パーキンソン病に対する薬物療法と運動療法の最適なタイミングについて

パーキンソン病に対する薬物療法と運動療法の最適なタイミングについて

パーキンソン病をお持ちの方のリハビリテーションにおいて、「どのような運動を行うか」と同じくらい重要なのが、「いつ運動を行うか」という視点です。実際、クライアントの方からも、「薬が効いている時とそうでない時で、動きやすさが全く違う」といったご相談を受けることは少なくありません。

パーキンソン病に対する治療では、薬物療法と運動療法は互いに独立したものではなく、タイミングを最適化することでより効果を発揮することが、近年の研究で明らかになっています。本日のブログでは、薬物療法の基本的な作用を整理したうえで、運動療法を組み合わせる際の「最適なタイミング」について解説します。


1.パーキンソン病における薬物療法の役割

パーキンソン病をお持ちの方の主な運動症状(無動、筋固縮、振戦など)は、脳内のドパミン減少によって生じます。そのため、治療の中心となるのが、ドパミン作用を補う薬物療法です。

代表的な薬剤には以下があります。

・レボドパ製剤:脳内でドパミンに変換され、最も強力に運動症状を改善
・ドパミンアゴニスト:ドパミン受容体を刺激し、比較的作用時間が長い
・MAO-B阻害薬、COMT阻害薬:ドパミンの分解を抑制し、効果の持続を補助

これらの薬剤は、服薬後に血中濃度が上昇し、症状が改善する「オン・タイム」と、効果が減弱する「オフ・タイム」が生じます。このオン・オフの波こそが、運動療法のタイミングを考える上での重要です。


2.なぜ「オン・タイム」での運動が重要なのか

多くの研究において、運動療法はオン・タイムに実施する方が、安全性・効果ともに高いことが示されています。

その理由は主に3つあります。

1つ目は、運動学習効率の向上です。
ドパミンは単なる運動制御だけでなく、運動学習や脳の可塑性にも深く関与しています。オン・タイムでは脳内のドパミン環境が整い、新しい動作や姿勢制御を学習しやすくなります。

2つ目は、二次的な負担の軽減です。
オフ・タイムでは無動や筋固縮が強まり、必要以上の筋活動や代償動作が生じやすくなる事があります。その結果、疲労感を助長するリスクがあります。

3つ目は、転倒リスクの低減です。
歩行速度やバランス能力が改善しているオン・タイムでは、運動中の安全性が高まります。

これらの理由から、基本原則として、運動療法はオン・タイムに行うことが推奨されます。


3.オフ・タイムは「何もしない時間」ではない

一方で、オフ・タイムを完全な休息時間としてしまうことが、必ずしも最善とは限りません。重要なのは、オフ・タイムに適した活動内容へ切り替えるという考え方です。

オフ・タイムに適しているのは、

・低負荷のストレッチ
・呼吸練習やリラクゼーション
・関節可動域を維持するための軽度な体操

など、神経系や自律神経に過度な負担をかけない活動です。

近年の報告では、こうした低強度の介入が、オフ・タイムにおける不快感や不安感を軽減し、結果として次のオン・タイムでの運動パフォーマンスを高める可能性が示唆されています。


4.薬と運動の「順番」が与える影響

もう一つ見落とされがちなのが、服薬と運動の順番です。

一般的には、「服薬 → オン・タイム → 運動療法」という流れが最も効率的とされています。

これは、運動そのものが血流を促進し、レボドパの脳内移行を助ける可能性がある一方で、オフ・タイムでの高強度運動は、疲労や症状変動を増悪させるリスクがあるためです。


5.フィジオセンターにおける実践的アプローチ

フィジオセンターでは、単に「運動内容」を提供するのではなく、薬物療法との相互作用を前提とした運動療法を重視しています。

具体的には、

・服薬時間と症状変動の詳細なヒアリング
・オン・オフに応じた運動メニューの明確な切り分け
・歩行、バランスエクササイズなどの目的別の運動強度設定
・疲労感や疼痛が出現した場合のメニューの修正

このようなプロセスを通じて、「その方にとってより効果が出やすいタイミング」を見極めます。

運動やエクササイズを薬の代替と考えるのではなく、薬の効果を最大限に引き出すための手段として位置づけることが、長期的な視点で考えると重要です。


まとめ

パーキンソン病における薬物療法と運動療法は、別々に考えるものではありません。オン・タイムを活かした運動、オフ・タイムに適した活動、そして生活全体を見据えた調整が重要です。

「運動しているのに効果を感じにくい」、「リハビリの後に疲れが出て調子が悪くなる」

そのような背景には、タイミングのズレが隠れているかもしれません。

フィジオセンターでは、薬物療法とのバランスを考慮しながら、その方に最適と考えられる運動プログラムをご提案しています。パーキンソン病の運動療法でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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