変形性股関節症と関節唇損傷との関係について

変形性股関節症と関節唇損傷との関係について

変形性股関節症をお持ちの方からよくいただくご相談の一つに、「股関節の動かし始めや長時間の歩行で痛みが強くなる」というものがあります。その原因のひとつとして注目されているのが、関節唇損傷です。関節唇は股関節の安定性と荷重分散に重要な役割を果たしており、損傷すると痛みや可動域制限を引き起こし、変形性股関節症の進行にも関与すると考えられています。

本日のブログでは、関節唇の役割・損傷のメカニズム、変形性股関節症との関連性、そしてフィジオセンターでのアプローチについて解説します。

□ 関節唇の役割と損傷のメカニズム

関節唇は寛骨臼の縁を取り囲む線維軟骨組織で、以下のような重要な役割を担っています。

1つ目は、股関節の安定性の確保です。大腿骨頭を関節内に保持し、安定した動きをサポートします。

2つ目は、関節内圧の維持です。関節唇は関節包と共同して、関節液を保つことで股関節の安定性を高めます。

3つ目は、荷重分散と衝撃吸収です。関節内の接触面性を広げる事で、立位や歩行時の体重負荷を関節全体に分散させます。

しかし、加齢や繰り返しのストレス、形態異常(例:大腿骨寛骨臼インピンジメントのCam変形)などによって関節唇に過剰な負担がかかると、微小損傷から始まり、やがて断裂や変性に至ります。関節唇が損傷すると、股関節の安定性が低下して関節内圧が維持できなくなり、結果として関節軟骨にかかる負担が増加します。

□ 変形性股関節症と関節唇損傷の関連性

近年の研究では、関節唇損傷は変形性股関節症の発症および進行に強く関与していることが示されています。

1つ目は、関節内圧の低下と軟骨損傷の進行です。関節唇が損傷すると、関節内の密閉性が失われ、軟骨表面への荷重が集中します。これにより、軟骨の摩耗が進行しやすくなり、変形性股関節症の発症に関与します。

2つ目は、発育性股関節形成不全との関連です。寛骨臼の被覆が少ない方では、関節唇が荷重の一部を代償的に担うため、損傷リスクが高まります。このような臼蓋被覆が低下されている方々では、比較的若い年代から関節唇損傷を伴うケースが多く報告されています。ます。特に大殿筋や中殿筋の活動低下、大腿直筋や大腿筋膜張筋の過剰使用などの代償動作が見られ、結果として股関節の安定性がさらに損なわれます。

□ フィジオセンターでのアプローチ

フィジオセンターでは、関節唇損傷と変形性股関節症を併発している方に対して、次のようなアプローチを行っています。

1つ目は、股関節深屈曲位での骨盤の後傾・腰椎の屈曲の動きを促す事です。

関節唇損傷の原因に大腿骨寛骨臼インピンジメントのCam変形(大腿骨側の首が太くなる)がある場合、股関節を深く曲げた動きに関節唇が骨盤側の臼蓋と大腿骨側の大腿骨頭に挟まれる事で、関節唇損傷が発生すると考えられています。そのため、股関節を深く曲げる際に骨盤の後傾・腰椎の屈曲の動きを促す事で、関節唇に加わる負担の軽減を図ります。

2つ目は、適切な動作・姿勢の確認です。

先に述べた、股関節を深く曲げる動きでは、関節唇に余分な負担が加わる可能性が考えられます。例としては、低い椅子からの立ち上がり・床からの立ち上がり動作・深い屈曲を伴うスクワットなどが考えられます。股関節や周辺の関節の機能を高めるだけではなく、環境面からも調整を図る事で関節唇に加わるストレスの軽減を図ります。

□ まとめ

関節唇損傷は、変形性股関節症の発症や進行に大きく関与する重要な因子です。関節唇は股関節の安定性と荷重分散に欠かせないため、その損傷があると痛みだけでなく股関節機能全体に影響を及ぼします。当センターでは変形性股関節症や股関節関節唇損傷、発育性股関節形成不全、大腿骨寛骨臼インピンジメントをお持ちの方で、医療機関での外来リハビリテーションが処方されていない方、また医療保険での算定日数の影響により外来リハビリテーションが終了されている方、外来リハビリテーションと並行してリハビリテーションの実施をご希望される方に対して、股関節への負担を出来るだけ軽減するための、包括的なサポートを行っております。

ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15

TEL 03-6402-7755

津田 泰志

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