パーキンソン病をお持ちのクライアント様やご家族様から、「以前より力が入りにくくなった」「歩くスピードが遅くなり、疲れやすい」「階段や立ち上がりがつらい」といったご相談を受けることがあります。これらの背景には、パーキンソン病特有の運動症状だけでなく、筋力低下やサルコペニアの関与が隠れているケースが少なくありません。
近年、パーキンソン病とサルコペニアの関連性についての研究が進み、単なる「年齢の問題」ではなく、疾患特性と密接に関係することが明らかになってきています。今回のブログでは、パーキンソン病における筋力低下の特徴とサルコペニアとの関係を整理し、運動療法による具体的な対応について解説します。
1.パーキンソン病における筋力低下の特徴
パーキンソン病の筋力低下は、単純な筋萎縮だけで説明できるものではありません。特徴的なのは以下の点です。
・最大筋力の低下よりも筋出力(パワー)の低下が顕著
・動作開始時に力を素早く発揮できない
・左右差が生じやすい
・抗重力筋(重力に抵抗して体を起こす筋群)の機能低下
近年の研究では、パーキンソン病患者は健常高齢者と比較して、筋断面積が同程度であっても筋力や筋パワーが低いことが報告されています。これは、中枢神経系の障害による運動単位の動員不全が大きく影響していると考えられています。
その結果、立ち上がり、歩行、方向転換などの日常生活動作において「力はあるはずなのに使えない」状態が生じやすくなると考えられます。
2.サルコペニアとは何か
サルコペニアとは、筋量・筋力・身体機能の低下を伴う症候群であり、転倒、フレイル、要介護状態のリスクを高めることが知られています。現在は、以下の要素を組み合わせて診断されます。
・筋力低下(握力など)
・筋量低下
・身体機能低下(歩行速度、立ち上がり能力)
注目すべき点は、サルコペニアは加齢のみならず、慢性疾患や活動量低下によっても進行するという点です。
3.パーキンソン病とサルコペニアの関連性
近年の研究では、パーキンソン病患者におけるサルコペニア有病率は、同年代の健常者よりも有意に高いことが示されています。その背景には、以下の要因が複合的に関与します。
・無動・寡動による身体活動量の低下
・嚥下障害や食欲低下による栄養摂取不足
・慢性的な炎症反応
・ドパミン神経障害に伴う筋活動調整不全
特に身体活動量の低下は、筋量減少と筋力低下を加速させ、パーキンソン病由来の動作障害とサルコペニアが相互に悪循環を形成する点が大きな問題となります。
4.筋力低下・サルコペニアが及ぼす影響
筋力低下とサルコペニアは、以下のような影響を及ぼします。
・歩行速度の低下
・転倒リスクの増大
・疲労感の増加
・活動量・外出頻度の低下
特にパーキンソン病では、「症状が進行したから動けない」のではなく、「筋力低下と活動制限が症状を悪化させている」ケースも少なくありません。
5.フィジオセンターにおける運動療法アプローチ
フィジオセンターでは、パーキンソン病における筋力低下とサルコペニアに対して、以下の視点を重視しています。
① 筋力・筋パワーの評価
単なる徒手筋力検査ではなく、動作中の筋出力や左右差を確認します。
② 抗重力筋・近位筋群への介入
下肢・体幹を中心に、立ち上がりや歩行に直結する筋群を重点的に強化します。
③ 高負荷・低回数を含めた段階的レジスタンストレーニング
エビデンスでは、パーキンソン病においても適切な負荷設定による筋力トレーニングが安全かつ有効であることが示されています。
④ 動作と結びつけた筋力トレーニング
一つの関節運動にとどまらず、立ち上がり、歩行、方向転換など、日常生活の動作と関連している運動を行います。
まとめ
パーキンソン病における筋力低下は、疾患特性とサルコペニアが複雑に関与する重要な問題です。しかし、適切な評価と運動療法を行い、筋力・身体機能の改善や進行予防を図る事が大変重要です。
・力が入りにくくなってきた
・疲れやすさが増してきた
・活動量が減ってきた
そのような変化を感じた際には、早期からの専門的介入が重要です。フィジオセンターでは、お持ちの症状・生活背景・栄養状態も考慮したオーダーメイドのリハビリテーションを提供しています。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755