腰椎分離症を呈する中・高校生の方が行っているスポーツの種目としては、サッカーや野球、バレーボールなどが多い事が報告されています。その一方でテニスや、バドミントンなどのオーバヘッドスポーツの動きで腰椎分離症の症状が出現される方もおられます。本日のブログでは「腰椎分離症と肩関節の動きとの関係について」解説します。

一見すると腰の問題と肩関節の運動能力は別々の領域のように思われがちです。しかし、肩関節の動きは胸椎・肋骨・脊柱・骨盤など全身の動きと強く関係しており、その動きの乱れが腰椎へ過剰な負担を与えるケースもみられます。

今回のブログでは、肩関節の機能がどのように腰椎の安定性へ影響を及ぼし、腰椎分離症の発症や症状の遷延につながるのかについて、そおメカニズムとフィジオセンターでのアプローチをご紹介します。

□ 肩関節の動きと体幹の関係

肩関節の屈曲・外転・挙上などの動きには、肩甲上腕リズムと呼ばれる協調運動が存在します。このリズムには、肩甲骨の上方回旋・後傾・外旋、胸椎の伸展・回旋などが必要不可欠です。

しかし、胸椎の可動性が低下している場合や肩甲骨周囲筋の機能不全がある場合、本来肩甲帯が行うべき動きを体幹が代償してしまい、結果として腰椎の過剰な伸展または回旋が生じる事があります。

腰椎分離症は特に下位腰椎に発生しやすい疾患であり、この代償運動によって分離部への剪断力・圧縮力が腰椎分離症の発症に関わる可能性があります。

□ 肩関節の動きが腰椎分離症に影響するメカニズム

１つ目は、胸椎伸展可動域の不足による腰椎の代償動作です。テニスのサーブやバドミントンスマッシュなど、腕を頭上まで挙上する動作では、胸椎の伸展が必要になります。胸椎伸展が不足すると、挙上角度を補うために腰椎を反らせる代償が起こり、腰椎分離部へ伸展ストレスが集中します。

２つ目は、肩甲骨の上方回旋不足による体幹回旋の代償動作です。肩甲骨が正常に上方回旋・後傾できない場合、十分な可動域が得られません。この不足を補うために体幹が過剰に回旋した結果、腰椎の回旋負荷が増大します。特に腰椎は回旋可動域が小さいため、この過負荷は腰椎弓部に剪断力を生じやすいと考えられます。

３つ目は、肩甲帯の安定性低下による体幹深層筋(インナーマッスル)の活動の低下です。肩甲骨は胸郭上で安定して動く必要があり、僧帽筋下部・前鋸筋・菱形筋などの協調した筋肉の働きが欠かせません。これらの筋がうまく働かないと、多裂筋・腹横筋などの活動が低下し、腹腔内圧が保ちにくい不安定な体幹機能となってしまいます。その結果、下位腰椎の運動が過剰となり、腰椎分離症の発症に関与します。

□ フィジオセンターで行う評価とアプローチ

１つ目は、肩関節～胸郭～腰椎～骨盤までの全体的な動きの評価です。肩甲骨の上方回旋・後傾の動き、胸椎伸展・回旋の可動域、腰椎や骨盤帯のアライメント、体幹深層筋(インナーマッスル)の機能、症状を誘発しやすい実際のスポーツ動作などを総合的に評価し、肩関節の問題が腰椎へどう負荷をかけているかを確認します。

２つ目は、肩甲骨および胸椎の関節可動域向上のアプローチです。胸椎伸展モビライゼーションや、肩甲帯の安定化エクササイズ(前鋸筋・僧帽筋下部などの活性化）、肩甲上腕リズムの再教育などを行い、上肢挙上時の体幹、特に下位腰椎の代償的な動きを軽減し、下位腰椎への負担を軽減します。

３つ目は、体幹深層筋(インナーマッスル)の再教育と腰椎安定化です。腰椎の安定化に重要な役割を持つ、多裂筋・腹横筋のエクササイズの実施、横隔膜の機能改善を目的とした呼吸のエクササイズを実施します。

４つ目は、競技特性に合わせたフォームの再構築です。テニスのサーブやバドミントンのスマッシュ、野球選手の投球時の胸椎回旋の獲得など、肩関節の動きと体幹の安定性の協調した働きを促し、競技動作における下位腰椎のストレスを最小限にします。

□ まとめ

肩関節の動きは一見すると腰椎分離症とは無関係に思えますが、実際には胸椎・肩甲帯・体幹の連鎖を通じて腰椎の伸展・回旋ストレスに大きな影響を与える要因となることがあります。

肩の可動性や肩甲骨の安定性が低下したままスポーツを続けると、腰椎分離症の発症に関わる事や、骨癒合後の再発リスクも高まります。適切な評価と運動機能の改善により、下位腰椎への負荷を軽減する視点も重要です。

腰椎分離症による痛みでお困りの方、姿勢の崩れが気になる方、スポーツ動作に不安がある方は、ぜひフィジオセンターにご相談ください。適切な評価のもと、腰椎分離症の再発予防やパフォーマンス向上に寄与します。

腰椎分離症と診断された方、部活動をしながら腰痛に悩まされている方、医療機関でのリハビリが十分に受けられずお困りの方は、ぜひフィジオセンターにご相談ください。どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士／保健医療科学修士号／認定理学療法士（運動器・脳卒中）
Certified Mulligan Practitioner（CMP）／LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755