―「洗面所で顔を洗う時に股関節が痛い」は、前かがみの姿勢や足の位置、身体の支え方を工夫することで負担を調整できることがあります―
変形性股関節症をお持ちの方から、洗面所での動作について次のようなご相談を受けることがあります。
・顔を洗う時に前かがみになると股関節が痛い
・洗面台に近づくと股関節の前側や鼠径部がつらくなる
・歯磨き中に長く立っていると股関節がだるくなる
・朝、洗面所で身体を前に倒すと股関節がこわばる
・前かがみの姿勢から身体を起こす時に痛みが出る
・片脚に体重がかかると股関節に不安を感じる
・洗面台に手をつかないと姿勢を保ちにくい
・どのようにかがめば股関節に負担が少ないのかわからない
このようなお悩みがあると、「顔を洗うだけなのに股関節が痛い」「毎朝の洗面動作がつらい」と不安になる方もいらっしゃいます。
洗面所で顔を洗う、歯を磨く、手を洗うといった動作は、日常生活の中では何気ない動作です。しかし、洗面台に向かって前かがみになる時には、股関節の屈曲、骨盤の前傾、腰椎の動き、膝関節の軽い屈曲、足部での支持が組み合わさっています。
そのため、変形性股関節症をお持ちの方では、洗面所での前かがみ動作によって股関節前面や鼠径部に痛みが出ることがあります。
変形性股関節症で前かがみが痛くなる理由
変形性股関節症では、股関節自体の痛み、関節可動域制限、股関節周囲筋の筋機能低下、関節包や筋の柔軟性低下などにより、前かがみの動作が難しくなることがあります。
洗面所で前かがみになる時には、股関節を曲げる動きが必要です。特に、洗面台に離れた状態や洗面台の高さが低い場合には、股関節の屈曲角度が大きくなりやすく、股関節前面や鼠径部に圧迫感や痛みが出る場合があります。
また、股関節のを中心と動きがスムーズに起こりにくい場合には、その分を腰椎や骨盤の動きで補おうとすることがあります。腰を丸めすぎたり、骨盤がうまく前傾しなかったりすると、股関節だけでなく腰部にも負担がかかりやすくなり、腰痛の原因となることもあります。
さらに、洗面所では足をそろえて立つことが多く、身体の向きや体重のかけ方を調整しにくい場合があります。痛みがある側の股関節に体重が偏ると、股関節周囲筋が過剰に働いたり、股関節自体の負担が増えたりする可能性があります。
一律に「前かがみを避ければよい」とは言えません
変形性股関節症だからといって、すべての方に同じ洗面動作の方法が適しているわけではありません。
股関節の痛みの部位、関節可動域制限の程度、股関節周囲筋の筋機能、股関節と骨盤・腰椎の柔軟性との関係性、膝関節や足部の状態、立位バランスなどによって、負担の少ない方法は異なります。
たとえば、股関節を曲げる動作で鼠径部に痛みが出やすい方では、洗面台から離れて立った場合には前かがみになる姿勢が負担になることがあります。一方で、腰部の柔軟性が低下している方では、股関節だけでなく腰椎や骨盤の動かし方を確認する必要があります。
また、膝関節に痛みがある方では、膝を軽く曲げる工夫がかえってつらく感じる場合もあります。そのため、「前かがみにならないようにする」「痛みを我慢して顔を洗う」のではなく、ご自身の身体に合った動作を確認していくことが重要です。
洗面所で前かがみになる時の対応方法
変形性股関節症の方が洗面所で前かがみになる際には、次のような工夫が役立つことがあります。
・洗面台に離れすぎず、少し距離を調整する
・両足をそろえすぎず、軽く前後または左右に開く
・股関節だけで深く曲げようとせず、膝を軽く曲げる
・洗面台に手をついて、上半身の重さを一部支える
・痛みがある側の脚に体重をかけすぎない
・腰を丸めたまま長時間止まらない
・前かがみの姿勢から戻る時は、急に身体を起こさない
・朝のこわばりが強い時は、急に深くかがまない
たとえば、顔を洗う時に洗面台へ離れすぎて立つと、股関節を深く曲げる必要が出て、股関節前面や鼠径部に痛みが出やすくなることがあります。その場合は、足の位置を少し前方に調整し、膝を軽く曲げながら身体を前に倒すことで、股関節の屈曲角度を調整できる場合があります。
また、片手または両手を洗面台に軽くつくことで、上半身の重さを一部支えることができます。これにより、股関節にかかる体重負荷を軽減できる場合があります。
ただし、洗面台に強く寄りかかりすぎると、肩や手首、腰部に負担がかかることがあります。手の支えは、あくまで身体を安定させるための補助として使うことが大切です。
朝の洗面動作で注意したいこと
朝は、睡眠中に長時間同じ姿勢で過ごした後のため、股関節や腰部にこわばりを感じやすい時間帯です。変形性股関節症の方では、起床直後に股関節の動きが硬く、洗面所で前かがみになった時に痛みが出やすいことがあります。
起床後すぐに深くかがむのではなく、まずはゆっくり立ち上がり、数歩歩くことや軽い足踏みをしてから洗面所へ向かうことも一つの方法です。また、洗面台の前に立ったら、すぐに前かがみになるのではなく、足の位置を整え、必要に応じて洗面台に手をついてから動作を始めることをおすすめします。
顔を洗った後に身体を起こす時も、急に上半身を持ち上げるのではなく、足裏で床を支え、手の支えを使いながらゆっくり姿勢を戻すようにすると、股関節や腰部への負担を調整しやすくなります。
フィジオセンターでの取り組み
フィジオセンターでは、変形性股関節症の方に対して、単に「前かがみを避けましょう」とお伝えするのではなく、実際の洗面動作、股関節の関節可動域、股関節周囲筋の筋機能、骨盤や腰椎の可動性、膝関節や足部の状態、立位バランスなどを評価することを大切にしています。
「洗面所で前かがみになると股関節が痛い」
「朝の洗顔で鼠径部がつらい」
「歯磨き中に股関節がだるくなる」
「日常生活の何気ない動作で股関節に不安がある」
このようなお悩みがある場合は、股関節だけを見るのではなく、立つ、かがむ、支える、身体を起こすという一連の動作の中で、どこに負担が集中しているのかを確認することが重要です。
股関節の状態に加えて、腰部、骨盤、膝関節、足部の使い方を確認することで、ご自身の身体に合った洗面動作の方法を検討していきます。
まとめ
変形性股関節症をお持ちの方にとって、洗面所で前かがみになる動作は股関節に負担がかかりやすい場面の一つです。
・前かがみでは股関節の屈曲が必要になる
・股関節の可動域制限があると鼠径部や股関節前面に痛みが出ることがある
・洗面台との距離、足の位置、膝の使い方によって負担を調整できる場合がある
・手の支えを使うことで、股関節への体重負荷を軽減できることがある
・股関節だけでなく、腰部、骨盤、膝関節、足部の状態も関係する
日常生活の中で「洗面所で前かがみになると股関節が痛い」「朝の洗顔がつらい」「歯磨き中に股関節が不安定に感じる」といったお悩みがある場合は、我慢しながら動作を続けるのではなく、専門的な評価を受けながら、ご自身の状態に合った対応方法を確認していくことをおすすめします。
変形性股関節症をお持ちで、洗面所での前かがみ動作や日常生活での股関節の痛みについてご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755