変形性股関節症をお持ちの方では、過去のブログでも解説を行ったように、筋バランスと荷重(体重)のかかり方が股関節に関わる負担に大きく関わります。とくに大腿筋膜張筋は、股関節の外転、屈曲、内旋を助け、腸脛靭帯を介して大腿外側へ張力を伝えます。この大腿筋膜張筋は、体表近くを走行する二関節筋であるため、働きが優位になりやすく立位や歩行で体重が脚の外側に偏りやすい(外側荷重)原因となり、股関節の外側の関節面や周辺組織にストレスを増やす原因となることがあります。
□大腿筋膜張筋が外側荷重を招きやすい理由としては以下の内容が考えられます。
・代償として働く傾向が強い
股関節外側を支える中殿筋や小殿筋(外転筋群)が弱化すると、その穴を埋めるように大腿筋膜張筋の活動が高まります。変形性股関節症をお持ちの方では、この外転筋群に機能低下や活動の偏りが起こることが報告されており、大腿筋膜張筋の関与が高まりやすいと考えられています。
・腸脛靭帯を介して足を外側へ引っ張る力が伝わる
大腿筋膜張筋は腸脛靭帯につながり、太ももの外側全体に強い張力を伝えます。腸脛靭帯は高い引張強度をもつ組織で、張力が高まると下肢の外側へ荷重ラインが寄りやすい状態をつくります。
・踏ん張るための同時収縮が関節内の応力を増加する
痛みや不安定さがあると、人は無意識に股関節周りの筋を同時に固める(共同収縮)傾向が出ます。股関節症では歩行中の股関節関節応力や共同収縮が増えることが示されており、関節にかかる力(押し合う力)が全体的に大きくなる方向に作用します。
・股関節の縁に力が集まりやすい
歩行時の股関節では、筋が生み出す力と骨の形によって、寛骨臼外側縁に力が集まりやすくなることがあります。特に縁への負荷は動き方や筋の使い方にかなり左右されることが示されています。この事によりストレスが高まりやすいと考えられます。
□フィジオセンターでのアプローチについて
大腿筋膜張筋の過剰は働きを調整するためには、いくつかの方法が考えられます。
1つ目は固さが長さが短くなった大腿筋膜張筋に対してストレッチやリリースを行う事です。ストレッチだけでは柔軟性を高める事に時間がかかる事も少なくないため、周辺の組織を含めてリリースや組織間の動きを促す事で、大腿筋膜張筋の過剰な活動を抑制します。
2つ目は、小殿筋や中殿筋などの、他の股関節外転筋の機能を高める事です。選択的なエクササイズの実施は勿論ですが、先に述べたこれらの筋肉が働きやすい環境を作るために、体幹深層筋の機能を高める事や、骨盤内の関節である仙腸関節の安定性を高める事も関係します。
3つ目は、足部の機能です患側の足の機能で、外側に体重を受けやすい環境の場合は、大腿筋膜張筋の筋活動が高まり易いため、足裏の外側だけではなく、足部の内側や足部の前方など様々な場所で体重を受けられる準備が大切です。足部の特定の関節の柔軟性を高める事や、足部の内在筋(インナーマッスル)の機能を高める事も、大腿筋膜張筋の活動を抑える事に関係します。
フィジオセンターでは変形性股関節症や股関節関節唇損傷、大腿骨寛骨臼インピンジメントをお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
TEL 03-6402-7755
津田 泰志