パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患であり、時間経過とともに症状の現れ方や生活への影響が変化していきます。そのため、現在どの段階にあるのかを正しく理解することは、適切な治療方針やリハビリテーションを選択する上で非常に重要です。
臨床現場で広く用いられている指標の一つが、「ヤールの重症度分類(Hoehn & Yahr分類)」です。今回のブログでは、ヤール分類の概要を整理した上で、それぞれの段階における身体機能の特徴と、リハビリテーションの視点について解説します。
ヤールの重症度分類とは何か
ヤールの重症度分類は、1967年にHoehnとYahrによって提唱された、パーキンソン病の運動症状を中心に病期を5段階で評価する分類法です。
この分類は主に、
・症状の左右差
・姿勢反射障害の有無
・歩行・立位保持能力
といった点に基づいて評価され、疾患の進行度を大まかに把握するための指標として活用されています。
ヤール分類 各ステージの特徴
ヤールⅠ度
運動症状は片側のみに限局しています。安静時振戦や筋強剛、動作のぎこちなさなどが出現しますが、日常生活への影響は比較的軽度です。
この段階では、
・姿勢・歩行はほぼ正常
・本人が違和感を自覚する程度
であることが多く、運動習慣の確立と予防的介入が非常に重要になります。
ヤールⅡ度
症状が両側性になりますが、姿勢反射障害はまだ明確ではありません。
・動作緩慢が目立つ
・寝返りや立ち上がりに時間がかかる
・歩幅の減少、腕振り低下
といった変化が出始め、日常生活動作に軽度の支障が生じる時期です。
この時期から、課題特異的な運動療法や大きな動作を意識したトレーニングが有効となります。
ヤールⅢ度
姿勢反射障害が出現し、転倒リスクが明確に高まる段階です。
ただし、介助なしで歩行や立位保持は可能であることが特徴です。
・バランス能力の低下
・方向転換時の不安定性
・すくみ足の出現
などが顕著になり、生活範囲が狭くなりやすくなります。
この段階では、
・バランストレーニング
・歩行・方向転換練習
・デュアルタスク課題
などを通じて、転倒予防と活動量維持を図ることが重要です。
ヤールⅣ度
重度の運動障害がみられ、日常生活に部分的な介助が必要となります。
・立ち上がりや歩行が困難
・動作の著しい緩慢化
・姿勢保持の不安定性
が顕著となります。
この時期のリハビリテーションでは、
・安全な移動能力の確保
・廃用症候群の予防・
・残存機能の最大活用
が中心となります。
ヤールⅤ度
介助なしでの立位・歩行が困難となり、車椅子やベッド上での生活が主体となる段階です。
・重度の姿勢反射障害
・全身の筋固縮
・自発運動の低下
がみられ、介護負担も大きくなります。
この段階では、
・関節可動域維持
・呼吸・嚥下機能への配慮
・生活の質(QOL)の維持
を目的としたリハビリテーションが重要となります。
ヤール分類とリハビリテーションの関係
ヤール分類は、「進行を決めつけるための指標」ではありません。
むしろ、
・現在の身体機能を客観的に把握する
・適切な運動負荷・課題を選択する
・将来起こり得る問題を予測し、先回りして介入する
ための臨床的な道しるべと捉えることが重要です。
適切にデザインされた運動療法は、ヤール分類の進行速度を緩やかにし、生活の自立度を長く保つ可能性が示唆されています。
フィジオセンターにおける考え方
フィジオセンターでは、ヤールの重症度分類を一つの参考指標としながら、実際の動作能力・生活背景・症状特性を総合的に評価した上でリハビリテーションを提供しています。
LSVT® BIG、トレッドミル歩行・バランストレーニング、デュアルタスク課題などを、病期に応じて調整し、「今できること」だけでなく「これから先も続けられる身体機能」を見据えた介入を行っています。
まとめ
ヤールの重症度分類は、パーキンソン病の進行を理解する上で非常に有用な指標です。
しかし、本当に重要なのは、病期に応じた適切な運動と専門的なサポートを受け続けることです。
パーキンソン病とともに生活する中で、運動や動作に不安を感じている方、
専門的なリハビリテーションをご希望の方は、ぜひフィジオセンターまでご相談ください。
理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志
フィジオセンター
TEL:03-6402-7755