変形性股関節症の痛みと脳との関係について

変形性股関節症の痛みと脳との関係について

□はじめに
変形性股関節症をお持ちの方で、最もお困りの症状が「痛み」です。しかし、画像所見では関節の変形がそれほど進んでいないのに、「強い痛みが続いている…」という場合をお伺いする事があります。このような原因の1つとして考えられる研究を、本日のブログではご紹介いたします。

今回は、カナダとオーストラリアの研究チームが行った最新の脳科学研究をご紹介します。この研究は、変形性股関節症の「痛みの感じ方」が脳のつながり(脳内ネットワーク)と関係していることを明らかにしました。

□痛みは関節だけの問題ではない可能性
痛みの原因は一般的に「関節の炎症」や「骨の変形」などが注目されますが、実は脳でも「痛みの情報処理」が行われています。変形性関節症が進むと、関節の問題だけでなく、脳や神経系にも“痛みに敏感になる変化”が起こることがわかってきました。これを「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」と呼びます。

□研究の概要
この研究では、変形性股関節症の患者30名と、痛みのない健康な方10名を対象に、「fMRI(機能的MRI)」という方法で脳の活動を調べました。fMRIでは、体を動かしていない“安静状態”でも、脳のどの部位がつながって活動しているかを見ることができます。さらに、股関節に負担がかかる運動(階段昇降やスクワット)を行った直後の脳の変化も比較しました。

□主な研究結果としては、以下の点が挙げられます

1つ目は、変形性股関節症の人は「痛みを感じやすい脳のつながり」が強い事です。感覚を処理する二次体性感覚野(S2)と、痛みの感情的側面を処理する左後部島皮質(left posterior insula)とのつながりが強くなっていました。特に「左側の島皮質」に強い活動が見られ、慢性的な痛みの存在や「不快」「嫌悪」などの感情的反応とも関係している可能性があります。

2つ目は、 痛みの刺激によって脳の“痛みネットワーク”がさらに活性化する事です。股関節に負担をかけた直後、視床(thalamus)や中脳中心灰白質(periaqueductal gray: PAG)といった「痛み抑制や感情調整に関わる脳領域」のつながりが強くなりました。これは、脳が“痛みを抑制しようとする反応”がみられている可能性があります。

□臨床的な解釈とフィジオセンターでの対応

1つ目は、「脳が安心する身体の使い方」を身につける事です。股関節に負担の少ない、 正しい動作指導や股関節に加わるメカニカルストレスがを軽減する働きかけを行う事で、脳の過剰な痛み反応を和らげることを目指します。

2つ目は、「痛みの変化」を記録して、自分の痛みの傾向を知る事です。スマートフォンのアプリの万歩計や メモ機能を使用して、「どのくらいの歩くと痛みが出やすいのか?どのタイミングで痛みが出やすいか?」などを把握することで、脳の“過剰な反応”を防げます。

□まとめ

当センターでは変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

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