変形性股関節症の遺伝的要因について

変形性股関節症の遺伝的要因について


変形性股関節症の発症や進行には、加齢や体重、生活習慣などの環境的要因だけでなく、遺伝的要因が大きく関与していることが近年の研究で明らかになってきています。特に家族内での発症リスクや骨形態の特徴、特定の遺伝子多型などが股関節に及ぼす影響が注目されており、遺伝的素因を理解することは予防や早期介入の観点から非常に重要です。本日のブログでは、変形性股関節症に関する遺伝的要因の知見を解説するとともに、骨盤の形態や歩行への影響、そしてフィジオセンターでのアプローチ方法についてお伝えします。

変形性股関節症の遺伝的要因の一つとして、家族歴との関連が報告されています。双子を対象とした大規模研究や疫学データでは、股関節を含む変形性関節症全体の発症リスクに遺伝的素因が関与していると推定されています。特に近親者に変形性股関節症を発症した方がいる場合、同様の発症リスクが高まることが示されています。また、日本人に多い「発育性股関節形成不全」は、臼蓋の被覆が不十分で股関節への負荷が増大しやすい骨形態を特徴としますが、この発育性股関節形成不全にも遺伝的背景があるとされています。

さらに、近年の研究では、変形性股関節症の発症や進行に関与する複数の遺伝子領域が同定されています。特に、関節軟骨や関節包の構造、炎症反応に関連する物質、軟骨基質分解に関わる伝子が注目されています。これらの遺伝子変異や発現の違いは、軟骨の変性や骨形態の異常、関節内圧の変化を引き起こし、結果的に変形性股関節症のリスクを高めると考えられています。

このような遺伝的素因は、股関節自体の構造や筋バランスにも影響を及ぼす可能性があります。例えば、発育性股関節形成不全を背景に臼蓋被覆が少ない場合、歩行や立位時に関節内圧が上昇しやすく、早期から関節唇損傷や炎症を引き起こすリスクが考えられます。結果として、股関節周囲の余分な筋活動が高まり易く、大腿直筋やハムストリングスなどの二関節筋の活動が過剰となった結果バランスが崩れ、骨盤の前傾や後傾といったアライメント異常を助長することが考えられます。

□フィジオセンターでのアプローチ

フィジオセンターでは、こうした遺伝的背景を踏まえた上で、変形性股関節症の進行予防と症状改善を目的とした包括的なアプローチを行っています。例としては、以下の内容のアプローチを実施しています。

1つ目は、股関節内の筋肉のバランスを整える事です。先に述べた、二関節筋である大腿直筋やハムストリングスは痛みや関節の不安定性を持つ場合には、過剰な働きが起こりやすくなります。反対に股関節のインナーマッスルの機能は低下しやすく、股関節の不安定さを助長してしまいます。そのため、活動が過剰となっている筋肉に対しては、ストレッチやリリースを行う事で筋肉の柔軟性を高めます。股関節のインナーマッスルについては、適切なエクササイズを選択して、筋肉の作用を高めるアプローチを行います。

2つ目は、動きの中で股関節の求心位(大腿骨頭が骨盤側の関節面である寛骨臼に対して安定している位置関係にある事)を出来るだけ保つ事です。歩行時に痛みがある、階段昇降の際に力が入りにくい。などの症状の場合は、この求心位を保つ事ができていない場合が多いため、股関節の機能だけではなく、体幹の機能、そして床面に接する足部の機能を含めて観察・評価を行う事で、安定して股関節が体重を支えられるようにアプローチを行います。

□まとめ

変形性股関節症は単に加齢による変化ではなく、骨形態の特徴や遺伝的素因、筋バランス、歩行様式など複数の要因が複雑に関与する疾患です。特に家族歴や股関節形成不全の有無は、発症予測や進行リスク評価の上で非常に重要な情報となります。当センターでは、こうした個々の背景を詳細に評価し、一人ひとりに合わせた最適なリハビリテーションプランを提供しています。また、当センターでは変形性股関節症や股関節関節唇損傷、発育性股関節形成不全、大腿骨寛骨臼インピンジメントをお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15

TEL 03-6402-7755

津田 泰志

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