パーキンソン病における歩行速度向上のためのトレッドミル歩行

パーキンソン病における歩行速度向上のためのトレッドミル歩行

―「速く歩く」ではなく「歩行を再学習する」視点から―

「歩くのが遅くなった」「信号を渡り切れない」など、パーキンソン病をお持ちの方から、歩行速度に関するこうした声を伺うこがあります。歩行速度の低下は、外出機会の減少や転倒リスクの増加にもつながり、生活の質(QOL)に影響を与えると考えられます。

近年、この歩行速度低下に対するリハビリテーションの一手段として、トレッドミルを用いた歩行練習が注目されています。単なる筋力強化ではなく、「歩行そのものを再学習する介入」として、多くの研究が報告されています。


なぜパーキンソン病では歩行速度が低下するのか

パーキンソン病をお持ちの方では、大脳基底核を中心とした神経ネットワークの機能低下により、運動の開始や切り替え、リズム調整が難しくなります。その結果、

・歩幅が小さくなる
・一歩ごとの推進力(前方へ進む力)が弱くなる
・歩行リズムが不安定になる

といった変化が生じ、結果として歩行速度が低下します。重要なのは、これが「筋力低下だけの問題ではない」という点です。実際、筋力トレーニングのみでは歩行速度の改善が限定的であることも報告されています。


トレッドミル歩行が注目される理由

トレッドミル歩行の特徴は、一定速度で足元のベルトが動く環境にあります。この環境下では、身体は自然と「前に進み続ける」必要があり、以下のような効果が期待されます。

・歩行リズムの安定化
・歩幅の拡大
・左右のステップの左右差の軽減
・歩行中の注意集中が高まり易い

特に、一定速度という外的条件は、内的リズム生成が苦手なパーキンソン病の方にとって、外部からのガイド(外部キュー)として機能します。


最新エビデンスから見た効果

システマティックレビューやランダム化比較試験では、トレッドミル歩行練習により、

・歩行速度
・歩幅
・歩行耐久性
・歩行の変動性

が有意に改善したとする報告が複数あります。

特に注目されているのは、通常歩行練習と比較して、トレッドミル歩行の方が歩行速度改善効果が大きいとする研究です。さらに、一定期間の介入後も、地上歩行での速度向上が維持されるケースが示されています。これは、トレッドミル歩行が一時的な運動ではなく、中枢神経系の運動学習を促す可能性を示しています。


フィジオセンターにおけるトレッドミル歩行の考え方

フィジオセンターでは、トレッドミル歩行を「速く歩くための練習」として一律に行うことはありません。安全性と個別性を最優先に、以下の点を評価した上で導入を検討します。

1.介入前の評価

・現在の歩行速度と歩幅
・すくみ足や方向転換時の不安定性
・薬剤の On / Off による影響
・体幹・骨盤のコントロール
・心肺機能や疲労耐性

これらを総合的に評価し、トレッドミルが適切かどうかを判断します。

2.速度設定の考え方

開始時は「やや速いが無理のない速度」を基準とし、恐怖感やフォームの崩れが出ない範囲で設定します。
重要なのは速度そのものよりも、

・踵から接地する事が可能か
・歩幅が保たれているか
・上体が前方に流れすぎていないか

といった動きのフォームの要素が中心です。

3.安全性への配慮

必要に応じてハーネスや手すりを使用し、転倒リスクを最小限に抑えます。屋外歩行に不安がある方ほど、まずは管理された環境での練習が有効な場合があります。


まとめ

トレッドミル歩行は、パーキンソン病における歩行速度低下に対し、エビデンスに基づいた有効なアプローチの一つです。ただし、すべての方に適しているわけではなく、評価に基づいた適応判断と安全管理が重要です。

「歩くのが遅くなった」「歩行に自信が持てない」と感じた際は、ぜひ一度フィジオセンターにご相談ください。その方の状態に合わせた評価と介入により、日常生活につながる歩行改善を目指します。

理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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