変形性股関節症に関わる関節唇の解剖と損傷メカニズム

変形性股関節症に関わる関節唇の解剖と損傷メカニズム


変形性股関節症では、軟骨や骨だけでなく、関節唇の損傷が病態の進行や疼痛の発生に大きく関与していることが近年の研究で明らかになっています。関節唇は股関節の安定性と荷重分散に重要な役割を果たすため、その解剖学的特徴や損傷メカニズムを理解することは、評価や治療戦略を立てる上で重要です。本日のブログでは、関節唇の構造と損傷の仕組み、そして臨床でのリハビリテーションへの応用について解説します。

□関節唇の解剖と機能

関節唇は寛骨臼縁を取り囲む線維軟骨性の構造で、股関節の安定性と機能を維持するために重要な役割を担っています。

・形態と場所
関節唇はC字状の形を呈し、寛骨臼の前方から後方までを取り囲んでいます。内側は関節軟骨と連続し、外側は関節包と接続しています。

・組織学的特徴
主に線維軟骨で構成されており、荷重や牽引に耐える強度を備えています。外側部には血管が分布しており修復能力を有しますが、内側は無血管領域で自然治癒しにくいという特徴があります。

・神経支配
関節唇には神経終末が分布しているため、損傷や炎症により疼痛が生じやすいと報告されています。

・主な機能
寛骨臼を深くし、大腿骨頭の安定性を高め、関節内の陰圧を維持し、求心性を保ちます。また、荷重伝達時に衝撃を吸収・分散し、固有感覚や疼痛感覚のフィードバックを担います。

このように、関節唇は単なる付属組織ではなく、股関節の正常な機能に不可欠な構造です。

□関節唇損傷の発生メカニズム

変形性股関節症における関節唇損傷は、複数の要因が相互に作用して発生します。代表的なメカニズムは以下のとおりです。

1つ目は、機械的ストレスの集中です。初期の変形性股関節症では、大腿骨頭と寛骨臼の適合性が低下し、一部に荷重が集中します。この局所的なストレスが関節唇に微細損傷を引き起こし、進行すると断裂につながります。

2つ目は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(Cam型)による損傷です。寛骨臼や大腿骨頭の形態異常によって、屈曲や内旋時に大腿骨頸部が寛骨臼縁に衝突する大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)が起こります。特にCam型の大腿骨寛骨臼インピンジメントでは、大腿骨頭頸移行部の骨隆起が関節唇を繰り返し摩耗させ、損傷のリスクが高まる事が報告されています。

3つ目は、股関節の不安定性です。臼蓋形成不全などで寛骨臼被覆が不足している場合、股関節の求心性が低下し、関節唇に過剰な牽引力がかかります。これにより関節唇基部の微小断裂が蓄積し損傷が進行します。

4つ目は、変形性股関節症の進行による二次的損傷です。変形性股関節症が進行した場合、軟骨摩耗や骨棘形成によって関節唇への機械的刺激が増加します。その結果、炎症や断裂が悪化し、関節機能低下を加速させます。

近年のMRIや関節鏡の研究では、初期変形性股関節症を持つ方の約60〜80%に関節唇損傷が認められると報告されており、非常に高頻度で合併する病態であることが示されています。

□フィジオセンターでのアプローチをについて

特に股関節を屈曲・内旋の動きで関節唇に負担が掛かり易いため、適切なタイミングで骨盤後傾・腰椎の屈曲の動きが働くように股関節だけではなく、腰部・体幹機能との関係を見ながら筋肉のバランスを整えるエクササイズを実施します。具体的には、股関節の固さの原因となっている筋肉に対してはストレッチはリリースを行う事、働きの低下しているインナーマッスルなどについては、関節を適切な位置で動く事を目的にエクササイズを実施します。また、関節唇に負担の大きい事が想定される動きについては、他の股関節に負担の少ない方法を提示しています。

□まとめ

関節唇は股関節の安定性を支える重要な構造であり、その損傷は変形性股関節症の発症や進行に深く関与しています。関節唇損傷は単なる結果ではなく、初期から病態に影響を与える可能性があるため、解剖学的理解と損傷メカニズムの把握は非常に重要です。

当センターでは変形性股関節症や股関節関節唇損傷、大腿骨寛骨臼インピンジメントをお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15

TEL 03-6402-7755

津田 泰志

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