パーキンソン病の姿勢反射障害と運動療法の重要性

パーキンソン病の姿勢反射障害と運動療法の重要性

パーキンソン病をお持ちのクライアント様やご家族様から、お問い合わせを頂く内容の一つが「転倒」への不安です。「振り返った瞬間にふらつく」「誰かとぶつかりそうになった時、足が出ない」「以前のように、とっさにバランスを直せない」

こうした症状は、パーキンソン病の4大症状の一つである「姿勢反射障害」に影響を受けていると考えれるケースが少なくありません。 手足の震えや筋肉の固さ(固縮)と異なり、姿勢反射障害は薬物療法と運動療法の組み合わせが重要になります。

今回のブログではなぜ姿勢反射障害が起こるのか、そのメカニズムを紐解きながら転倒を防ぎ、活動的な生活を維持するためのリハビリテーション戦略について詳しく解説します。

1. 姿勢反射障害とは何か?

私たちは普段、無意識のうちに重心をコントロールしています。例えば、電車が急ブレーキをかけた時や、強風に煽られた時、意識しなくてもとっさに足を踏み出し、身体を垂直に保とうとします。これを「立ち直り反射」や「姿勢反射」と呼びます。

パーキンソン病における姿勢反射障害とは、この「とっさのバランス能力」が低下してしまう状態を指します。

ヤール分類との関係

前回のブログでご紹介した「ヤールの重症度分類」において、姿勢反射障害が明確に現れ始めるのは「ヤールⅢ度」からです。 Ⅰ度・Ⅱ度の段階では目立たなかったバランスの低下が、Ⅲ度になると顕在化し、これまで無意識に行えていた動作に「注意」が必要になります。

2. なぜ「転びやすく」なるのか?

パーキンソン病の方がバランスを崩しやすい背景には、単に筋力が低下しているだけでなく、脳の情報処理と運動指令の問題が関わっています。

① 予期的姿勢調節の低下

私たちは腕を上げたり、一歩踏み出したりする際、その動作によってバランスが崩れないよう、「動作を起こす直前」に無意識に姿勢筋を先行して働かせています。これを予期的姿勢調節といいます。 パーキンソン病ではこの事前の準備機能が低下するため、動作を始めた瞬間にバランスを崩しやすくなります。

② 感覚統合の問題

バランスを保つには、「視覚」「前庭覚(平衡感覚)」「体性感覚(足裏の感覚など)」の情報を統合する必要があります。パーキンソン病の方は、自分の身体がどれくらい傾いているかを感知する能力(身体図式)にズレが生じていることがあり、「自分では真っ直ぐ立っているつもりでも、実は傾いている」という現象が起こります。

3. 薬物療法と運動療法の組み合わせの重要性

非常に重要な点として、L-ドパなどの抗パーキンソン病薬は、動作緩慢や固縮には高い効果を発揮しますが、姿勢反射障害に対しては、運動療法との組み合わせの重要性が示唆されています。

そのため、内服で動きやすい身体のベースを作り、その上で「転ばないためのバランスエクササイズの実施」が重要になります。

4. 科学的根拠に基づいた運動療法のアプローチ

では、具体的にどのようなリハビリテーションが有効なのでしょうか。単に歩くだけ、筋トレをするだけでは、姿勢反射障害の改善には不十分である可能性があります。 フィジオセンターでは、以下の3つの視点を重視したトレーニングを提供しています。

① ステッピング・トレーニング(反応課題)

バランスを崩した時に、「とっさに一歩足が出る」反応を引き出す練習です。 前後左右、あらゆる方向からの外乱刺激に対して、素早く大きく足を踏み出す練習を反復します。最初は視覚的な合図(床のマーカーなど)を使って意識的に行い、徐々に合図なしでも反応できるように難易度を調整します。

② デュアルタスク・トレーニング(二重課題)

日常生活での転倒は、歩きながら話をしたり、考え事をしたりしている時に起こります。 これに対応するため、「足踏みをしながら計算をする」「バランスを保ちながらしりとりをする」といった、運動課題と認知課題を同時に行うトレーニングを取り入れます。これにより、複雑な環境下での適応能力を高めます。

③ 大きな動作の再獲得(LSVT® BIGの概念)

パーキンソン病特有の「動作の縮小」は、バランス能力を低下させます。歩幅が狭くなると支持基底面(体を支える面積)が狭くなり、不安定になるからです。 大きく腕を振り、大きく足を踏み出すトレーニングを行うことで、身体の可動範囲を広げ、安定した姿勢制御を保ちます。

5. フィジオセンターにおける実践

フィジオセンターでは、姿勢反射障害に対するアプローチとして、安全性を確保した上でバランスエクササイズのサポートしています。

客観的なバランス評価

国際的・国内で用いられる事の多い、バランス機能の評価を行い、現在のバランス能力を数値化します。「なんとなくふらつく」を可視化することで、どの感覚(視覚・前庭覚・体性感覚)に頼っているのか、どの方向への反応が弱いのかを可能な限り特定します。

安全な環境でのチャレンジ

姿勢反射のトレーニングは、あえてバランスを崩すような課題を行うため、転倒リスクを伴います。当センターでは、レッドコードや・状況によって免荷トレッドミルを使用しし、転倒の恐怖心を取り除いた状態で、バランスエクササイズにチャレンジします。

まとめ

姿勢反射障害は進行性の症状ではありますが、適切なトレーニングによって維持・改善が可能であることが多くの臨床研究で証明されています。「最近、転ぶのが怖くて外出を控えている」 「足がすくんで、最初の一歩が出ない」

そのような悩みをお持ちの方は、活動量が低下して全身的な筋力の低下が進んでしまう前に、ぜひ専門的な介入をご検討ください。フィジオセンターでは、お一人おひとりの身体機能と生活スタイルに合わせた、オーダーメイドのリハビリテーションプログラムをご提案いたします。



理学療法士/保健医療科学修士号/認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT® BIG 認定セラピスト
日本体外衝撃波医学会認定 運動器体外衝撃波治療施術者
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

フィジオセンター
TEL:03-6402-7755

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