変形性股関節症の股関節伸展制限のための体幹深層筋エクササイズ

変形性股関節症の股関節伸展制限のための体幹深層筋エクササイズ

股関節の伸展可動域(骨盤に対する大腿部の後方の動き)は、立位姿勢の安定性や歩行の推進力に大きく関与します。しかし、変形性股関節症をお持ちの方の場合、痛みや関節面の変形、筋バランスの崩れにより伸展方向の可動域が制限されることが多く、結果として歩幅の減少や体幹前傾姿勢、腰部や膝関節への負担が生じやすくなります。

本日のブログでは、「股関節伸展可動域の制限メカニズム」と「体幹深層筋(インナーマッスル)を活用した改善エクササイズ」について、フィジオセンターでのアプローチ方法を交えて解説します。

□ 股関節伸展制限のメカニズム

股関節伸展可動域が制限される原因は、股関節の前方組織の短縮や筋肉の短縮、更に骨盤および体幹の安定性に関与する深層筋の機能低下が影響しています。主な要因を3つに分けて説明します。

1つ目は、腸腰筋・大腿直筋の短縮です。長時間の座位姿勢や立位姿勢での骨盤前傾姿勢が続くことで、股関節前面の筋群(腸腰筋・大腿直筋)が短縮し、伸展方向への制限が生じます。この状態では、骨盤が前方に引かれ、筋肉の付着の距離が短くなる事が影響すると考えられています。

2つ目は、骨盤前傾と股関節前面筋・腰背部筋群のの過活動です。変形性股関節症をお持ちの方では、痛みを回避するために骨盤を過剰に前傾(反り腰の傾向)する傾向があります。この姿勢では、腰椎が過剰に沿ってしまい負担が増加する事に加えて、膝関節はX脚(膝関節が内側を向く)を呈しやすくなります。この姿勢や位置関係が長期間続く事により股関節の伸展制限が出現してしまいます。

3つ目は、体幹深層筋の機能低下による骨盤と股関節の協調した動きが低下する事です。横隔膜・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群は、股関節運動の基盤となる体幹の安定性を担います。これらが適切に働かないと、骨盤が適切に安定化する事ができず、股関節伸展時に余分な腰椎伸展や骨盤の動きが生じ、股関節そのものの伸展が不十分になります。

□ 変形性股関節症における体幹深層筋エクササイズの重要性

体幹深層筋(インナーユニット)は、股関節の求心位を保ち、骨盤を安定させる役割を担います。特に腹横筋)は、股関節の伸展動作時に寛骨臼を安定化する重要な筋肉です。

股関節伸展を改善するためには、まず短縮した筋肉や組織に対するリリース・ストレッチに加えて、「骨盤を安定させながら股関節を動かす能力」を再構築することが必要です。これは先に述べた、リリース・ストレッチだけでは得られにくいため、体幹と股関節を協調的に動かすアプローチが必要となります。

□ フィジオセンターでのアプローチ

フィジオセンターでは、変形性股関節症の股関節伸展制限に対して、体幹深層筋の再教育を中心に以下のような段階的アプローチを行っています。

1つ目は、ドローインと股関節伸展の連動練習です。仰臥位または四つ這い位で、腹横筋を中心とした体幹深層筋を先行して働かせながら、股関節をゆっくり伸展します。この際、腰椎の過伸展を防ぎ、股関節の動きが骨盤の安定のもとで起こるよう動きを促します。必要に応じて行う姿勢を変えたり、レッドコードを使用して望ましい動きを促します。

2つ目は、立位での体幹と股関節の協調性の練習です。歩行など、実際の生活動作に近い形で骨盤と股関節の関係を確認します。たとえば、片足を低い第に置き、もう一方の足を軽く宙に浮かせます。その環境で、骨盤の傾斜を保ったまま股関節を伸展させる練習を行います。体幹深層筋と股関節の筋群が協調して働くことで、股関節伸展がより自然になります。

□ まとめ

股関節伸展可動域の改善には、単に前方筋群のストレッチを行うだけでなく、体幹深層筋による骨盤安定化と股関節の求心性の再獲得が不可欠です。特に変形性股関節症をお持ちの方の場合、痛みや代償動作によって筋活動のタイミングが乱れていることが多く、深層筋を含めた「動作の再教育」が重要になります。

フィジオセンターでは、レッドコードを活用したインナーマッスルの再教育や、立位動作での骨盤-股関節協調性の改善を通じて、股関節伸展可動域の動きをサポートしています。変形性股関節症・発育性股関節形成不全・大腿骨寛骨臼インピンジメントなどをお持ちで、医療機関で外来リハビリテーションを受けられない方や、保険制度上リハビリが終了してしまった方、並行して追加のリハビリを希望される方には、ホームページまたはお電話にてお気軽にお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。

理学療法士 保健医療科学修士号 認定理学療法士(運動器・脳卒中)
Certified Mulligan Practitioner(CMP)/LSVT®BIG認定セラピスト
BFJ公認野球指導者 基礎I U-15
津田 泰志

TEL:03-6402-7755

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