変形性股関節症の中殿筋機能と歩行安定性

変形性股関節症の中殿筋機能と歩行安定性


変形性股関節症では、歩行時の安定性が低下することや転倒発生率が高い事が報告されており、その重要な要因の一つが中殿筋の機能低下です。中殿筋は骨盤の外側に位置し、立位や歩行時に骨盤を水平に保つ役割を担っています。特に歩行時に体重を支えるタイミングでは、体重を支える側の中殿筋が収縮することで骨盤が過度に傾かないよう安定化を図ります。しかし、変形性股関節症では関節構造の変形や痛みによって中殿筋の働きが弱まり、歩行の安定性が損なわれることが知られています。

変形性股関節症において中殿筋機能が低下する要因はいくつかあります。まず、関節軟骨の変性や骨棘形成により関節周囲の力学的環境が変化し、適切な筋収縮が起こりにくくなります。さらに、痛みを回避するため、患側への荷重を避ける傾向が強くなる事で、結果として中殿筋の廃用性萎縮が進行します。加えてMRIや筋電図を用いた研究では、変形性股関節症患者では健常者と比較して中殿筋の筋断面積が減少していることや、立脚期における筋活動が遅延することが報告されています。

中殿筋機能の低下は歩行動作に大きく影響します。過去のブログでも解説を行った、片脚支持期で骨盤が患側と反対側に傾く「トレンデレンブルグ跛行」や、体幹を患側へ傾けてバランスを取ろうとする「デュシャンヌ跛行」が代表的です。これらは代償動作として現れますが、結果的に体幹や腰部への負担を増大させ、二次的な痛みや疲労を引き起こす可能性があります。また、中殿筋の機能低下は、股関節の関節内圧の上昇や軟骨への負荷増大につながることが知られており、症状の進行を加速させる一因にもなります。

□フィジオセンターでのアプローチについて

中殿筋の機能を発揮しやすい環境を作っていくためには、いくつかの要素が考えられます。

1つ目は体幹機能です。中殿筋などの股関節の外側にある筋肉は骨盤と大腿骨に付着するため、前提となる骨盤帯の安定性を高める上では体幹深層筋が適切に機能する事が大切です。その方の体幹深層筋などの機能を確認して、その方に合ったエクササイズをご提案しています。

2つ目は股関節自体の求心位を保つ事です。元々変形性股関節症をお持ちの方の股関節は、臼蓋被覆が低下して不安定である事が多いです。立位や歩行の場合に、足元側である大腿骨頭に対して骨盤帯がどの位置を向くかで股関節に加わるメカニカルストレスが大きく変化します。中殿筋以外の股関節のインナーマッスルの機能を高める事で、より中殿筋が力を発揮し易い環境を作る事が重要です。

フィジオセンターでは変形性股関節症や股関節関節唇損傷、大腿骨寛骨臼インピンジメントをお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15

TEL 03-6402-7755

津田 泰志


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