変形性股関節症と在宅ワーク中の注意点について

変形性股関節症と在宅ワーク中の注意点について

近年、在宅ワークやリモート勤務が広がり、フィジオセンターをご利用されるクライアントの方々も自宅で長時間座ってお仕事をされる方が増えています。一見すると通勤などもなく、身体への負担が少ないように思われますが、変形性股関節症をお持ちの方にとって、長時間の座位姿勢は股関節への負担を増大させる要因となることがあります。

本日のブログでは、在宅ワーク中に起こりやすい股関節への影響とフィジオセンターでお話する事の多い、注意すべきポイント、そしてフィジオセンターで行っている実践的な対策について解説します。

□ 在宅ワークと股関節への負担

座位姿勢では、股関節が屈曲位(大腿がお腹に近づく位置)で保持されます。この姿勢が長時間続くと、以下のような生体力学的および筋骨格系の変化が生じやすくなります。

1つ目は、関節内圧(関節包内の圧)の上昇です。股関節が深く屈曲した状態では、大腿骨頭が寛骨臼の前上方に押し込まれ、関節内圧が上昇します。先行研究でも、座位姿勢では立位より関節内圧が高いことが示されており、長時間のデスクワークは痛みや違和感を誘発する原因の一つになります。

2つ目は、股関節屈筋群の短縮です。腸腰筋や大腿直筋は座位姿勢で常に短縮位になります。こういった時間が超人・高い頻度で継続すると筋肉の柔軟性が低下し、骨盤が前傾しやすくなったり、立ち上がりや歩行時に鼠径部の痛みを引き起こすことがあります。

3つ目は、殿筋群の活動低下です。長時間の座位によって大殿筋・中殿筋の活動が抑制されます。これにより、立ち上がりや歩行時に股関節の伸展や外転の作用が不十分になり、関節の安定性が低下したり、歩行の際の安定性や推進力が低下する原因となります。

4つ目は、姿勢不良による骨盤・脊柱アライメントの乱れです。背もたれにもたれた「後傾姿勢」や、パソコンに前傾した「猫背姿勢」は、胸椎・腰椎を介して骨盤の傾きを変化させ、股関節の求心位を崩してしまいます。

□ 変形性股関節症の方が注意すべき在宅ワーク中のポイント

変形性股関節症をお持ちの方の場合、関節自体のの適合性が低下しています。そのため、「姿勢の影響」や「筋活動のバランスの乱れ」が症状に関係します。以下の点が対応方法として考えられます。

1つ目は、座面の高さと股関節角度の関係です。椅子が低すぎると股関節が過度に屈曲し、関節内圧が上昇します。例としては、 膝が股関節よりやや低くなるように座面を調整(座面高45~50cm目安)する事、 クッションや座布団で高さを微調整するのも有効です。

2つ目は、30〜45分に一度に立ち上がって動く事です。座りっぱなしを避け、定期的に立ち上がることで関節内圧をリセットします。例としては、 軽いストレッチ(腸腰筋・大腿四頭筋・殿筋群)やその場での足踏みを行う事が望ましいです。

3つ目は、デスク環境の調整です。パソコン画面が低いと、首や背中が前屈し骨盤が後傾しやすくなります。対応方法としては、 画面上端が目の高さにくるようモニタースタンドを使用する事や、 膝下から足底までをしっかり床につけ、安定した座位を保つ事が大切です。

□ まとめ

在宅ワークは便利で効率的ですが、「座りっぱなしの時間」が長くなることで、変形性股関節症の方には新たなリスクが生じます。股関節の痛みや関節可動域制限を防ぐには、「座る環境の調整」「こまめに姿勢を変えて動く事」「股関節まわりの筋肉のバランスを保つ事」が鍵となります。

フィジオセンターでは、在宅勤務環境や生活習慣を考慮した評価を行い、症状に合わせたオーダーメイドのリハビリテーションを提供しています。在宅ワーク中の股関節痛や違和感でお困りの方は、ぜひご相談ください。また、変形性股関節症・発育性股関節形成不全・大腿骨寛骨臼インピンジメントなどをお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT®BIG認定セラピスト
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

TEL:03-6402-7755

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