変形性股関節症をお持ちの方の中には、「最近、足のアーチが落ちてきた」「長時間歩くと足裏まで疲れる」とお話される方が多くいらっしゃいます。実は、この「偏平足」の変化が、股関節の痛みや歩行動作に深く関わっていることがわかっています。
本日のブログでは、「変形性股関節症と偏平足の関係」について、そのメカニズムとフィジオセンターで行っているアプローチを解説いたします。
□ 偏平足とは ― アーチ構造と下肢アライメントの関係
足部は、内側縦アーチと呼ばれる構造によって、地面からの衝撃を吸収しています。このアーチが低下してしまうと、足部が過剰に内側へ倒れ込む「過回内」という状態になります。
過回内が起こると、膝が内側へ向く方向へ位置関係が誘導されます。結果として、骨盤が前方へ回旋し、股関節は内転・内旋方向へ向きやすくなります。
このように、足部のアーチ低下はは股関節の力学的アライメントに連鎖的に影響を及ぼすため、偏平足が進行すると股関節痛の一因となります。
□ 偏平足が股関節に与える影響のメカニズム
1つ目は、特定の関節面へのストレス集中です。偏平足によって膝関節が内側へ向くと、大腿骨頭が寛骨臼の前方に偏位しやすくなります。その結果、関節軟骨への圧負荷が増大します。長期的には、関節軟骨の変性や関節唇へのストレスが増し、痛みの原因となる事や関節可動域の制限を助長します。
2つ目は、歩行時の推進力低下です。偏平足では足関節底屈筋の活動が低下し、蹴り出し時の足底剛性(足部の固さ)が低下します。これにより、股関節伸展筋(特に大殿筋・ハムストリングス)の働きが十分に発揮されず、歩幅や歩行速度の低下につながります。
□ フィジオセンターでのアプローチ
フィジオセンターでは、足部から股関節までを一連の運動連鎖として評価し、偏平足による二次的な股関節負担を軽減するための施術・コンディショニングを行っています。
1つ目は、足部アライメントの評価と再教育です。立位・歩行時の足部荷重線やアーチ形態を観察し、過回内・過回外のパターンを評価します。足部の位置関係によって後脛骨筋や長母趾屈筋などのアーチ支持筋群の再教育エクササイズや足部の剛性を高める目的で足部の内在筋エクササイズを実施します。
2つ目は、股関節外転・伸展筋の賦活です。足部の安定化に加え、歩行時の蹴りだしの機能を高め、股関節の支持機能を回復させるために中殿筋・大殿筋の段階的強化を行います。体幹の安定化を先行させたうえで、荷重コントロール練習や片脚立位訓練を実施します。これにより、痛みを抑えながらも動的安定性を再獲得できるようにサポートします。
□ まとめ
偏平足は単なる足部の問題ではなく、股関節のアライメントや歩行機能にまで影響する重要な要素です。変形性股関節症を長期に渡って管理されている場合、足部機能の低下が関与していることが少なくありません。
フィジオセンターでは、足部〜膝関節~股関節〜体幹の連鎖的な動作を統合的に評価し、筋機能の再教育・荷重動作の最適化・歩行動作の再構築を通じて、より安定した日常動作を取り戻すサポートを行っています。
変形性股関節症・発育性股関節形成不全・大腿骨寛骨臼インピンジメントなどをお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリを希望される方に向けて、症状の進行を少しでも抑え、生活の質を高めるための包括的なアプローチを提供しています。
ご興味のある方は、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/マリガンコンセプト認定理学療法士
LSVT®BIG認定セラピスト BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
TEL 03-6402-7755
津田 泰志