本日のブログでは、変形性股関節症をお持ちの方に多い、股関節の前方の痛みの原因の1つとして考えられる下前腸骨棘炎症について解説します。
下前腸骨棘炎とは、大腿直筋の直頭(direct head of rectus femoris)の起始部に生じる腱障害であり、前方股関節痛の原因の一つとされています。大腿直筋の直頭が起始する下前腸骨棘の慢性的な炎症や腱障害を指します。この疾患は、股関節伸展時の反復ストレスによる微小損傷や、周囲の脂肪組織(AIIS fat pad)の線維化・瘢痕形成が特徴とされています。
特に、股関節の屈曲・伸展動作を頻繁に行うアスリートや、高齢者においても股関節の機能障害とともに発症することがあります。
以下に、変形性股関節症と下前腸骨棘炎とのの関連性についてご説明します。
1つ目は、股関節のメカニカルストレスの増大です。変形性股関節症では、股関節周囲の筋・腱に過剰なストレスが加わり易い事が知られています。特に大腿直筋は、股関節と膝関節にまたがった付着を持つため過剰な活動となり易く、変形性股関節症の進行に伴い、大腿直筋直頭の付着部である下前腸骨棘に繰り返しの負担がかかることで下前腸骨棘炎症を引き起こす可能性があります。
2つ目は、股関節の可動域制限と代償動作です。変形性股関節症のをお持ちの方では、関節可動域の制限により、日常動作の際に代償的な動きが生じやすくなります。例としては、股関節の不安定性を補うために大腿直筋が過剰に活動して骨盤の前傾を促す事、階段を降りる際に適切に荷重位ができずに大腿直筋が過剰に働いてしまう場合に、下前腸骨棘炎の発症に関与している可能性があります。
フィジオセンターではこのような場合、まずは炎症を軽減できるように全体の運動量の調整を図ります。状況によっては外出時に杖を使用する事や、ノルディックウォーキングのポールを使用して頂く事をご提案する事もあります。また、大腿直筋が過剰に働かなくても済むように、腸腰筋やIliocapsuralisなどの股関節前方の安定性に関わる筋肉のエクササイズを行う事や、大腿直筋を選択的にストレッチやリリースを行い、炎症を起こしている部分の負担軽減を図ります。
当センターでは変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、変形性股関節症をお持ちの股関節に対して最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト
津田 泰志