腰椎分離症と足関節との関係について

腰椎分離症と足関節との関係について

部活動に励む学生アスリートに発生する事のある腰椎分離症は、腰椎の伸展(反る動き)や回旋(捻る動き)の繰り返しによって生じる疲労骨折であり、主に体幹の問題として捉えられがちです。しかし、私たちの臨床経験上、腰椎への過度なストレスは、土台である「足関節」の機能不全から始まるケースが観察されます。

「なぜ、足首の動きが悪いと腰椎の負荷の増加につながるのか?」

一見無関係に思える腰椎と足関節ですが、今回のブログでは、腰椎分離症の根本原因となり得る「足関節の機能低下とアライメント異常」に焦点を当て、そのメカニズムと当センターでのアプローチを解説します。


足関節の安定性が腰椎に影響する理由

足関節は、身体の最下部で地面からの衝撃を受け止め、その力を上部構造(膝関節、股関節、体幹)へと伝達する極めて重要な「緩衝材」かつ「土台」です。

足関節の機能が低下すると、主に以下の2つのメカニズムを通じて、腰椎に過度なストレスが集中しやすくなります。

1. 衝撃吸収(ショックアブソーバー)機能の破綻

走行、ジャンプ、着地といった運動において、足関節は可動域を利用して地面からの衝撃を分散・吸収する役割を担います。

もし足関節の背屈(つま先を上げる動き)底屈(つま先を伸ばす動き)の可動域が制限されたり、周囲の筋(特に下腿三頭筋や前脛骨筋など)の協調的な働きが失われたりすると、衝撃を十分に吸収できません。

その結果、衝撃はそのまま下肢から骨盤を介して腰椎へと伝達されます。体幹は、この過剰な衝撃に対処するため、反射的に緊張を高めたり、腰椎を反らせる(伸展)ことでバランスを代償的に取ろうとしたりします。この体幹、特に下位腰椎での代償動作が、特にスポーツ活動中の繰り返しの動作において、腰椎弓部に疲労性の負荷を集中させる最大の要因となります。

2. アライメント(位置関係)の異常

足関節の不安定性や可動域の異常は、下肢全体の**アライメント(骨格の位置関係)**を崩します。

  • 足関節の背屈制限:特に足首が硬い場合、しゃがみ込みや、ランニングの蹴り出しなど、膝を前に出す動作が必要な際に、足関節の代償として過剰な足部の回内や脛骨の内旋を引き起こします。
  • 骨盤・腰椎への影響:この連鎖的な内旋・回内は、股関節を内旋・内転方向に誘導し、結果として骨盤の過剰な前傾を招く事があります。骨盤前傾は、自動的に腰椎の伸展(反り)を強め、椎間関節や腰椎弓部に常に圧縮ストレスをかける状態を作り出します。野球、ゴルフ、サッカーなどで体幹の回旋動作が加わると、伸展位で固定された腰椎に強い回旋ストレスがかかることになり、腰椎分離症の発症リスクが高まることが想定されます。

フィジオセンターで行う足関節へのアプローチ

フィジオセンターでは、腰椎分離症に対するアプローチとして、医療機関の医師の指示の安静度や骨癒合の程度に合わせて、「土台」である足関節の機能回復と全身の関節の関係の修正に重点を置いています。

1. 足関節の評価と可動域改善

まず、足関節の背屈・底屈・内外反の可動域を測定し、制限の有無を確認します。特に制限がある場合は、その原因を確認してアプローチを行います。

  • 具体的な介入例:
    • 制限因子に応じた徒手的な関節モビライゼーションを実施し、足関節の滑りや遊びを改善します。
    • 下腿三頭筋やアキレス腱のストレッチを指導し、可動域の確保を目指します。

2. 荷重位での安定性と協調性の再獲得

可動域が改善されたら、次に「衝撃を受け止める能力」「安定して支持する能力」の再獲得を目指します。

  • 固有受容感覚の強化: バランスボードや不安定な支持面を用いたバランストレーニングにより、足関節周囲の筋肉が床からの情報に適切に反応できる能力(固有受容感覚)を向上させます。
  • 下肢連動性のエクササイズ: 足関節、膝、股関節が協調して動くためのファンクショナルトレーニングを実施します。特に、片足立ちでのスクワットやランジ動作を通じて、足関節の安定性が股関節・骨盤の安定性へと繋がるように誘導し、体幹への代償的な負荷がかからない動作パターンを練習します。

3. スポーツ動作における動作分析と修正

最終段階として、実際の競技動作(野球の投球動作やバッティング動作、サッカーのロングキック動作など)を行いながら、足関節の機能が全身へ与える影響を分析し、修正します。

足関節の機能不全を補うために体幹を反らせていた代償動作を特定して、適切な重心移動と体幹の使い方を再教育します。


まとめ:腰椎分離症の再発予防は「足」から

腰椎分離症は、腰椎そのものに注目する事は重要ですが、根本的な発症予防や再発予防の観点から考えた場合は、全身的な動き方から確認する事がより望ましいと考えられます。

足関節の可動域制限や不安定性は、下肢全体のアライメントを崩し、その代償として腰椎に過剰な伸展・回旋ストレスを集中させる「根本原因」となり得ます。

フィジオセンターでは、症状の段階に合わせた評価と、その方に最適と考えられる足関節を含めた全身の統合的なエクササイズをご提案し、競技復帰や日常生活の質の向上を徹底的にサポートいたします。

腰椎分離症でお困りの方、スポーツ中の体幹の不安定性を感じる方、競技復帰が進まない方は、ぜひフィジオセンターへご相談ください。再発予防とパフォーマンス向上をサポートいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

※年末年始休業のお知らせ
・2025年12月26日(金)17:00まで営業。
・2025年12月27日(土)~ 2026年1月4日(日)年末年始休業
・2026年1月5日(月)10:00より通常営業

理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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