっていることが確認されました。
3つ目は、石灰化の進行です。カルシウム沈着(石灰化)は変形性股関節症に特有の変化と考えられてきましたが、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)患者でも顕著に認められました。大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)が慢性的に関節唇へストレスを与えていることを示唆しています。
□フィジオセンターでの臨床場面での応用として以下の内容が考えられます
1つ目は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の段階でも股関節を保護する事を視野に入れたアプローチが必要だという事です。本研究は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)が早期変形性股関節症の前段階であり、実際に関節唇に変性が始まっていることを裏付けています。症状が軽度でも、「進行を止める視点」での運動指導やセルフケアを行う必要性が高いと考えます。
2つ目は、股関節唇を守る股関節可動域の確保と動作パターンの修正です。大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)では特に股関節の屈曲・内転・内旋でインピンジメントが起こりやすいため、運動指導では股関節自体の可動域を確保しながら、股関節に負担の少ない動作パターンを学ぶ事です。
□まとめ
大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は単なる骨形態の異常ではなく、関節唇を含めた股関節の疾患と捉えるべき段階と示唆されています。対応としては症状が軽いうちから、姿勢・動作の改善や筋力バランスの調整などを行うことで、進行の予防や痛みの軽減につながります。
当センターでは、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)・変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志