変形性股関節症と加齢変化の影響について

変形性股関節症と加齢変化の影響について

―40〜50代発症から70〜80代へ進んだときに起こりうる諸現象と対応策―

中年期(40〜50代)で既に 変形性股関節症をお持ちの場合に、70〜80代とご年齢を重ねた場合に、「加齢変化」が股関節・周辺の組織・姿勢制御・日常生活動作に与える影響は少なくありません。今回は、この変形性股関節症と加齢変化の影響について解説します。

□ 加齢による構造・組織変化と変形性股関節症に与える影響

加齢は関節軟骨・骨・滑膜・関節包・靭帯などの組織にさまざまな変化をもたらし、それが変形性股関節症の進行や症状の増強に関与する可能性があります。例えば、最新の系統的レビューによると、変形性股関節症の有病率は年齢とともに上昇することが示されており、加齢がリスク因子であることが確認されています。

こうした構造変化に加え、年齢を重ねると関節包や周囲の靭帯などの柔軟性が低下しやすく、結果として関節可動域の制限が出現しやすくなると考えられます。さらに、このような構造的な固さが加わる事で、中年期から変形性股関節症をお持ちの方の場合、70〜80代では「複合的な負荷」が生じるリスクが高まります。

□筋の機能・筋量・筋質変化:加齢+変形性股関節症の複合的な影響

加齢による骨格筋量の低下は広く知られており、特に足の筋肉・股関節の周囲の筋肉にも影響がみられます。加えて、変形性股関節症ではこれらの筋群の筋力低下・筋の質の変化(脂肪浸潤)も報告されています。

このように、40〜50代で変形性股関節症を抱えていた方が70〜80代になると、加齢による筋萎縮・筋質低下と、変形性股関節症による筋機能低下が重なる事で、股関節・骨盤・体幹部の安定性が損なわれ、日常動作や立位・歩行時の負荷が増加する可能性が高まります。

□ フィジオセンターでのアプローチについて

当センターでは、中年期に変形性股関節症をお持ちの方が、出来る限り長期的に安心して日常を送れるよう、以下のようなアプローチをご提案しています。

1つ目は、筋量・筋質維持を目的としたエクササイズの実施です。

70代〜80代においては、加齢による筋量低下・筋質の低下に対して、軽〜中負荷の筋力トレーニングが大切です。具体的には、股関節の殿筋群(大殿筋・中殿筋・小殿筋)や腸腰筋などを対象に、可能であれば立位などの体重をかけた肢位でのエクササイズを実施します。

2つ目は、姿勢・骨盤アライメントの修正や維持です。

変形性股関節症をお持ちの方が、ご年齢を重ねられた場合、過剰な骨盤の前傾・骨盤後傾・下位腰椎の過伸展・脊柱全般の可動域低下が起こりやすいため、立位・歩行時の骨盤中間位維持、上半身と骨盤と股関節の位置関係などを確認し、動きやすい体作りを目指します。

3つ目は、活動量の維持・生活環境の調整です。

70〜80代では、日常生活での活動量が減少しがちであり、それが筋機能の低下や股関節の症状を増強する事に、関与します。そのため、定期的な歩行・ご自宅でのセルフエクササイズを日常生活に組み込みつつ、適切に休憩を取り、姿勢をまめに変える事、症状によってはT字杖やノルディックウォーキングのポールを使用する事も重要です。

□ まとめ

40〜50代で変形性股関節症をお持ちの方が70〜80代に年齢を重ねた場合、加齢がもたらす関節変形の進行・筋量の低下・筋の質の低下など、変形性股関節症の影響に加えて、加齢変化が重なる事で症状の増強を引き起こすリスクが高まります。そのため、長期的な視点に立ち、多角的なアプローチアプローチを行う事が大切です。

フィジオセンターでは、変形性股関節症・発育性股関節形成不全・大腿骨寛骨臼インピンジメントなどをお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリテーションを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT®BIG認定セラピスト
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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