―椅子から立つ時に股関節が痛い、動き出しがつらいと感じる場合―
変形性股関節症をお持ちの方やご家族から、次のようなご相談を受けることがあります。
・椅子から立つ時に股関節が痛い
・低い椅子やソファから立つのが特につらい
・立ち上がる時に体をどう使えばよいのかわからない
・立ち上がった直後の一歩目まで不安がある
このような「立ち上がり動作の痛み」は、変形性股関節症をお持ちの方でみられることのある困りごとの一つです。立ち上がりは、日常生活の中で何度もくり返す動作です。食事、トイレ、外出の準備、家事など、さまざまな場面で必要になるため、この動きに痛みがあると生活全体のしづらさにつながりやすくなります。
ただし、立ち上がりで痛みがあるからといって、単純に「股関節だけが悪い」と考えればよいわけではありません。今回は、変形性股関節症と立ち上がり動作の関係、なぜ痛みが出やすいのか、どのような工夫が大切なのかを、過去のブログよりも少し細かく解説します。
立ち上がり動作とは何か
立ち上がり動作とは、座った姿勢から身体を前方へ移し、足の裏に体重を乗せて、最後に身体を持ち上げる一連の動きを指します。足の力だけで行うように見えますが、実際には股関節、膝関節、足関節に加えて、骨盤や体幹の働きも大きく関係しています。
変形性股関節症をお持ちの方の場合、関節軟骨の変化だけでなく、関節包、骨、周囲の筋肉なども影響を受けます。その結果、股関節の滑らかな動きが出にくくなり、特に立ち上がる瞬間のように股関節へ負担が集中しやすい場面で、痛みや動かしにくさを感じることがあります。立ち上がりは単なる「筋力の問題」ではなく、股関節の動き、身体の使い方、体重移動の方法が重なって成り立っている動作です。
なぜ変形性股関節症で立ち上がり動作の痛みが出やすいのか
変形性股関節症で立ち上がり時の痛みが出やすくなる背景には、いくつかの要因があります。
・股関節を深く曲げると負担がかかりやすい
・お尻や体幹の筋肉がうまく働きにくくなる
・足に体重を移すタイミングが合いにくくなる
・痛みを避ける動き方が続き、さらに立ちにくくなる
立ち上がる時には、身体を前方に移動させながら、足の裏へしっかり体重を乗せる必要があります。この時、椅子が低すぎたり、ソファが柔らかすぎたりすると、股関節をより深く曲げなければならず、負担が増えやすくなります。また、足の位置が合っていなかったり、手の支えが使えなかったりすると、立ち上がる瞬間に股関節まわりへ余分な負担がかかることがあります。
つまり、立ち上がり時の痛みは単に「股関節が悪いから起こる」というよりも、股関節そのものの変化と、周囲の筋肉や動き方の変化が重なって生じる症状と考えることが大切です。
立ち上がり動作で痛みがある時、何が大切なのか
立ち上がりの時に痛みがあると、「できるだけ立たない方がいいのでは」「我慢して頑張るしかないのでは」と思われる方もいらっしゃいます。しかし、まず大切なのは、無理に頑張ることではなく、立ち上がりやすい条件を整えることです。
たとえば、
・低すぎる椅子や柔らかすぎるソファを避ける
・できるだけ座面の前方に移動してから立つ
・足を少し引いて、足の裏に体重を乗せやすくする
・必要に応じて肘掛けや机、手すり等を使い手のサポートを行う
といった工夫は、股関節への負担を減らす助けになります。
特に、座面が低すぎる場合には、立ち上がるために股関節を深く曲げる必要があり、動き始めの痛みにつながりやすくなります。反対に、少し高めの椅子や、手で支えを使える環境では、立ち上がりが楽になることがあります。大切なのは、「痛みがあるのに頑張る」ことではなく、「痛みが出にくい条件をつくる」ことです。
どのような工夫や運動が行われるのか
立ち上がり時の痛みを減らすためには、その場の工夫だけでなく、身体の機能そのものを整えていくことも大切です。変形性関節症の管理では、運動療法は非常に重要な位置づけにあります。海外のガイドラインでも、変形性関節症のある方に対して、その人の状態に合わせた運動療法の実施が勧められています。
立ち上がり動作の痛みがある方では、いきなり難しいことをするのではなく、まず今の状態に合った方法で、立ちやすい身体づくりを進めることが大切です。
たとえば、
・体幹を安定させる練習
・股関節の無理のない範囲での可動域練習
・少し高めの椅子からの立ち上がり練習
・痛みが出にくい足の位置や重心移動の確認
といった内容は、実際の立ち上がり動作につながりやすい練習です。
また、徒手療法については、股関節や膝関節の変形性関節症に対して、運動療法と併用して検討するものとされています。つまり大切なのは、その場で少し楽になることだけではなく、動きやすさを日常生活の中でどう活かしていくかという視点です。
ただ立ち上がりの痛みだけを見ればよいわけではありません
ここで大切なのは、立ち上がり時の痛みそのものだけを切り取って考えないことです。同じように「椅子から立つ時に痛い」と感じていても、その背景は一人ひとり異なります。股関節の可動域制限が主な要因の方もいれば、大殿筋を中心とした筋力低下、体幹深層筋機能の低下、左右への荷重の偏り、活動量の低下などが大きく関係している場合もあります。
そのため、本当に必要なのは「立つ時に痛いから立ち方だけ変える」という単純な対応ではなく、
・股関節がどの方向に動きにくいのか
・どの筋肉が働きにくいのか
・立ち上がりでどのように崩れるのか
などを確認したうえで、原因に合わせて介入することです。
フィジオセンターでの取り組み
フィジオセンターでは、変形性股関節症による立ち上がり時の痛みに対して、単に股関節の硬さや痛みだけを見るのではなく、関節可動域、インナーマッスルを含めた股関節周囲筋の機能、体幹深層筋機能、立ち上がり動作、歩行フォーム、荷重のかけ方まで総合的に評価しています。
そのうえで、
・股関節を含めた関節可動域の確認
・股関節周囲の筋機能や体幹深層筋機能の評価
・立ち上がり動作の詳細な確認
・日常生活につながる反復練習
を通じて、立ち上がりのしやすさだけでなく、一日の中で動きやすい身体づくりを目指します。
「椅子から立つ時に毎回痛い」
「低い場所から立つのがつらい」
「立ち上がった後の一歩目まで不安がある」
そのようなお悩みがある方は、早めに専門的な評価を受けることが大切です。
まとめ
変形性股関節症では、立ち上がり動作の際に股関節の痛みや動かしにくさがみられることがあります。立ち上がり時の痛みは、股関節そのものの変化だけでなく、周囲の筋肉や体幹機能、動き方の影響も重なって生じることがあります。
・立ち上がり時の痛みは、変形性股関節症でみられることがある
・椅子の高さ、足の位置、手の支えなどの工夫で負担を減らせることがある
・運動療法は重要であり、股関節の動きや筋機能、体幹機能まで含めた評価が大切
・その場しのぎではなく、生活の中で立ちやすくなることを目指すことが重要
立ち上がりのたびに不安や痛みを感じる場合は、専門的な評価を受けながら、状態に合った運動や工夫に取り組むことをおすすめします。フィジオセンターでは、医学的根拠に基づき、一人ひとりの状態に合わせたリハビリテーションを提供しております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755