変形性股関節症における大腿筋直筋と骨盤前傾の関係

変形性股関節症における大腿筋直筋と骨盤前傾の関係


変形性股関節症における大腿直筋と骨盤前傾の関係について
〜臼蓋被覆の補償と鼠径部痛への影響〜

変形性股関節症をお持ちの方では、過去のブログでも解説を行ったように、筋バランスと荷重(体重)のかかり方は股関節にかかる負担に大きく影響します。今回のテーマは、股関節前面に位置する大腿直筋と骨盤前傾の関係についてです。

大腿直筋は、股関節屈曲と膝関節伸展を担う二関節筋で、股関節の安定性にも大きく関与します。変形性股関節症をお持ちの方では、骨盤を前傾させることで臼蓋被覆(大腿骨頭に対する臼蓋の覆い)を増やし、関節を安定させようとする動きがみられることがあります。しかし、この代償的な前傾姿勢は大腿直筋の過活動(過剰な働き)を招き、結果として鼠径部痛につながることも少なくありません。

今回は、変形性股関節症における大腿直筋と骨盤前傾の関係について、詳しく解説します。

□大腿直筋が骨盤前傾と鼠径部痛に関わる理由として考えられること

1.臼蓋被覆を増加させるために骨盤を前傾する

変形性股関節症では、元々骨盤の横幅がスリムである事、関節唇損傷により臼蓋の被覆が減少し、大腿骨頭が前方・側方へ不安定になるケースがあります。

この不安定性を補うため、骨盤を前傾させることで臼蓋の被覆を増やし、股関節の安定性を確保しようとする動きが生じます。骨盤を前傾する際、大腿直筋は下前腸骨棘を前下方に引っ張る働きがあるため、その活動が優位になりやすいと考えられます。

2.大腿直筋の過活動が鼠径部痛を引き起こす

骨盤前傾を繰り返したり長時間保持すると、大腿直筋が常に収縮し続ける状態となり、以下の理由から鼠径部痛を誘発することがあります。

大腿直筋は下前腸骨棘から起始し、股関節前面を走行します。過活動により腱付着部への張力が高まり、股関節前面の炎症や痛みを引き起こしやすくなります。また、骨盤前傾と大腿直筋過活動の組み合わせにより、股関節前方の関節包への圧迫が強まり、疼痛のリスクが高まります。

3.他の股関節屈曲筋とのバランスの乱れ

本来、股関節屈曲は腸腰筋が主動筋として働きますが、腸腰筋の活動が低下すると、大腿直筋に過剰な負担がかかりやすくなります。腸腰筋と大腿直筋のバランスが崩れると、股関節の前方の安定性が低下する事で、鼠径部へのストレスがさらに増す傾向があります。

□フィジオセンターでのアプローチについて

大腿直筋の過剰な活動や骨盤前傾姿勢を調整するために、以下のようなアプローチを実施します。

1.大腿直筋のストレッチとリリース

大腿直筋の過緊張を和らげるために、レッドコードを使用し出来るだけリラックスした状態でストレッチを行います。さらに、ストレッチだけでは十分に柔軟性が得られにくい場合、周囲組織の滑走改善も組み合わせることで効果を高めます。

2.腸腰筋との協調性を改善する

大腿直筋の過剰か活動を抑えるだけではなく、股関節前方の安定性に関与する腸腰筋が適切に働くよう、選択的なエクササイズを実施します。これにより、大腿直筋の過活動を抑え、股関節の前方安定性を高めます。

3.姿勢と歩行の指導

骨盤を過剰に前傾させないために、股関節の関節可動域・体幹の深層筋の機能などを高める準備を行った上で、立位での骨盤の位置関係を中間位に近づけるよう指導します。また、歩行時のストライド(歩幅)やケイデンス(ピッチ)を適正化することで、股関節前面へのストレスを軽減します。

フィジオセンターでは変形性股関節症や股関節関節唇損傷、大腿骨寛骨臼インピンジメントをお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15

TEL 03-6402-7755

津田 泰志

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