変形性股関節症における寛骨臼の形態と荷重分散機能

変形性股関節症における寛骨臼の形態と荷重分散機能


変形性股関節症は、股関節軟骨の変性や骨形態の変化により、疼痛・可動域制限・歩行障害を引き起こす進行性疾患です。その発症や進行には、寛骨臼の形態と股関節における荷重分散機能が密接に関与しています。近年、三次元画像解析や動作解析技術の進歩により、寛骨臼の形態異常が関節内応力に与える影響がより明らかになってきています。

本日のブログでは、寛骨臼の形態と荷重分散機能の基本的な役割、形態異常による力学的影響、そして運動療法で行われるアプローチに解説します。

・寛骨臼の形態と荷重分散機能の役割

寛骨臼は骨盤にある半球状の関節窩で、大腿骨頭を包み込み、股関節の安定性を確保するとともに、立位・歩行時の体重を効率よく分散させる役割を担っています。正常な寛骨臼では、大腿骨頭の被覆率が十分に保たれており、荷重は関節面全体に均等に伝わることで、軟骨や関節唇にかかる局所的なストレスが抑制されます。

また、寛骨臼縁に付着する関節唇は、関節内圧を保持して大腿骨頭を安定させ、さらに関節面積を広げる働きがあり、荷重分散において重要な役割を果たしています。

・寛骨臼形態の異常と力学的影響

寛骨臼の形態異常は、変形性股関節症の発症リスクや進行速度に大きく影響します。代表的な形態異常には以下のようなものがあります。

1つ目は、寛骨臼形成不全(発育性股関節形成不全)です。寛骨臼の被覆が不十分な状態を指し、大腿骨頭の上外側への荷重集中を招きます。骨臼形成不全を有する対象者は正常例と比較して股関節接触面積が約30%低下し、局所的な接触圧が有意に上昇することが報告されています。さらに、歩行解析の結果から、寛骨臼形成不全症例では立脚期の股関節内圧のピークも高まることが示されました。これにより、軟骨変性や関節唇損傷が早期に進行するリスクが高まると考えられています。

2つ目は、大腿骨寛骨臼インピンジメントのPincer型です。一方、寛骨臼の被覆が過剰な場合は、大腿骨頚部と寛骨臼縁の衝突を引き起こします。海外の一部の研究では、過被覆症例の約84%で関節唇損傷が発生していたと報告しており、過剰な被覆も変形性股関節症の進行に関与することが示唆されています。過被覆による衝突は屈曲・内旋動作で生じやすく、日常生活における立ち上がりやしゃがみ込み動作で痛みが誘発されることもあります。

・荷重分散機能低下による症状

寛骨臼形態の異常によって荷重が均等に分散されないと、関節の特定部位に過剰な応力が集中し、以下のような症状を引き起こします。歩行時や立ち上がり時の股関節の痛み、股関節の可動域制限、長時間の立位や歩行時の疲労感などが主な症状であり、これらの症状は進行とともに日常生活動作(ADL)の制限に直結し、QOL低下を招きます。そのため、出来るだけ早期に、適切に対応することが重要です。

・フィジオセンターで行っているアプローチ

フィジオセンターではこのような場合、以下のようなアプローチを実施しています。

1つ目は股関節周囲のインナーマッスルのエクササイズです。
股関節をできるだけ安定して動かすためには、関節機能を安定化させる機能を持つインナーマッスルの機能を高める事が大切です。また周辺の活動が過剰になっている筋肉の働きを軽減する事も併せて大切です。

2つめは体幹機能の向上を目的としたエクササイズです。
国内の研究で変形性股関節症をお持ちの方は体幹機能(腹横筋)が低下し易い事が報告されています。股関節周囲の筋肉が効率的に働くためには、前提のなる体幹機能が大変重要なためです。

3つ目は、動作指導です。普段の姿勢や動き、歩き方が明らかに股関節に負担の大きい形になっている場合は、股関節の負担を軽減する目的で修正が有効な場合があるためです。

4つ目は、道具の使用です。エクササイズや動きの指導などでも症状が軽減しにくい場合は、状況によってノルディックウォーキングのポールの使用などをお勧めしています。

・まとめ

寛骨臼の形態は、変形性股関節症の発症・進行に深く関与しています。被覆不足では局所的な荷重集中、過被覆では衝突によるストレス増大が起こり、いずれも関節唇損傷や軟骨変性のリスクを高めます。近年の研究では、形態だけでなく動作時の荷重分散機能も重要であることが示されており、静的評価と動的評価の両面からのアプローチが必要です。

当センターでは変形性股関節症をお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

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