パーキンソン病のWearing-off現象と運動療法の組み合わせ

パーキンソン病のWearing-off現象と運動療法の組み合わせ

パーキンソン病をお持ちの方から、「薬を飲んでからしばらくすると、急に動きにくくなる」、「リハビリの途中で、さっきまで出来ていた動作が出来なくなる」といった声を伺うことがあります。

このような症状変動の背景として重要なのが、Wearing-off(ウェアリング・オフ)現象です。Wearing-offとは薬物療法を行っている中で病態が進行する過程で多くの方にみられる現象であり、運動療法を行う上でも無視できない要素となります。

本ブログでは、Wearing-off現象の基礎を整理したうえで、運動療法をどのように組み合わせるべきかを、解説します。


1.Wearing-off現象とは何か

Wearing-offとは、レボドパ製剤の効果持続時間が短縮し、次の服薬前に症状が再出現する現象を指します。
発症初期には1回の服薬で安定した効果が得られますが、病期の進行に伴い以下のような変化が生じます。

・黒質線条体系のドパミン貯蔵能の低下
・血中レボドパ濃度と臨床効果の乖離
・脳内ドパミン濃度の変動幅の増大

その結果、内服が「効いている時間」と「切れている時間」がより明確に分かれるようになります。

Wearing-off時にみられる症状は、無動や筋固縮といった運動症状だけでなく、不安感、疲労感、疼痛、集中力低下などの非運動症状を伴うことも多く、生活の質(QOL)に影響します。


2.Wearing-offが運動療法に与える影響

Wearing-off現象がある場合、運動療法にはいくつかの課題が生じます。

一つ目は、運動パフォーマンスの不安定性です。同じ運動内容であっても、実施する時間帯によって、可動域・筋出力・バランス能力が大きく変化します。

二つ目は、運動負荷が大きくなる可能性が高まる事です。Wearing-off中は筋固縮や動作開始困難が強くなり、代償的な筋活動が増加しやすくなります。この状態で高強度の運動を行うと、疲労が蓄積する可能性があります。

三つ目は、運動学習の効率低下です。ドパミンは運動の自動化や学習過程に関与しており、Wearing-off中は新しい動作を獲得しにくいことが示されています。


3.Wearing-offを考慮した運動療法の基本原則

近年の研究では、薬物療法と運動療法を「時間軸」で組み合わせる事の重要性が強調されています。

基本的な原則は以下の通りです。

・運動学習や強度の高い運動は、効果が安定している時間帯に実施すること
・Wearing-offが予測される時間帯には、運動内容を調整すること
・症状変動を前提とした柔軟なプログラム設計を行うこと

特に、服薬後30〜90分程度の比較的安定した時間帯は、歩行練習、バランスエクササイズ、LSVT® BIGのような振幅拡大型運動に適していると報告されています。

一方、Wearing-offが近づく時間帯では、関節可動域練習、姿勢調整、呼吸練習など、神経系への負荷が低い介入が推奨されています。


4.運動療法がWearing-offに与える可能性

興味深い点として、定期的な運動習慣そのものが症状変動を緩和する可能性も示唆されています。

有酸素運動やリズミカルな反復運動は、

・ドパミン受容体感受性の改善
・神経栄養因子(BDNFなど)の増加
・中枢神経系の可塑性促進

に関与すると考えられています。

これにより、短期的なWearing-offを「消す」ことは難しくても、長期的には症状変動の幅を小さくする可能性があります。


5.フィジオセンターでの実践的アプローチ

フィジオセンターでは、Wearing-offを単なる「症状の悪い時間」として扱うのではなく、
評価と介入を組み立てる重要な手がかりと考えています。

具体的には、

・服薬時間と症状変動の詳細な確認を行うこと
・Wearing-off出現前後での動作・歩行などの評価
・時間帯ごとに明確に目的を分けた運動プラグラムの設定
・疲労や非運動症状を含めた対応を検討すること

を行い、その方にとって最も安全かつ効果的な運動の時間の調整を検討します。


まとめ

パーキンソン病におけるWearing-off現象は、避けるべき問題ではなく、理解し、前提として運動療法を組み立てるべき現象です。

症状が良い時間に何を行い、症状が変動する時間に何を控えるのか。

この視点を持つことで、「運動がつらい」「続かない」といった問題を軽減し、より安定したリハビリテーションにつなげることができます。

フィジオセンターでは、薬物療法と運動療法を切り離さず、生活全体を見据えた運動プログラムをご提案しています。Wearing-offや症状変動でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

一覧に戻る
完全予約制
ご予約はこちら