―歩くと疲れやすい、どのくらい運動すればよいか迷う方へ―
パーキンソン病をお持ちの方やご家族から、次のようなご相談を受けることがあります。
・以前より歩く距離が短くなった
・少し動くと疲れやすい
・運動した方がよいと言われたが、何をすればよいかわからない
・速く歩こうとするとすくみ足やふらつきが不安になる
・運動を始めても長く続かない
有酸素運動は、ウォーキング、自転車エルゴメーター、水中歩行、ダンス、ノルディックウォーキングなど、一定時間リズムよく身体を動かし、心肺機能や全身持久力に働きかける運動です。パーキンソン病では、運動緩慢、筋強剛、姿勢反射障害、歩行障害、疲労感などにより活動量が低下しやすく、日常生活の中で「動かない時間」が増えやすくなります。そのため、有酸素運動は単なる体力づくりではなく、歩行能力や生活動作を保つための大切な運動療法の一つと考えられています。
パーキンソン病に有酸素運動が大切とされる理由
近年の理学療法ガイドラインでは、パーキンソン病の方に対して、中等度から高強度の有酸素運動を行うことで、酸素摂取量、運動症状、機能的な動作の改善が期待できるとされています。 また、複数の研究を統合して検討されたシステマティックレビューでは、有酸素運動がバランス、歩行速度、歩幅、運動機能、6分間歩行距離の改善に関連することが報告されています。
ただし、有酸素運動は「パーキンソン病を治す運動」ではありません。大切なのは、病期、体力、転倒リスク、心肺機能、内服薬の効果の高い時間帯、疲労の程度に合わせて、無理なく継続できる形に調整することです。
どのくらい行えばよいのか
米国のパーキンソン病支援団体であるParkinson’s Foundationの運動推奨では、パーキンソン病の方に対して、週150分程度の中等度から高強度の運動が示され、有酸素運動は週3日以上、1回30分以上が目安として挙げられています。
中等度の運動とは、一般的には「少し息が弾むが会話はできる」程度です。ただし、パーキンソン病では自律神経症状により起立性低血圧がみられる場合や、心拍数応答が通常と異なる場合があります。そのため、心拍数だけで強度を判断するのではなく、息切れ、疲労感、ふらつき、姿勢の崩れ、歩行の乱れなどを含めて確認する必要があります。
どのような運動が行われるのか
実際には、状態に応じて次のような方法を組み合わせます。
・ウォーキング
最も取り入れやすい有酸素運動です。歩幅、腕振り、姿勢、方向転換、すくみ足の有無を確認しながら行います。必要に応じて「1、2、1、2」とリズムをつける、目標物を見て歩くなどの外的キューを用いることもあります。
・自転車エルゴメーター
ふらつきやすい方でも、座った姿勢で比較的安全に行いやすい方法です。歩行中の転倒リスクが高い方や、屋外歩行に不安がある方では選択肢になります。
・インターバル形式の運動
一定時間やや強めに動き、その後に軽く動く、または休む方法です。体力や症状に合わせて負荷を調整しやすい一方で、疲労や血圧変動には注意が必要です。
・ダンスやリズム運動
音楽やリズムに合わせて動くことで、歩行や方向転換のきっかけを作りやすい場合があります。楽しさや継続しやすさも重要な要素です。
ただ歩けばよい、というわけではありません
有酸素運動は大切ですが、ただ長く歩けばよいわけではありません。すくみ足がある方が疲れた状態で歩き続けると、転倒リスクが高くなることがあります。姿勢が前かがみになりやすい方では、歩行距離が伸びても腰痛や首のこわばりが強くなる場合があります。また、薬が効いている「ON」の時間帯と、動きにくい「OFF」の時間帯では、安全に行える運動量が異なることもあります。
そのため、有酸素運動を行う際には、歩行能力、バランス機能、筋力、柔軟性、姿勢制御、認知機能、疲労、血圧、生活環境まで含めて確認することが大切です。必要に応じて、筋力トレーニング、バランス練習、柔軟性練習、課題特異的練習、外的キューを組み合わせることで、より生活場面に結びつきやすくなります。
フィジオセンターでの取り組み
フィジオセンターでは、パーキンソン病の方の有酸素運動について、単に「歩く量」だけを見るのではなく、歩行速度、歩幅、姿勢、方向転換、すくみ足、バランス機能、心肺持久力、疲労の出方、内服薬の効果時間、生活環境まで含めて評価します。
そのうえで、
・安全に行える運動強度の設定
・ウォーキングや自転車エルゴメーターなどの選択
・すくみ足やふらつきに対する外的キューの工夫
・筋力、柔軟性、バランス練習との組み合わせ
・生活の中で継続しやすい運動方法の提案
を通して、ご本人に合った有酸素運動の方法を一緒に考えていきます。
まとめ
パーキンソン病における有酸素運動は、全身持久力だけでなく、歩行能力、バランス、運動機能、日常生活の活動性に関わる重要な運動療法の一つです。一方で、すくみ足、起立性低血圧、転倒リスク、疲労、内服薬の効果時間などにより、適切な運動方法は人によって異なります。
「歩いた方がよい」「有酸素運動が大切」とわかっていても、何を、どのくらい、どの時間帯に行えばよいか迷う場合は、早めに専門的な評価を受けることをおすすめします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755