リハビリテーションに励むクライアントの方から、「日によって動きの良し悪しの波が大きい」というご相談をよくいただきます。
「今日は体がスムーズに動くけれど、昨日は足が出にくかった」。 この日内変動や日差変動の背景には、お薬の効果だけでなく、「睡眠の質」の影響が近年の研究で示唆されています。
パーキンソン病をお持ちの方にとって、睡眠は単なる休息ではありません。脳内の神経ネットワークを整理し、翌日の運動機能を準備するための重要な時間となります。今回のブログでは、睡眠障害が運動機能に与える影響と、リハビリテーションの観点からの対策について解説します。
1. なぜパーキンソン病で「睡眠」が乱れるのか
パーキンソン病をお持ちの方の約60〜90%が何らかの睡眠障害を抱えていると報告されています。これには疾患特有の生理学的な背景があります。
・睡眠・覚醒リズムの変調:睡眠を調整する脳幹の神経核の機能が影響を受ける事で、睡眠と覚醒のメリハリをつける機能(概日リズム)が低下します。
・夜間の運動症状:寝返りが打てないことによる不快感、有痛性筋痙攣(こむら返り)、むずむず脚症候群などが、深い眠りを妨げます。
・レム睡眠行動障害:夢の内容に合わせて体が動いてしまう症状で、睡眠の分断を招き、熟睡感を損ないます。
重要なのは、これらの睡眠障害が「日中のパフォーマンス」を物理的に低下させるという点です。
2. エビデンスで見る「睡眠不足と運動機能」の関係
睡眠の質が低下すると、具体的にどのような悪影響が出るのでしょうか。近年では、以下の3つのリスクが高まることが示されています。
① 「すくみ足」と転倒リスクの増大
睡眠不足は、脳の前頭葉機能(注意機能や実行機能)を低下させます。歩行中の方向転換などには高度な注意が必要ですが、睡眠不足ではこの処理が追いつかず、「すくみ足」や転倒を引き起こしやすくなることが指摘されています。
② 運動学習効果の低下
リハビリで練習した動きのコツは、睡眠中に脳に定着します(記憶の固定化)。質の高い睡眠が取れていないと、せっかくのリハビリ効果が定着しにくく、翌日にはまた元の動作に戻ってしまうという現象が起こりやすくなります。
③ 薬効の変動(ウェアリング・オフの悪化)
良質な睡眠が取れていない場合、脳内のドパミン受容体の感度が不安定になり、薬の効き始めが遅くなったり、持続時間が短くなったりする傾向があることが報告されています。
3. 運動機能向上のための「睡眠マネジメント」
リハビリテーションの視点からもアプローチできる「睡眠の整え方」が3つあります。
・「寝返り」の動作獲得:中途覚醒の大きな原因は「寝返りの困難さ」です。フィジオセンターでは、少ない筋力でもスムーズに寝返りが打てるよう、体幹の回旋トレーニングや、胸郭や股関節の回旋可動域の確保に努めます。
・光療法と活動量のコントロール:午前中に太陽光を浴びてリズムを整えます。また、高強度のリハビリは日中に行い、夜間はストレッチなどの低負荷な活動に留める「運動の時間割」も重要です。
・ベッド環境の適正化:重い布団は寝返りを阻害します。保温性が高く軽量な寝具への変更や、明るさの調整など、環境面からの介入も効果的です。
4. フィジオセンターにおけるアプローチ
フィジオセンターでは、日中の運動だけでなく、夜間の状況も含めた包括的な評価を行います。
・体幹・胸郭へのリリースやストレッチの実施:呼吸を深くし、リラックスしやすい体づくりとして、硬くなった胸郭や脊柱へアプローチして柔軟性を高めます。
・夜間動作の戦略指導:ベッドでの起き上がり方や、夜間トイレに行く際の安全な動線確保など、具体的な動作指導を行います。
まとめ
睡眠障害は「病気だから仕方がない」と諦める必要はありません。適切な寝具の選定、寝返り動作の習得、そして日中の適切な運動負荷設定によって、改善できる余地があります。
「朝起きた時の体が重い」「夜中に目が覚めてしまい、翌日のリハビリが辛い」とお悩みの方は、ぜひ一度フィジオセンターにご相談ください。夜間の過ごし方から日中の運動まで、トータルでサポートいたします。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755