変形性股関節症をお持ちのクライアントの方から、「座っている時に股関節が痛くなる」という相談を受けることがあります。歩行時の痛みについてはよく知られていますが、座位姿勢でも痛みを感じるケースは少なくありません。この座位時の痛みは、日常生活に大きな支障をきたす要因となるため、適切に対処することが大切です。本記事では、座位時に股関節が痛む理由について詳しく解説し、改善方法についてもご紹介します。
座位(座り)姿勢での痛みの原因については、以下の内容が考えられます。
1つ目は、 関節内圧(股関節の関節包の内側)の上昇です。座位姿勢、特に深く腰掛ける姿勢では股関節が90度以上屈曲し、関節内圧が上昇します。過去の研究では、股関節屈曲90度以上で関節内圧が有意に上昇し、特に変形性股関節症をお持ちの方では関節内圧がさらに高まりやすいことが示されています。この関節内圧が上昇する事により関節包や滑膜が圧迫され、疼痛受容器(痛みを感じるセンサー)が刺激されることで痛みが発生すると考えられます。
2つ目は、関節唇損傷もしくは炎症です。変形性股関節症をお持ちの方々では関節唇損傷が多く発生します。先行研究の中では、股関節症患者の約90%に関節唇損傷が認められると報告しています。関節唇は股関節の安定性に関わる組織であり、損傷してしまうと屈曲位で捻れや圧迫を受けやすく、座位時に痛みを誘発すると考えられています。
3つ目は、坐骨部位への圧迫です。上記2つとは、痛みを感じる組織に違いがあります。座位では骨盤の下部である坐骨に圧力が集中します。とくに、変形性股関節症をお持ちの方では不良姿勢により、坐骨周囲の軟部組織が過度に圧迫されやすく、坐骨部位の腱や筋膜に対する持続的な圧迫が殿部痛を引き起こすことがあります。
フィジオセンターではこのような場合、実際の座位姿勢や痛みを出している組織を確認して、以下の工夫を提案しています。
1つ目の工夫は、 座面を高くして股関節屈曲を90度以内に保つ事です。股関節屈曲角度が90度を超えると関節内圧が上昇しやすく痛みに繋がりやすいため、座面の高さを調整して股関節屈曲を90度以内に抑えることで、関節内圧の上昇を予防します。
2つ目の工夫は、適切なクッションを活用し坐骨部位の圧迫を減らす事です。坐骨部分に適切な座圧を分散するクッションを敷くことで圧力が分散し、殿部や坐骨周囲の痛みを軽減する事が期待できます。ジェルクッションなどの使用を検討する事もよい方法です。
3つ目の工夫は、20~30分ごとに立ち上がり体を動かす事を取り入れる事です。長時間座りっぱなしの姿勢はそれだけで痛みを引き起こす理由となるため、20~30分に1回程度は立ち上がって、少し歩く事や体を動かす事で血流が改善し、股関節の負担を軽減できます。
当センターでは、保険外・自費でのリハビリテーションサービスを提供しております。変形性股関節症をお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方がに対して、変形性股関節症をお持ちの方にとって、より良い股関節の管理方法について日常生活での股関節の負担の少ない姿勢や動き方などを併せてご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト
津田 泰志