フィジオセンターでは、変形性股関節症や変形性膝関節症などの症状に悩む方へ向けて、定期的にブログにて情報発信を行っています。今回は、変形性股関節症をお持ちの方々の、進行と歩行の指標について解説します。
今回は、フランスの研究チームによる、3年間の追跡調査に基づいた注目の研究をご紹介します。この研究では、対象者の方が「将来どのように股関節機能が低下していくのか」という経過を分類し、それを予測する“歩行のパラメータ”を明らかにしました。
□研究の概要
Rigletら(2025)の研究では、変形性股関節症と診断された124名を対象に、3年間にわたる経過観察を行いました。評価には、股関節疾患に特化した自己記入式の質問票「HOOS(Hip disability and Osteoarthritis Outcome Score【股関節の痛み・機能・生活の質などを評価する質問票】)」を使用。痛み・こわばり・日常動作・スポーツ活動・生活の質という5つの側面を半年ごとに評価しました。
加えて、初回評価時には、3次元モーションキャプチャによる歩行分析【関節の動きや歩行の特徴を詳細に計測する方法】も実施され、歩行速度や股関節伸展角度などの運動指標が記録されました。
□研究の結果は以下のような内容でした。
観察研究の結果から、対象者の方を進行群と非進行群に分類しました。
・進行群:機能低下が速く、3年以内に人工股関節置換術に至る割合が高い。
・非進行群:症状が比較的安定し、機能低下が緩やか。
※特に進行群の対象者では、3年以内に60%以上が人工股関節置換術を受けていました。
・歩行速度が「痛み・こわばり」の進行を予測する事が指摘されました。初回評価時に歩行速度が1.0m/s未満の方は、将来「痛み」や「こわばり」の進行が高確率で起こることが示されました。これは、歩行速度が関節機能の“総合的なバロメーター”として活用できることを示しています。
・股関節の伸展角度が「生活の質」や「運動機能」の指標になる事が指摘されています。歩行中の股関節の最大伸展角度【脚を後ろに引く動きの最大値】が10°未満だった方は、今後「スポーツ・余暇活動」や「生活の質」の低下リスクが高いことが示されました。股関節の伸展が不十分なことで、下肢全体の推進力や活動範囲に制限が出ることが要因と考えられます。
□フィジオセンターでの臨床場面での応用としては以下の内容が考えれます。
1つ目は、進行予測に基づいたリスク評価です。初回評価時に歩行速度を計測する事や股関節伸展角度を目視で確認する事で、将来的な機能低下のリスクを予測できます。当センターではこれらの指標を取り入れ、長期的な視点に立った介入やアプローチを行います。
2つ目は、歩行速度を保つエクササイズの実施です。基本的に、変形性股関節症の症状をお持ちの方々は歩行速度が低下しやすい傾向をお持ちです。そのため、歩行の推進力を得るために、股関節に限らず、歩行の推進力に関係の深い、足部や足指についてもエクササイズを実施します。
3つ目は、股関節の伸展角度を引き出す柔軟性・関節可動域のエクササイズです。股関節の伸展可動域の維持・改善を目指し、短縮しやすい、腸腰筋・大腿直筋のストレッチや、骨盤の動きの改善に焦点を当てた運動指導を行います。
□まとめ
本研究は、変形性股関節症の進行を「痛み」や「画像所見」だけではなく、歩行という機能的な視点から予測できることを実証した報告です。
当センターでは、変形性関節症・変形性股関節症をお持ちの方で、外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、最適と考えられる施術・コンディショニングをご提案しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP) / マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志