股関節の関節裂隙は、いわゆる「関節の隙間」を意味しており、骨と骨の間にある関節軟骨の厚みを反映しています。この関節裂隙の変化は、痛みや可動域制限と深く関係している事が研究でも示されており、変形性股関節症のや進行度を理解する上で重要なポイントです。
本日のブログでは、関節裂隙の役割、変形性股関節症の症状との関連性、そしてフィジオセンターでの運動療法の内容について解説します。
□ 関節裂隙の役割
関節裂隙とは、股関節における大腿骨頭と寛骨臼の間にある“隙間”を指し、レントゲンやMRIで確認できます。この裂隙は単なる空間ではなく、関節機能を保つための重要な役割を担っています。
1つ目は、関節裂隙は関節軟骨の厚みを反映しており、軟骨がクッションとなることで衝撃を吸収し、骨同士の摩擦を防ぎます。
2つ目は、裂隙内には関節液が存在し、その潤滑作用や栄養供給を通じて関節軟骨の健康を支えます。また、関節包との協調によって関節内圧を一定に保ち、股関節の安定性を高める役割を持ちます。
□ 変形性股関節症の症状と関節裂隙の関連性
近年の研究では、関節裂隙の狭小化の程度が、症状の強さや機能障害と密接に関わることが報告されています。
1つ目は、痛みのとの関係です。関節裂隙が狭まることで、軟骨下骨が直接的に刺激を受けやすくなります。これが「立ち上がり時の痛み」や「長時間歩いた後の疼痛」につながります。
2つ目は、関節可動域制限との関係です。裂隙が不均一に狭くなると、股関節の動きが制限されます。特に股関節の伸展・内旋の制限は初期から見られやすくなります。
3つ目は、進行度と日常生活動作の関連です。Kellgren–Lawrence分類などのレントゲン評価では、裂隙狭小化が進むにつれグレード重症度が高まる事が多くみられます。進行例では歩行距離が短くなり、杖や歩行補助具の使用が必要になるケースも少なくありません。
□ フィジオセンターでのアプローチ
1つ目は、レッドコードを用いた関節可動域の確保です。関節可動域を維持・改善するために、当センターではレッドコードを活用しています。専用のスリングを使用し、股関節に対して優しい力で牽引を行うことで、関節裂隙の距離を確保しながら運動療法を進めます。その状態で筋肉に対するストレッチを行い、柔軟性を高めると同時に、関節面に対するモビライゼーションを実施し、関節の動きやすさにアプローチを行います。
2つ目は、立位・歩行時の負担の評価とエクササイズ処方です。立位や歩行時に痛みが出現しやすいタイミングを丁寧に観察し、大腿骨に対する骨盤帯の位置が体重を効率よく支えられるかどうかを確認します。もし骨盤と大腿骨の位置関係が適切でない場合には、どの筋肉の働きを高めれば股関節への負担を減らせるのかを評価し、個別にエクササイズを処方する事で、オーダーメイドのアプローチを実施します。
3つ目は、補助具を用いた股関節への負担軽減です。股関節内の炎症が疑われる場合には、リハビリだけでなく日常生活での工夫も重要です。当センターでは一時的にT字杖やノルディックウォーキングで使用されるポールの導入を提案することがあります。これらの補助具を活用することで、体重の一部を上肢に分散させ、股関節に加わる力学的ストレスを軽減できます。適切に用いれば、痛みを和らげながら活動量を維持する事が可能です。
□ まとめ
関節裂隙は、単なる“レントゲン上の隙間”ではなく、股関節の機能や症状を理解する上で非常に重要な指標です。裂隙が狭くなると、痛みや可動域制限といった症状が出やすくなり、日常生活に大きな影響を及ぼします。
フィジオセンターでは、股関節の裂隙変化と症状を丁寧に評価し、姿勢・動作・筋活動・生活環境の多角的な視点からサポートを行っています。医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリを希望される方に向けて、症状の進行を少しでも抑え、生活の質を高めるための包括的なアプローチを提供しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
TEL 03-6402-7755
津田 泰志