―「浴槽をまたぐ時に股関節が痛い」は、足の上げ方、体重のかけ方、手すりや浴槽縁の使い方を工夫することで負担を調整できることがあります―
変形性股関節症をお持ちの方から、入浴時の動作について次のようなご相談を受けることがあります。
・浴槽をまたぐ時に股関節が痛い
・足を上げると鼠径部や股関節の前側がつらい
・浴槽に入る時よりも出る時の方が不安
・片脚立ちになるとふらつく
・浴槽の縁を越える時に足が引っかかりそうで怖い
・お風呂場で滑りそうで力が入ってしまう
・手すりがないと浴槽をまたぐ動作が不安
・どちらの足から浴槽に入ればよいかわからない
このようなお悩みがあると、「お風呂に入るだけなのに股関節が痛い」「転びそうで入浴が怖い」と感じる方もいらっしゃいます。
入浴は、身体を清潔に保つだけでなく、筋肉の緊張を和らげたり、リラックスしたりする大切な生活動作です。しかし、浴槽をまたぐ動作では、股関節の屈曲、外転や内転、骨盤や腰椎の動き、片脚立位でのバランス、足部での支持が必要になります。
そのため、変形性股関節症をお持ちの方では、浴槽をまたぐ際に股関節前面や鼠径部に痛みが出たり、足を上げにくく感じたりすることがあります。
変形性股関節症で浴槽をまたぐ動作がつらくなる理由
変形性股関節症では、股関節周辺の痛み、関節可動域制限、股関節周囲筋の筋機能低下、関節包や筋の柔軟性低下などにより、足を大きく上げる動作が難しくなることがあります。
浴槽をまたぐ時には、浴槽の縁を越えるために股関節を曲げ、大腿部から横へ動かし、さらに身体の重心を片脚で支える必要があります。特に浴槽の縁が高い場合や、足元が滑りやすく不安定な場合には、股関節の屈曲角度や外転方向への動きが大きくなり、鼠径部や股関節前面に痛みが出やすくなることがあります。
また、またぐ動作では一時的に片脚立ちに近い状態になります。痛みがある側の足で身体を支える場合、股関節外転筋を中心とした股関節周囲筋に負担がかかりやすくなります。反対に、痛みがある側の脚を持ち上げる場合には、股関節屈筋群の働きや足を持ち上げるための、関節可動域が必要になります。
さらに浴室は床が濡れているため、転倒への不安から身体に余分な力が入りやすい環境です。身体が緊張すると、股関節や腰部の動きが硬くなり、またぐ動作がさらにぎこちなくなる場合があります。
その方の股関節の状態に合わせた、動き方が大切です
変形性股関節症だからといって、すべての方に同じ浴槽の入り方が適しているわけではありません。
股関節の痛みの部位、関節可動域制限の程度、股関節周囲筋の筋機能、片脚立位でのバランス、浴槽の高さ、手すりの有無、浴室の広さなどによって、負担の少ない方法は異なります。
たとえば、痛みがある側の脚を高く上げると鼠径部に痛みが出る方では、その脚を無理に先に浴槽へ入れるとつらく感じることがあります。一方で、痛みがある側の脚で身体を支えることが苦手な方では、反対側の脚を先に入れる時に不安定になる場合があります。
そのため、「必ず痛い方から入る」「必ず良い方から入る」と決めつけるのではなく、ご自身の股関節の状態と浴室環境に合わせて確認することが大切です。
入浴で浴槽をまたぐ時の対応方法
変形性股関節症の方が浴槽をまたぐ際には、次のような工夫が役立つことがあります。
・浴槽の縁を急いでまたがない
・手すりや浴槽の縁を使って身体を安定させる
・片脚に体重をかけすぎないようにする
・足だけで持ち上げようとせず、骨盤や体幹の向きも調整する
・足元が滑らないように浴室環境を整える
・浴槽の出入りでは、必要に応じてシャワーチェアを使う
・浴槽内外の段差が大きい場合は、浴槽台や踏み台を検討する
・痛みが強い時は無理にまたがず、入浴方法を見直す
たとえば、浴槽をまたぐ時に足だけを高く持ち上げようとすると、股関節前面に負担がかかりやすくなります。その場合は、身体の向きを少し浴槽側へ向け、手すりや浴槽の縁で身体を支えながら、ゆっくり脚を移動させることで股関節への負担を調整できることがあります。
また、浴槽に入る時と出る時では、必要な動きや不安感が異なることがあります。特に浴槽から出る時は、身体が温まっている一方で、床が濡れていて滑りやすく、立ち上がりやまたぎ動作が不安定になりやすい場面です。急いで出ようとせず、足の位置を確認してから動くことが大切です。
浴室環境で注意したいこと
入浴動作では、股関節の状態だけでなく、浴室環境も大きく関係します。
手すりがない場合、浴槽の縁や壁に頼って身体を支えようとすることがあります。しかし、濡れた浴槽の縁や壁は滑りやすく、十分な支持にならない場合があります。必要に応じて、設置型の手すり、滑り止めマット、シャワーチェア、浴槽台などの福祉用具を検討することも重要です。
フィジオセンターでの取り組み
フィジオセンターでは、変形性股関節症の方に対して、単に「浴槽をまたがないようにしましょう」とお伝えするのではなく、股関節の関節可動域制限、股関節周囲筋の筋機能、骨盤や腰椎の可動性、片脚立位でのバランス、膝関節や足部の状態、実際の生活動作を評価することを大切にしています。
「浴槽をまたぐ時に股関節が痛い」
「入浴時に足が上がりにくい」
「お風呂から出る時にふらつく」
「転倒しそうで入浴が不安」
このようなお悩みがある場合は、股関節だけを見るのではなく、立つ、支える、脚を上げる、またぐ、体重を移すという一連の動作の中で、どこに負担が集中しているのかを確認することが重要です。
まとめ
変形性股関節症をお持ちの方にとって、浴槽をまたぐ動作は股関節に負担がかかりやすく、転倒への不安も生じやすい場面です。
・浴槽をまたぐ時には股関節の屈曲や外転、片脚立位でのバランスが必要になる
・股関節の関節可動域制限があると、鼠径部や股関節前面に痛みが出ることがある
・痛みがある側の足を上げる場合と、支える場合では負担のかかり方が異なる
・手すり、シャワーチェア、滑り止めマットなどで安全性を高められる場合がある
・股関節だけでなく、骨盤、腰椎、膝関節、足部、浴室環境も関係する
日常生活の中で「浴槽をまたぐ時に股関節が痛い」「入浴時に足が上がりにくい」「お風呂場でふらつく」といったお悩みがある場合は、我慢しながら動作を続けるのではなく、専門的な評価を受けながら、ご自身の状態に合った対応方法を確認していくことをおすすめします。
変形性股関節症をお持ちで、入浴動作や浴槽をまたぐ時の股関節の痛みについてご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755