パーキンソン病における介助歩行時の声かけと運動キューについて

パーキンソン病における介助歩行時の声かけと運動キューについて

―「動き出し」を助ける声かけの工夫―

「歩こうとしても足が出ない」、「歩き始めるときに固まってしまう」、パーキンソン病をお持ちの方から、このような歩行に関するご相談を受けることがあります。

パーキンソン病をお持ちの方では、歩行速度の低下、小刻み歩行、すくみ足(freezing of gait)などがみられ、歩くこと自体が難しくなる場合があります。ご家族や介助者が声をかけながら歩行をサポートする場面も多くありますが、どのような声かけをするかによって歩きやすさが変わることが知られています。

本日のブログでは、パーキンソン病における介助歩行時の「声かけ」と「運動キュー」について、研究報告を踏まえながら解説します。


運動キューとは

運動キューとは、動作を引き出すために外部から与える刺激のことです。

リハビリテーションでは主に次のようなキューが用いられます。

・聴覚キュー:声かけ、メトロノーム、リズム音
・視覚キュー:床の線、目標物、歩幅マーカー
・体性感覚キュー:軽いタッチや重心誘導

これらの外部刺激は、動作のタイミングやリズムを作る「手がかり」として働きます。


なぜパーキンソン病をお持ちの方ではキューが有効なのか

パーキンソン病をお持ちの方では、基底核を中心とした神経ネットワークの機能低下により、動作の自動化が障害されやすいことが知られています。

その結果として

・歩幅が徐々に小さくなる
・歩行リズムが乱れる
・歩き出しが遅れる

といった現象が起こります。

一方で、外部からのキューは大脳皮質や小脳を含む別の運動ネットワークを活用し、歩行のタイミングやリズム形成を補助すると考えられています。

実際に、パーキンソン病患者を対象とした研究では、聴覚キューや視覚キューを用いることで

・歩行速度の改善
・歩幅の拡大
・歩行リズムの安定
・すくみ足の軽減

といった変化が報告されています。こうした効果は複数の研究でも示されており、外的キューは歩行リハビリテーションの重要な手段とされています。


介助歩行時の声かけのポイント

1.短く具体的な言葉にする

歩行中に複雑な説明をされると、かえって動きにくくなることがあります。

そのため

・「一歩大きく」
・「右足から」
・「前を見て」

など、一つの動作に焦点を当てた短い言葉が有効な事が多いです。


2.リズムを作る

歩行はリズム運動です。

・「いち、に」
・「トン、トン」

といったリズムのある声かけは、歩行周期を整える助けになります。

特に歩き始めや歩行速度が低下している場面では、リズムを与えることで足が出やすくなることがあります。


3.視線と姿勢を整える

パーキンソン病では前傾姿勢になりやすく、視線が下がることで歩幅が小さくなることがあります。

そのため

「背筋を伸ばして」よりも
「少し前を見て歩きましょう」

といった声かけの方が、姿勢や歩幅の改善につながる場合があります。


すくみ足が出たときの対応

すくみ足が出てしまった場合、慌てて「早く歩いて」と声をかけると、かえって動きにくくなることがあります。

そのようなときには

・「一度止まりましょう」
・「大きく一歩」
・「線をまたぐように」

といった新しい動作のきっかけを作るキューが有効な場合があります。視覚キューとして床の線や目標物を使うことも、歩き出しの助けになることがあります。


フィジオセンターでの考え方

「その方に合ったキューを見つける」事が重要です。外的キューは有効な方法ですが、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。

フィジオセンターでは、次の流れでサポートを行います。

1.歩行の特徴を評価する

・歩幅の低下
・体幹回旋の減少
・歩行リズムの乱れ
・すくみ足の頻度

などを確認し、歩行障害の背景を整理します。


2.適切なキューを選択する

評価結果をもとに

・聴覚キュー
・視覚キュー
・体性感覚キュー

の中から、その方に合った方法を選択します。


3.生活場面で使える形にする

当センターをご利用の時間だけでなく、日常生活でも有効に使えることが重要です。

ご家族や介助者にも

・どのような言葉を使うか
・どのタイミングで声をかけるか

を共有し、安全に歩行をサポートできるよう調整します。


まとめ

パーキンソン病をお持ちの方では、歩行の自動化が障害されることで

・歩幅の低下
・歩行リズムの乱れ
・すくみ足

などが生じやすくなります。

介助歩行時の声かけや運動キューは、こうした歩行の問題に対して動作のタイミングやリズムを補う手がかりとなります。

適切な声かけによって

・歩幅の拡大
・歩行リズムの安定
・歩き出しの改善

といった変化が期待できます。

ただし大切なのは、「良い方法」をそのまま使うことではなく、その方の歩行の特徴に合ったキューを見つけることです。「歩き始めが難しくなってきた」、「すくみ足が増えてきた」

このような変化を感じた際には、早めに歩行の評価を行うことが重要です。

フィジオセンターでは、医学的根拠に基づいた歩行分析と運動指導を行い、安全に生活の中で歩くためのサポートを行っています。ご本人だけでなく、ご家族や介助者へのアドバイスも行っていますので、お気軽にご相談ください。

理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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