変形性股関節症をお持ちの方では、軟骨の変性や関節裂隙の狭小化とともに、股関節周囲筋の筋力低下が進行しやすくなります。筋力低下が進行してしまうと、歩行時の安定性や推進力に大きな影響を及ぼします。
本日のブログでは、「変形性股関節症における筋力低下が歩行に与える影響」について、そのメカニズムとフィジオセンターで行っているアプローチについて解説いたします。
□ 股関節周囲筋の役割と筋力低下の特徴
股関節周囲には多くの筋群が存在し、それぞれが歩行時の安定性や推進力を担っています。
中でも特に重要な筋として、中殿筋・大殿筋・腸腰筋が挙げられます。
・中殿筋は、歩行時に足で体重を支えるタイミングの立脚期での骨盤安定性に関与するため、左右のバランス保持に必要不可欠です。
・大殿筋は、歩行時の立脚後期(歩行時に足で体重を支える後半のタイミング)での股関節伸展を担い、推進力を生み出します。
・腸腰筋は、歩行時の遊脚期(歩行時に足を振り出すタイミング)に下肢を前方へ振り出す役割を果たします。
変形性股関節症では、疼痛抑制性筋抑制によって、これらの筋が十分に収縮できなくなることが報告されています。特に中殿筋と大殿筋は早期から筋力低下が進みやすく、歩行時の代償動作や骨盤の不安定性を招く要因となります。
□ 筋力低下が歩行に与える影響のメカニズム
1つ目は、骨盤の左右動揺です。中殿筋・大殿筋が弱化すると、立脚側で骨盤を水平に保てず、対側骨盤が下がる「トレンデレンブルグ歩行」が出現します。これにより股関節の球が被覆が低下し股関節のメカニカルストレスが増加します。結果として前方への推進力が低下する事で、歩行速度が低下します。
2つ目は、 推進力の低下です。大殿筋のハトリングスの筋力低下は、立脚終期の蹴り出しを弱めます。その結果、歩幅が短縮し、歩行速度が低下します。また、代償的に腰椎伸展や骨盤の余分な後方回旋が増加する事で、腰椎への二次的負担が生じやすくなります。
3つ目は、遊脚期の振り出し困難になる事です。腸腰筋が弱化すると、脚を前方へ送り出す機能が低下します。足部と床の距離が近づきすぎる事で、つま先が躓きやすくなり注意が必要です。加えて歩幅の低下につながりやすく、歩行速度が低下します。
□ フィジオセンターでのアプローチ
1つ目は、筋機能の再教育です。単に筋力を強化するのではなく、「どのタイミングでどの筋が働くか」を再学習することが大切です。例として、体幹インナーマッスルを先行して安定化させたうえで、中殿筋や大殿筋を段階的に賦活するエクササイズを実施します。また、レッドコードなどのサスペンションシステムの機器を使用する事で、痛みを抑えながら正確な運動パターンを誘導します。
2つ目は、歩行動作の再構築です。筋機能のタイミングを促した後は、歩行周期を想定した荷重練習を行います。股関節伸展を促すステップ動作や、骨盤回旋を意識したトレーニングを組み合わせ、効率的な歩行を再獲得を促します。
□ まとめ
変形性股関節症における筋力低下は、単なる筋肉の弱化にとどまらず、歩行の安定性・推進力・関節負荷にまで影響を及ぼします。特に中殿筋・大殿筋・腸腰筋の機能低下は、歩行の質を低下させ、歩行速度を低下する要因となります。
フィジオセンターでは、筋力低下の背景にある疼痛抑制や股関節のアライメントなどを評価し、より安定したスムーズな歩行を促すアプローチを行っています。医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリを希望される方に向けて、症状の進行を少しでも抑え、生活の質を高めるための包括的なアプローチを提供しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
TEL 03-6402-7755
津田 泰志