腰椎分離症における保存療法と手術療法の違い

腰椎分離症における保存療法と手術療法の違い

腰椎分離症は、成長期のスポーツに取り組む中高生に多いことを以前のブログでお伝えしていますが、実際の治療方針は症状の程度や骨の損傷段階によって大きく異なります。一般的にはほとんどの症例において保存療法が中心となりますが、状況によっては手術療法が必要となる場合もあります。本日のブログでは、腰椎分離症における保存療法と手術療法の違いと、それぞれが選択される背景について整理します。

□ 腰椎分離症の治療方針は「損傷の段階」で決まる

腰椎分離症は、椎弓部に繰り返しストレスが加わることで起こる疲労骨折です。損傷は大きく

・初期:一部に骨折線がみられる
・進行期:分離部がやや開大しているが硬化は認めない
・末期:完全に分離し硬化を認める
※腰椎のCT像を用いた分類

特に初期〜進行期は骨癒合が期待できるため、保存療法が第一選択となります。一方で、終末期の偽関節形成では自然治癒が期待しにくくなるため、場合によっては手術療法が検討されます。

□ 保存療法とは —腰椎分離症の治療の基本—

腰椎分離症の治療では、保存療法が治療の中心となります。多くの研究でも、早期発見と適切な保存療法によって症状改善やスポーツ復帰が可能であると報告されています。以下に保存療法の主な内容を紹介します。

1つ目は、スポーツ活動の制限です。分離部の骨癒合を促すためには、まず患部に加わる力学的ストレスを減らすことが最も重要です。そのため、医療機関の医師の指示に基づき、スポーツ活動全般を中心とした、体幹の伸展(反る動き)、回旋(捻る動き)を制限します。

2つ目は、コルセットによる固定です。適切なコルセットを使用し骨折部の負担を軽減して、骨癒合を促します。

3つ目は、リハビリテーションです。保存療法の中で最も重要な要素です。

□フィジオセンターで行うアプローチの例

1つ目は、体幹深層筋(多裂筋・多裂筋)の活性化です。骨癒合を妨げない範囲で早期から実施し、復帰後の再発予防につなげます。

    2つ目は、股関節・胸椎・胸郭の関節可動域の改善です。これらの関節の固さは、腰椎へのメカニカルストレス増加の原因となるため、本来動くべき関節の機能を高めることで腰椎の代償動作を減らします。

    3つ目は、姿勢・アライメントの調整です。過剰な反り腰(腰椎前弯増強)や骨盤前傾がある場合は優先的に改善し、分離を起こしている腰椎にかかるメカニカルストレスを軽減します。

    4つ目は、復帰に向けたスポーツ動作の再構築です。野球で必要なバッティング動作、サッカーで必要なキック動作など、各競技特性に応じて動作パターンを確認し、腰椎への負荷を最小限に抑えたフォームを獲得していきます。

    □保存療法が選択される理由

    成長期の骨は血流が豊富で、適切な負荷管理ができれば骨癒合が期待できる事が主背景です。そのため多くの症例で保存療法によりスポーツ復帰が可能です

    □ 手術療法とは —必要なケースはごく一部—

    腰椎分離症の手術療法は、保存療法では改善が困難な場合に検討されます。一般的には、次のようなケースが対象です。

    1つ目は、終末期(偽関節形成)で痛みが持続する場合です。骨癒合が期待できないため、分離部の不安定性が痛みの原因となることがあり、このような場合に手術療法が検討されます。

    2つ目は、保存療法を数ヶ月行っても改善しない場合です。特に競技レベルが高く、腰椎に繰り返し強い負荷がかかるアスリートの場合に、将来のパフォーマンスを考慮して構造的安定性を優先するケースがあります。

    □ まとめ

    腰椎分離症の治療は、損傷の段階と症状の強さを見極めた上で保存療法と手術療法が選択されます。多くの症例で保存療法が効果を発揮しますが、終末期の偽関節や痛みが強い場合には手術療法も選択肢となります。いずれの治療法でもリハビリテーションは不可欠であると考えられます。

    医療機関を受診して腰椎分離症と診断された方や、その疑いがありながらも医療機関での外来リハビリテーションが受けられない方、保険制度上リハビリが終了してしまった方、部活動と両立しながら筋バランスの見直しを含めたリハビリテーションをご希望の方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。

    理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
    Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
    日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
    BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
    津田 泰志

    フィジオセンター
    TEL:03-6402-7755

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