変形性股関節症をお持ちの方から、「玄関で靴を履くときに股関節が痛い」「靴下や靴に手が届きにくい」「立ったまま靴を履こうとするとふらつく」といったご相談をいただくことがあります。
玄関での靴の脱ぎ履きは、日常生活の中では何気ない動作ですが、股関節を深く曲げたり、脚を外に開いたり、身体を前に倒したりする動きが含まれます。そのため、変形性股関節症をお持ちの方では、痛みや可動域制限により、負担を感じやすい場面の一つです。
今回は、変形性股関節症の方が玄関で靴を脱ぎ履きするときの身体の使い方について解説します。
変形性股関節症で靴の脱ぎ履きがつらくなる理由
股関節は、骨盤側の寛骨臼と大腿骨頭からなる関節です。変形性股関節症では、関節軟骨のすり減りや関節自体の変形により、痛みや動かしにくさが生じます。
靴を履く動作では、次のような動きが必要になります。
・股関節を深く曲げる
・膝を胸に近づける
・脚を外側に開く
・身体を前に倒す
・片脚立ちでバランスを取る
・玄関の段差で姿勢を変える
特に、足を反対側の膝の上に乗せて靴を履こうとする動作では、股関節の屈曲・外転・外旋が必要になります。股関節の可動域が制限されている方では、この姿勢を無理に取ろうとすると、股関節の前面や鼠径部に痛みが出ることがあります。
また、立ったまま靴を履こうとすると、片脚に体重が集中しやすくなります。痛い側の脚で支える時間が長くなると、股関節まわりの筋肉に負担がかかり、痛みやふらつきにつながることがあります。
靴を履くときは、座って行うことが基本
変形性股関節症をお持ちの方では、靴を履くときに無理に立ったまま行うよりも、椅子や玄関用のベンチに座って行うことがおすすめです。
座ることで、片脚立ちによる股関節への負担を減らし、姿勢を安定させやすくなります。特に、痛みがある側の脚で身体を支えながら靴を履く動作は、股関節への負担が大きくなりやすいため注意が必要です。
靴の方を身体に近づける
靴を履くときは、背中を大きく丸めて足先に手を伸ばすのではなく、靴の方を身体に近づけるようにすると、股関節を深く曲げすぎずに済みます。
椅子に座る位置は、浅く座りすぎず、骨盤が安定する位置を選びましょう。足を無理に引き寄せるのではなく、痛みの少ない範囲で靴に足を入れることが大切です。
足を無理に引き寄せすぎない
靴を履くときに、足を強く引き寄せて股関節を深く曲げると、股関節の前面が詰まるように感じることがあります。
その場合は、足を反対側の膝に乗せようとするのではなく、足を少し前に出した状態で靴を履く方法を試してみましょう。膝を外に大きく倒す姿勢がつらい方では、股関節を無理に開かないことが大切です。
靴を履くときは、次の点を意識してみてください。
・身体を急に前へ倒しすぎない
・膝を無理に外へ開かない
・足先だけを強く引っ張らない
・股関節をねじるような姿勢を避ける
・痛みが出る角度で動作を続けない
股関節の動きだけで何とかしようとせず、体幹や骨盤の向きを少し変えながら、痛みの少ない位置を探すことが大切です。
長めの靴べらを活用する
玄関での靴の脱ぎ履きでは、長めの靴べらが役立ちます。
短い靴べらでは、身体を深く前に倒す必要があります。一方、長めの靴べらを使うと、股関節を大きく曲げなくても靴に足を入れやすくなります。
立ったまま使う場合でも、壁や手すりにつかまりながら行うことで、ふらつきを減らしやすくなります。ただし、不安定さがある場合や痛みが強い場合は、無理をせず座って行いましょう。
靴の選び方も動作に影響する
靴そのものの形も、脱ぎ履きのしやすさに関係します。
かかとがつぶれやすい靴や、紐を毎回強く結ぶ必要がある靴では、履くときに時間がかかり、前かがみ姿勢が長くなります。股関節に痛みがある方では、履き口が広く、足を入れやすい靴を選ぶことも工夫の一つです。
一方で、脱ぎ履きしやすいからといって、かかとが不安定な靴を選ぶと、歩くときに股関節や膝関節、足部に負担がかかることがあります。かかと部分がある程度しっかりしており、歩行時に足が靴の中で大きく動かないものを選ぶことが大切です。
玄関まわりの環境を整える
靴の脱ぎ履きがつらい場合は、身体の使い方だけでなく、玄関まわりの環境を整えることも重要です。
たとえば、玄関に椅子やベンチを置くことで、座って安全に靴を履きやすくなります。また、手すりや壁に手を添えられる位置で動作を行うと、立ち上がりや方向転換の際の不安定さを減らしやすくなります。
玄関の段差で身体をひねりながら靴を履くと、股関節や腰部に負担がかかることがあります。足だけを動かすのではなく、骨盤と体幹を一緒に向けるように意識すると、股関節のねじれを減らしやすくなります。
こんな場合は専門家に相談を
靴の脱ぎ履きで痛みが強い場合や、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関や専門家への相談が必要です。
・靴下や靴を履く動作が急に難しくなった
・股関節の前面や鼠径部の痛みが強い
・歩き始めの痛みが増えている
・玄関でふらつくことが増えた
・階段や外出が不安になっている
・しびれや強い脱力感を伴う
変形性股関節症では、股関節の状態だけでなく、骨盤や体幹、膝関節、足部の使い方も日常動作に影響します。痛みを我慢しながら同じ動作を続けるのではなく、負担の少ない方法を見つけていくことが大切です。
まとめ
変形性股関節症で玄関での靴の脱ぎ履きがつらい場合は、股関節を無理に深く曲げたり、脚を強くひねったりしないことが大切です。
・靴を履くときは、できるだけ椅子やベンチに座って行う。
・足を無理に引き寄せず、靴を身体に近づける。
・長めの靴べらを使い、前かがみ姿勢を減らす。
・玄関まわりに椅子や手すりを準備し、安全に動作できる環境を整える。
このような小さな工夫で、股関節への負担を減らしながら、靴の脱ぎ履きを行いやすくなります。
ただし、痛みの出方や動きやすい姿勢は一人ひとり異なります。フィジオセンターでは、股関節の状態や歩き方、玄関での動作、日常生活で困っている場面を確認しながら、その方に合った身体の使い方を一緒に考えていきます。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
LSVT® BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
フットコントロールトレーナー LICENSE B
津田 泰志
フィジオセンター
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