―「曲がる動作」を安全に、生活で行える形へ―
「方向を変えようとした瞬間に足が止まる」「小刻みになってうまく回れない」「家の中の方向転換が一番怖い」パーキンソン病をお持ちの方々から、こうした声をうかがう事があります。
方向転換(ターン動作)は、パーキンソン病においてすくみ足や転倒が起こりやすい場面の一つです。実際、直進歩行よりも転倒リスクが高いことが複数の研究で報告されています。
本ブログでは、方向転換が難しくなる背景を整理したうえで、フィジオセンターではどのような視点で評価し、どのように練習・生活動作へ落とし込んでいるのかを解説します。
方向転換は「足の問題」ではない
方向転換は、単に足を動かすだけの動作ではありません。
・体幹を回旋させる
・重心を片脚に移す
・視線を切り替え、進行方向を先に認識する
・歩幅・リズムを再調整する
これらを同時かつ連続的に統合する必要があります。
パーキンソン病をお持ちの方では、動作の自動化やリズム調整、注意配分が低下しやすく、その結果として
・回る動作が細切れになる
・小刻み歩行が増える
・動き出しが遅れる
といった問題が生じやすくなります。
つまり方向転換の難しさは、筋力低下だけでは説明できず、姿勢制御・体幹機能・注意機能・運動制御のズレが複合的に関与していると考えられています。
フィジオセンターの考え方
方向転換は「評価して、練習して、生活に落とす」
フィジオセンターでは、方向転換を単なる「歩行の一部」としてではなく、独立した重要動作として捉えています。そのため、次の流れで対応します。
1.「どの方向転換」で困っているのかを評価する
一口に方向転換と言っても、困り方は人それぞれです。
・その場で180度回るときに止まりやすい
・歩きながら角を曲がると不安定になる
・右回りと左回りで差がある
・狭い場所や疲労時だけ悪化する
方向転換に要する歩数・時間・姿勢の崩れ方などを確認することで、背景要因が見えてきます。
2.安全を最優先に「動作の分解」を行う
評価の次に行うのが、無理に連続動作を行わない戦略です。
フィジオセンターでは、多くの場合、「止まる → 回る → 再び歩く」、という段階的な動作を提案します。
歩きながら回ろうとすると、姿勢制御の負荷が一気に高まります。一度止まってから回ることで、すくみ足やふらつきを予防しやすくなります。
3.姿勢・体幹・視線を含めた全体調整
方向転換が不安定な方の多くに、以下の特徴がみられます。
・前傾姿勢が強い
・体幹回旋(捻りの動き)が小さい
・視線が下を向いたまま動作を始めている
そのため、足だけでなく
・体幹を「先に向ける」
・視線を進行方向へ先行させる
・小さく回らず、大きく円をを描くように動く
といった全身の使い方を確認します。
4.外的キュー(合図)の反応性を見極める
方向転換では、短くシンプルな外的キューが有効な場合があります。
・「1・2」「ターン」などの声かけ
・一定テンポの音刺激
ただし、キューは万能ではありません。合図が増えることで、かえって混乱する方もいます。実際の動作を確認しながら、「使うか・使わないか」「どの場面で使うか」を判断します。
5.生活環境に合わせて“使える形”に落とし込む
最終的に大切なのは、「できる」ことではなく「生活で再現できる」ことです。
・自宅内の動線や家具配置
・トイレ・玄関など狭い場所での回り方
・手すり・杖・歩行器との相性
これらを踏まえ、方向転換の方法を生活場面に合わせて最適化します。環境調整は、転倒予防において非常に重要な要素です。
まとめ
方向転換は、パーキンソン病において、すくみ足や転倒につながりやすい重要な動作です。問題の背景には、筋力だけでなく、姿勢・体幹・視線・注意・リズムといった複数の要素が関与しています。
一般的な工夫が役立つこともありますが、「なぜ自分はうまくいかないのか」と感じる場合、そこには事前に評価されていない要因が隠れていることがあります。
「最近、方向転換が怖くなってきた」、「家の中でヒヤッとすることが増えた」そんな変化を感じたときこそ、早めの評価が大切です。フィジオセンターでは、医学的根拠に基づいた評価と、生活に即した個別プログラムをご提案しています。不安を抱えたままにせず、ぜひ一度ご相談ください。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755